第41回関西医科大学眼科同窓会 その1 (606)

 282年ぶりに、大阪で金環日食が見られるという貴重な日の前日、枚方の関西医大病院にて眼科同窓会が行われました。その又前日は、気心のあった友人達と久し振りの食事会。今回も、そう簡単には辿りつけない(・・と評判の悪い)西中島のイタリアンに14名も集まってくれ、楽しいひと時を過ごしました。少しワインを飲み過ぎてしまい、体調万全とは言えない中、頑張って朝一番から聴く事ができました。これもブログのため?


第41回関西医科大学眼科同窓会総会@関西医大枚方病院

セッション1 ぶどう膜・腫瘍
1,コクサッキーウイルスが原因と考えられた網脈絡膜炎の1例
以前、聴いた話。あまり怖くない疾患?23歳女性。少し視力低下、 fineKPと前房にcell少し。眼底に小出血斑と滲出斑。GPは虫食い状視野(よく測定できたなあ・・・。真実を反映?)。抗菌剤とかステロイド点眼 していたら、自然寛解した。この間の抗体価の動きからコクサッキーウイルスが原因らしい・・と推定。手足口病患者が少し見えにくいと訴えたら、こんな事も 念頭におくべき。Coxsackievirus感染には、眼科では乳頭炎、汎ぶどう膜炎、Unilateral acute idiopathic maculopathy (UAIM) 、そして今回のような網脈絡膜炎もあり。

2,骨髄異形成症候群の患者に生じた転移性感染性眼内炎の1症例
 63歳男姓の骨髄異形成症候群患者。compromised hostにステロイド治療が行われ、敗血症。血液培養でαストレプトコッカス。その後、転移性感染性眼内炎(網膜に塊状の滲出斑、濃厚な硝子体混濁)。すぐに硝子体手術(バンコ・モダシン併用)行い良好な経過。心雑音があるので、精査すると心内膜炎(最終的に僧帽弁置換)。硝子体手術は、最初IOL入れず二次挿入。

3,外傷性緑内障治療中に発見された ring melanoma の1例 
 44歳女性。5月11日に眼球打撲。6月に視力低下+眼圧上昇(3剤入れて30mmHg)。ハンフリー正常。
ただ、pigment KPあり。8月にUBMで、ほぼ全周の毛様体の肥厚(強膜よりは輝度が低く、均一な充実性のエコー像:ここまで毛様体が分厚くなるのは、uveal effusion,強膜炎、そして外傷・剥離術後・原田病などの脈絡膜剥離ぐらい?)。この時点では、流石に診断つきにくく、ステロイド治療行うも、無効というか、むしろ毛様体肥厚が強くなる。最終的には、前房水の細胞診でメラニンを含む異型細胞が見つかり、確定診断。ぶどう膜の悪性黒色腫の0.3%という非常に稀な症例で、本邦では初めて?ただ、外傷性毛様体肥厚って言葉はチョット・・
※組織:mixed cell type
文献 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1722943/pdf/v083p00194.pdf
※毛様体にmelanoma がリング状に存在すれば、隅角は瞳孔ブロック機序というよりは、プラトー虹彩気味に狭くなる筈、虹彩そのものも圧迫されて凹凸不整になるかもしれないし、更に大きくなれば瞳孔縁から黒い腫瘤が顔をだすかもしれない。そんな特徴をもつ閉塞隅角緑内障があれば、非常に稀なケースだが、この疾患を疑うべき。

セッション2 網膜・medical
4,OCTで診断できた錐体ジストロフィ-の1例 松下記念病院
 22歳女性。視力低下 右(0.4)左(0,09) 眼底所見は豹紋状で中心窩反射が少し悪いぐらい・・?スペクトラリスOCTで見ると、右眼はIS-OS line消失。左眼はかなり進行していて、IS-OS line消失に加え外層が菲薄化している。典型的なbull’s eye ではないが、網膜色素上皮萎縮によるwindow defectによる過蛍光。この症例は、若いけど進行していて、視細胞の外節・内節ともに消失。杆体にも障害が及んでいる。
OCT初見:①IS-OS line消失 ②中心窩陥凹維持(外層菲薄化するが内層保たれるので) ③脈絡膜反射亢進
文献 http://westcoastretina.com/WestCoastRetina/Mar-2011.html

5,両眼性後天網膜分離症の網膜外層裂孔に光凝固を行った1例 
後天性の網膜分離症。鋸状縁に接して、周辺部の嚢胞様変性から徐々に発生する。その多くは(87%)あまり進行しないが、中には進行するものもある(13%)。今回外層裂孔があったので、網膜光凝固行った。何故分離が減少したのかは不明だが・・。この症例は、右眼に続いて左眼にも外層裂孔が出来て網膜光凝固。

6,経過中に網膜静脈分枝閉塞症を発症した視神経乳頭上動脈瘤の1例
 
 乳頭上に血管瘤。拡大して、硝子体出血し、静脈圧迫してBRVO発症し、黄斑部浮腫+硝子体出血来す。動脈瘤は触らずに、内境界膜剥離併用の硝子体手術したら、何故か動脈瘤も器質化して、縮小。何故?
※VEGF量がポイント?手術後VEGF減少が血管狭細化・動脈瘤縮小に働いた?

# by takeuchi-ganka | 2012-05-21 14:44 | 学会報告 | Trackback | Comments(0)

金環日食を見る前に・・ (605)



 もうすぐ大阪でも、282年ぶりとなる金環食が見られます。メディアやネットで様々な情報が提供され、日本眼科学会からは太陽光による網膜障害(日食網膜症)を防ぐための警告が出されています(http://www.nichigan.or.jp/sun/index.jsp)。
ところで、いったいどれくらい危険なのでしょうか。去年の日眼会誌に09年の皆既日食の際の眼障害についての報告がありました(日眼会誌115:589-594,2011)。ここで14例の障害事例が報告されていて、

1,安全性未定の道具で観察(下敷き、ビニール袋、コンパクトディスクなど)か肉眼
2,症状:違和感、熱感、疼痛、中心暗点、視力低下
3, ①すぐに改善   :曇天下に肉眼で1分
   ②1日持続    :曇天下に肉眼・他の用具で10分
   ③1週持続    :曇天下に肉眼・他の用具で10分
   ④1週以上持続 :快晴・薄雲で肉眼・他の用具で数十秒~10分

要するに、天候の良い時に、透過率の高い道具で、長時間見れば見る程、障害の程度は強くなる危険性があると言う事でしょうか。
Comparison of spectral-domain and time-domain optical coherence tomography in solar retinopathy. Cho HJ, Yoo ES, Kim CG, Kim JW. Korean J Ophthalmol. 2011 Aug;25(4):278-81.
SD-OCT demonstrated characteristic defects at the level of the inner and outer segment junction of the photoreceptors in all the affected eyes and decreased reflectiveness of the retinal pigment epithelium layer.
この論文でも示されているように、障害は網膜視細胞と網膜色素上皮での光化学反応によると考えられていて、有色人種においては、網膜色素上皮のメラニン色素が多いので、温度上昇による熱凝固も危惧されます。通常は一時的に中心窩の小さな黄色班が出現するのみですが、稀には重大な永続的視力低下を来すと言われています。皆さん、その辺にある適当な遮光ツールで代用すること無く、ちゃんとした(?)日食メガネを使って世紀の天体ショーを見てください。なお、眩しくないから安心と考えるのも危険です。可視光は眩しいですが、赤外光は眩しくないので、じっくり見ていると網膜にじわっと熱凝固を生じるかもしれませんよ。

そう言えば、K先生。その昔、ウサギを使って網膜光障害の実験やりましたよね。キセノン光で網膜光障害をつくり、その障害原因であるフリーラジカルを消去するαトコフェロールの前投与で光障害を予防可能・・・。つまり、日食メガネを用意して、日食観察前に、ビタミンEを摂取しとけば万全?
有色家兎における網膜光傷害(2)α-トコフェロールの効果(原著論文) 湖崎淳(関西医科大学 眼科), 竹内正光, 高橋寛二 日本眼科学会雑誌(0029-0203)98巻10号 Page948-954(1994.10)

5月21日7時31分クリニック前の公園にて

# by takeuchi-ganka | 2012-05-18 16:23 | その他 | Trackback | Comments(0)

乳頭形態と緑内障悪化速度 (604)

少し気になった論文について
Rates of change in the visual field and optic disc in patients with distinct patterns of glaucomatous optic disc damage
Reis ASC, Artes PH, Belliveau AC, et al.
Department of Ophthalmology and Visual Sciences, Dalhousie University, Halifax, Nova Scotia, Canada
Ophthalmology 2012, 119: 294-303.

緑内障性視神経障害のある乳頭の分類として、
乳頭形状分類
focal:リムが保たれていてノッチあり
myopic:傾斜乳頭、耳側コーヌス
sclerotic:全周性ハロー、なだらかな陥凹、乳頭周囲は脈絡網膜萎縮(peripapillary atrophy)があり脈絡膜の硬化を示唆?
diffuse:全体的に陥凹が広がる
この4つがあります。
 緑内障性視神経萎縮を示す乳頭が、4つのパターンに分類されています。経験的に、focal optic disc damageが一番進行速度が早いと理解していますが、それを裏付ける論文のようです。だからと言って、どうすることもできないような気がしますが・・。focalタイプの場合、耳下側とか耳上側とか一部のみが強く障害されているので、同部の予備能力を完全に使い果たした感があり、他の部位には視野変化をきたしにくいものの、同部の視野障害はどんどん進みがち。それに対して、diffuse optic disc damageは、乳頭全体の評価としては、focalタイプよりも進行しているように見られるものの、視野変化は非常に軽かったり、進行も遅い印象があります。多分、全体的に予備能力を失いつつあるのでしょうが。






























 この乳頭写真は、focal type と diffuse type ですが、前者は、キサラタンとニプラジロールで、眼圧は10前後にコントロールされているのですが、この15年間、MD slope -0.62dB/Yというかなりの速さで進行しているのです。diffuse typeの方は、9年間眼圧下降20%弱ですが、MD slope +0.04と殆ど悪化していません。チョット極端な例ですが・・・。

focal type


diffuse type
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# by takeuchi-ganka | 2012-05-13 21:21 | 緑内障 | Trackback | Comments(0)

1周忌

 
 教授といえば親父も同然・・・と慕っていた宇山先生が逝かれて、もう1年経ちました。今でも、眼底を見ながら、この程度の見方では怒られるのでは・・とちらっと頭をよぎります。教えが染み込んでいるというよりは、以前散々怒られたトラウマなのかもしれませんが、未だに私の心のなかには、間違いなく先生は存在しています。多分、私が現役眼科医である限り、師の幻影は消えそうにありません。

OCULUS社製の眼鏡に装着するタイプの双眼倒像鏡検査用のプリズムは、20年以上前に半強制的に購入させられ、今でも使っている非常に古いツールですが、宇山先生は、細隙灯顕微鏡と後極部レンズを多用される一方で、このツールをツアイスの14Dレンズと組み合わせて使用されていました。このOCULUS社のプリズムは、今でもかなり有用と感じています。流石に黄斑部は、90Dや78Dの非接触レンズか、接触型後極部レンズで見るのが主流ですが、黄斑部外の病変を立体的に見る場合に、このプリズムと15Dや20Dのレンズを組みあわせてみれば、全体像を把握しつつ、情報量が飛躍的に増加します。この裂孔のエッジはトラクションがかかっていて、周辺側が少し浮いているのか・・・と、片眼では明らかでなかった情報が明瞭に把握できます。今でも、このプリズムを装着した眼鏡をかけると、先生の顔が浮かぶのです。

# by takeuchi-ganka | 2012-04-27 08:20 | その他 | Trackback | Comments(0)

α2刺激薬新発売(緑内障点眼)  (605)



この5月にα2刺激薬のブジモニジン点眼液(アイファガン)が発売されます。緑内障点眼は、いった何処まで増え続けるのでしょう?私が大学の緑内障外来に参加した当時は、チモプトールとサンピロだけで戦ってましたが、ここまで増えると、1人ひとりの患者さんに何を選択すれば最適の選択なのか、その判断は難しくなります。自分なりに、チョイスの基準をクリアにするために・・・

 

1.プロスタグランジン関連薬
2.β遮断剤
3.炭酸脱水酵素阻害剤
4.α1遮断剤
5.副交感神経刺激薬
6.交感神経刺激薬
7.α2刺激薬


緑内障点眼には、図のように7つもジャンルがあり、非常に多数の点眼液が存在します。かなりひとりよがりの考え方ですが、多岐にわたる点眼のチョイス方法について整理してみました。

1,PG関連薬
ここには、キサラタン・トラバタンズ・ルミガン・タプロス・レスキュラとあり、これに23種類のキサラタンのジェネリックが加わります。ただ、私は、それでも15年以上の使用経験があるキサラタンが基本となっています。それ以外を選択する場合には、それなりに理由がある場合が多く、角膜が弱い人の場合にBACフリーのトラバタンズを、キサラタンの眼圧下降作用が弱い場合にルミガンをチョイスします。全てのプロスト系PGが無効か、ベースライン眼圧が非常に低い場合にレスキュラとか・・。日本のジェネリック点眼は、先発品と全く同一ではない上に、眼内移行に関するデータがなかったりして、あまり信頼できないので(※個人的印象)、使っているのはBACフリーのラタノプロストPF(日点)のみです。BAC濃度が最も高いキサラタンですが、それ以外の副作用が少なく、特にDUESが殆ど見られないのも選択の理由でしょうか。いずれにしても、NTGやPOAGの場合には、PG関連薬がファーストチョイスとなります。

2,β遮断剤
 これは、キサラタンより更に長い使用経験があり、それぞれの点眼の個性は十分理解しているつもりで、最終的に副作用が少なくて、効果が期待できるものとして、手元に残ったのは、ミケランのLAと、リズモンTG、それにα1遮断効果があり神経保護効果を期待できるニプラジロールぐらい。一応、BACフリー用にチモレートPFも常備してますが。

3,炭酸脱水酸素阻害薬(CAI)
 この分野はエイゾプトを使ってますが、印象としては、トルソプトとあまり差は感じません。いずれにしても使用感が悪く、積極的には使いにくい薬ですが、24時間眼圧下降効果が検討され、β遮断剤より夜間眼圧下降が良好と言われており、PG関連薬のパートナーの有力候補です。ただ、私の印象では、眼圧下降効果が十分でない・・。

4,α1遮断薬(デタントール:ブナゾシン)
 これに関しては、他の点眼が使えない場合のみチョイス。

5,副交感神経刺激薬
 これはピロカルピンのみ。若い医師は、この点眼のPACに対する役割をもっと知るべきだと思います。以前、急病診療所に出務していた時に、急性PACの患者さんが一滴もピロカルピン点眼されずに送られてきた事があって驚いた事があります。『1滴入れるだけで、全く違うのに・・・何故?』 縮瞳するので、継続的使用は難しいでしょうが、緊急回避的使用は非常に有用で、手術ができない場合のPACの強力な薬物治療薬としてのポジションなど、他の点眼で代用できません。

6,交感神経刺激薬
 これには、古くはエピスタ、現在でもジピベフリンがあります。エピネフリンのプロドラックですが、それでも散瞳すること、点眼後充血することなどが嫌で使うのは止めてしまいました。

7,α2刺激薬(アイファガン:0.1%ブリモニジン)
 そして、この5月、更に一つ緑内障点眼が加わります。これが加わったとしても、ファーストチョイスはPG関連薬で、問題は、そのパートナーとして、β遮断剤?CAI?、それともこのα2刺激薬?
1 眼圧下降作用:β遮断より少し弱い(非劣性だが)。CAIより少し強い?
2 全身的副作用は少ないらしい。
3 差し心地いいらしい。
4 BACフリー(防腐剤は亜塩素酸ナトリウム)
5 LoGTSで視野維持効果確認(でもこれは0.2%ブリモニジン)
などと、言われており、欧米では実績もあり、それなりに期待してもいいようです。また、β遮断剤とは相加効果も期待できるようなので(コンビガンはチモロールとの配合剤:日本未発売)、PGの配合剤で不十分な場合の追加薬とか、PGが使えない場合のβ遮断剤のパートナーとしてあり?
A randomized trial of brimonidine versus timolol in preserving visual function: results from the Low-Pressure Glaucoma Treatment Study. Krupin T, Liebmann JM, Greenfield DS, Ritch R, Gardiner S; Low-Pressure Glaucoma Study Group.
Am J Ophthalmol. 2011 Apr;151(4):671-81.

この論文を信じるなら、チモロールよりも視野維持効果あり・・となりますが、アレルギーで脱落者が多く(28.3%)、それを除いてやっと有意差が出たようで、そのため日本発売のアイファガンは、0.2から0.1%へ濃度を半分にしたようです。ただ、『神経保護の報告は多い。網膜(節細胞にも)に受容体あり、点眼で十分な濃度(2nM以上)が網膜に届いていると推定され、メラニンに結合して濃度も維持できそうで、使える。種々のストレス:低酸素、酸化ストレス、グルタミン酸によるRGC細胞死に対する抑制効果も証明されている。(相原先生の講演から)』ようなので、日本に多いNTGが対象の大規模スタデイが行われ、臨床現場での有用性が証明される事を希望します。


# by takeuchi-ganka | 2012-04-24 15:01 | めぐすり | Trackback | Comments(0)

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