緑内障ガイドライン(第3版) その2 (586)
フローチャート Ⅲ眼圧下降治療:方針
ここでは、目標眼圧を設定し、治療を選択し、目標が達成されたら、治療を継続し、視神経所見・視野所見が悪化したら、目標眼圧を変更し、治療も変更すると・・・・・書いてあります。サラっと書いてますが、現実には時間もかかるし、なかなか達成困難な話です。
目標眼圧は初期だと19以下、中期16以下、後期14以下と書いてありますが、そもそも緑内障の殆どはNTGで、19以下の事が多いので、その対象に対して、そのような目標設定はあまり意味が無い。従って、20%下降や30%下降を目標とするのですが、前回も書いたように、30%の眼圧下降というのは、なかなか達成困難です。
頑張って、2-3種類組み合わせて、20%下降できたとして、次は視神経・視野の評価となります。ベースライン眼圧決めて、最適な点眼の組み合わせが見つかるまで、数ヶ月かかることも稀じゃない。取り敢えず決定された治療で視野がどう動くのか、視神経がどう悪化するのかを見守るのです。と言っても、視野の判定にしてもベースラインを数回測って、その後3ヶ月に一度視野検査したとして、悪化しているのかどうかを判断するのに、1年ぐらいはかかるのです。視野の悪化の有無を何で判断するのでしょうか。一般的にはMDスロープでしょうが、各測定点毎の変化を見る方法もあるでしょう。一般的には、視野検査して、最初の何回かは、学習効果もあり、MDは改善したりするので、最初から悪化していたとしてもマスクされます。従って、1年後、-0.5dB/年だと判断したとしても、現実にはもっと悪いかもしれないと思いつつの判断となります。このMDスロープをどう見るかガイドラインには記載されていません。
最も多いNTGの場合ですが、平均は-0.4~-0.5/年ってところでしょうか。
MDスロープの結果を自分なりに評価してみると・・・・・
+1.0 あり得ない?学習効果?
±0 理想的な経過
-0.1 理想に近い非常に緩徐な悪化
-0.2 非常に緩徐な悪化、許容範囲
-0.3 平均より少し緩やかな悪化速度、許容範囲
-0.4 平均よりわずかに緩やかな悪化速度、まだ許容範囲
-0.5 平均的悪化速度
-0.6 ほぼ平均的悪化速度
-0.7 平均より少し速い悪化速度
-0.8 平均より明らかに速い悪化速度
-0.9 危険な悪化速度
-1.0 かなり危険な悪化速度
こんな感じ?
MDの評価としては、
1 危険領域:-15dB
2 患者さんが不自由度を感じるのは:-20dB
3 社会的失明:-25dB
・・・だと、言われてます。スタート時点でのMD、そして判定された進行速度(MDスロープ)、患者さんの年令・平均余命をみて、死ぬまで安心プラン(私見)を立てられるか判断します。ただ、MDスロープの判定には時間がかかり、-0.5dB/年程度なら数年かかるでしょうか。じっくり焦らずベストな治療を見つけましょう。
例:
1、60歳で極早期、ゆっくり進行なら90歳でもOK (-0.25dB/年なら30年で、0⇒-7.5dB/年)
2、40歳で極早期、普通進行で70歳でもダメ (-0.5dB/年なら30年で、 0⇒-15dB/年の危険領域)
ここでは、目標眼圧を設定し、治療を選択し、目標が達成されたら、治療を継続し、視神経所見・視野所見が悪化したら、目標眼圧を変更し、治療も変更すると・・・・・書いてあります。サラっと書いてますが、現実には時間もかかるし、なかなか達成困難な話です。目標眼圧は初期だと19以下、中期16以下、後期14以下と書いてありますが、そもそも緑内障の殆どはNTGで、19以下の事が多いので、その対象に対して、そのような目標設定はあまり意味が無い。従って、20%下降や30%下降を目標とするのですが、前回も書いたように、30%の眼圧下降というのは、なかなか達成困難です。
頑張って、2-3種類組み合わせて、20%下降できたとして、次は視神経・視野の評価となります。ベースライン眼圧決めて、最適な点眼の組み合わせが見つかるまで、数ヶ月かかることも稀じゃない。取り敢えず決定された治療で視野がどう動くのか、視神経がどう悪化するのかを見守るのです。と言っても、視野の判定にしてもベースラインを数回測って、その後3ヶ月に一度視野検査したとして、悪化しているのかどうかを判断するのに、1年ぐらいはかかるのです。視野の悪化の有無を何で判断するのでしょうか。一般的にはMDスロープでしょうが、各測定点毎の変化を見る方法もあるでしょう。一般的には、視野検査して、最初の何回かは、学習効果もあり、MDは改善したりするので、最初から悪化していたとしてもマスクされます。従って、1年後、-0.5dB/年だと判断したとしても、現実にはもっと悪いかもしれないと思いつつの判断となります。このMDスロープをどう見るかガイドラインには記載されていません。
最も多いNTGの場合ですが、平均は-0.4~-0.5/年ってところでしょうか。
MDスロープの結果を自分なりに評価してみると・・・・・
+1.0 あり得ない?学習効果?
±0 理想的な経過
-0.1 理想に近い非常に緩徐な悪化
-0.2 非常に緩徐な悪化、許容範囲
-0.3 平均より少し緩やかな悪化速度、許容範囲
-0.4 平均よりわずかに緩やかな悪化速度、まだ許容範囲
-0.5 平均的悪化速度
-0.6 ほぼ平均的悪化速度
-0.7 平均より少し速い悪化速度
-0.8 平均より明らかに速い悪化速度
-0.9 危険な悪化速度
-1.0 かなり危険な悪化速度
こんな感じ?
MDの評価としては、
1 危険領域:-15dB
2 患者さんが不自由度を感じるのは:-20dB
3 社会的失明:-25dB
・・・だと、言われてます。スタート時点でのMD、そして判定された進行速度(MDスロープ)、患者さんの年令・平均余命をみて、死ぬまで安心プラン(私見)を立てられるか判断します。ただ、MDスロープの判定には時間がかかり、-0.5dB/年程度なら数年かかるでしょうか。じっくり焦らずベストな治療を見つけましょう。
例:
1、60歳で極早期、ゆっくり進行なら90歳でもOK (-0.25dB/年なら30年で、0⇒-7.5dB/年)
2、40歳で極早期、普通進行で70歳でもダメ (-0.5dB/年なら30年で、 0⇒-15dB/年の危険領域)
MALT lymphoma (585)
仲間内のちょっとした勉強会があり、気になる症例がありました。結膜のMLATリンパ腫症例です。何となく聞いた事がある・・・程度だったので、少し復習を。
粘膜とリンパ球の複合組織(Mucosa-Associated Lymphoid Tissue:MALT、マルト)という概念があり、ここから発生するB細胞性リンパ性腫瘍をMALTリンパ腫と呼ぶようです。そこで提示された症例は、下眼瞼結膜のMALTリンパ腫だったようですが、大型のリンパ濾胞がある・・雰囲気の写真でした。
このリンパ腫は、悪性リンパ腫7-8%で、女性に多く、胃・大腸などの消化管、肺・唾液腺、そして涙腺・眼窩・皮膚などにもできるようです。悪性度は低く、治療も発症した臓器によって対応は異なるようで、胃の場合、ピロリ菌が関連していて、除菌で消失することもあるようです。結膜の場合の外観は『表面平滑なサーモンピンク色の腫瘤』で、治療は放射線療法が基本のようですが、あまり悪化しないことも、自然退縮することもあるようです。将来的には、腫瘍細胞の殆どは、抗CD20抗体陽性細胞なので、rituximab(抗ヒトCD20モノクローナル抗体)の局所注射もあり。
資料1
資料2
追加:やはり専門家に聞いてみるもんです。このMALTリンパ腫は球結膜にできる場合と、円蓋部や瞼結膜に出来る場合で、形状が異なるようで、資料の写真は、球結膜にできた典型例。勉強会で提示された症例のように、円蓋部や瞼結膜に舌状・大型乳頭がボコボコとした感じで発生するものも多く、治療の基本も最近は、放射線より、rituximabの全身投与のようで、これが有効なようです。悪性度も低く、生命予後も悪くない・・・らしい。
粘膜とリンパ球の複合組織(Mucosa-Associated Lymphoid Tissue:MALT、マルト)という概念があり、ここから発生するB細胞性リンパ性腫瘍をMALTリンパ腫と呼ぶようです。そこで提示された症例は、下眼瞼結膜のMALTリンパ腫だったようですが、大型のリンパ濾胞がある・・雰囲気の写真でした。
このリンパ腫は、悪性リンパ腫7-8%で、女性に多く、胃・大腸などの消化管、肺・唾液腺、そして涙腺・眼窩・皮膚などにもできるようです。悪性度は低く、治療も発症した臓器によって対応は異なるようで、胃の場合、ピロリ菌が関連していて、除菌で消失することもあるようです。結膜の場合の外観は『表面平滑なサーモンピンク色の腫瘤』で、治療は放射線療法が基本のようですが、あまり悪化しないことも、自然退縮することもあるようです。将来的には、腫瘍細胞の殆どは、抗CD20抗体陽性細胞なので、rituximab(抗ヒトCD20モノクローナル抗体)の局所注射もあり。
資料1
資料2
追加:やはり専門家に聞いてみるもんです。このMALTリンパ腫は球結膜にできる場合と、円蓋部や瞼結膜に出来る場合で、形状が異なるようで、資料の写真は、球結膜にできた典型例。勉強会で提示された症例のように、円蓋部や瞼結膜に舌状・大型乳頭がボコボコとした感じで発生するものも多く、治療の基本も最近は、放射線より、rituximabの全身投与のようで、これが有効なようです。悪性度も低く、生命予後も悪くない・・・らしい。
緑内障ガイドライン(第3版) その1 (584)

今年の日眼会誌の1月号には第3版の緑内障ガイドラインが特集されています。非常に良く出来たガイドラインだと思うのですが、ガイドラインなどない時代から緑内障診療をしていて、その結果がガイドラインになったような印象を持っている古い人間(私)は、実はあまり真面目にガイドラインを見ていないような気もします。ただ、若い眼科医にとってこのガイドラインはどんなポジションをとるのでしょう?自分勝手な診療はできないので、ガイドラインに沿って診療が行われると思うのですが、一般的にガイドラインには建前が多く、コメントつけていくとキリがないので、パラパラと見て行って気になった部分についてコメントしてみます。
緑内障ガイドラインの構成は以下の如くです。
--------------------------------------------------------
フローチャート
Ⅰ緑内障の病型・病期の決定
Ⅱ静的量的視野計測(自動視野計)
Ⅲ眼圧下降治療:方針
Ⅳ眼圧下降治療:目標眼圧設定『原発開放隅角緑内障(広義)』
Ⅴ眼圧下降治療:薬物治療の導入『原発開放隅角緑内障(広義)』
Ⅵ原発閉塞隅角症・原発閉塞隅角緑内障の治療
Ⅶ急性原発閉塞隅角症・急性原発閉塞隅角緑内障の治療
1.緑内障の定義
2.緑内障の分類
3.緑内障の検査
4.緑内障の治療総論
5.緑内障の病型別治療
※ 補足資料1・2
--------------------------------------------------------
コメントを付ける前に:日眼の緒言にも書いてありますが、多治見スタデイの緑内障新規発見率は89%だったのです。あれから10年ほど経過しているとは言え、90%近くの緑内障患者さんは未発見のままであるという事実は何にも増して重要な事だと思います。あのスタデイのように、真剣に緑内障をスクリーニングすれば、緑内障患者数は、10倍近く増えることになるかもしれないのです。つまり、ガイドラインより重要なことは、患者さんがまず眼科へ行くこと。そこがスタートとなります。眼科へ行って下さい、出来たら当院へ(笑)。
最初は、フローチャート
Ⅴ 眼圧下降治療:薬物治療の導入『原発開放隅角緑内障(広義)』について
まず単剤投与とあります。これは文句ありません。昔はチモロール(もっと昔はエピスタ?)でしたが、今はラタノでしょうか。フローチャートには目標達成+なら継続、-なら薬剤変更とありますが、この判断が非常に難しい。眼圧下降率が20%以上あればまあまあで、30%以上なら、当面の目標達成として薬剤継続は異論がないと思いますが、必ずしも単剤では十分な下降が得られない事も多い。その場合、ラタノを変更するのか、ラタノに何か追加するのか。これは、最初の眼圧下降がどの程度なのかによります。
1,少しだけど確実に下がっている場合
2,殆ど下がっていない場合。
この判断は難しいです。眼圧には変動があるので、少しだけど確実に下がっているのかそうでないのかの判断は微妙です。私は通常、片眼中止トライアルをします。すると、予想外に眼圧上昇し、こんなに効いていたんだとと再認識することもあります。残念ですが、ベースラインの信頼性が揺らぐのです・・。一応、3回すればOKと言われているベースラインですが、それでも時には信頼性が揺らぐ事もあります。従って、眼圧が安定しない患者さんの場合、少し長い目にベースラインを測り続ける事もありますし、数年後に取りなおす事もあります。
横道にそれましたが、片眼中止しても、眼圧変動に左右差が見られなければ、流石に最初に選んだ点眼は見放します。個人的な印象ですが、PG剤と言っても、ラタノが無効で、トラボやタフルが劇的に効くことはあまり期待できないので、一応、ビマトを入れます。その後の判断は、最初と同じです。少しだけど確実に下がっているのか、殆ど下がらないのか・・・。
PG剤と言っても、3種類あります。プロストン系(1)、プロスト系(3)、プロスタマイド系(1)。眼圧を下げる事に集中したい時は、プロスト系かプロスタマイド系のチョイスで、プロストン系はあまり選びません。いずれにしても、PG剤が使えないとなると、戦いは厳しくなります。基本的には、β遮断剤とCAIのみとなるからです。と言っても、実はラタノ発売前は、その条件で戦ってきたのですが。こうやって、PG剤、β遮断、CAI、α遮断などと順番に使える点眼からその有効性を確認しつつ点眼を組み合わせていきます。勿論目標は眼圧下降30%以上ですが、2剤で20%前後で我慢することもあります。我慢する条件は視野が維持されることです。守るべきは視野ですから、視野が維持されていることが確認されたら、3剤・4剤と増やす事は滅多にありません。
カルパイン阻害剤 (583)

ちょっと検索すると、
14種類のカルパインがあり、
3番目の「p94(カルパイン3)」カルパインが障害されると筋ジストロフィー
8番目の「nCL-2(カルパイン8)」カルパインは胃潰瘍
10番目の「カルパイン10」カルパインは、糖尿病と関係
などと、疾患との関連が記載されていました。そして緑内障とも関連があるらしい・・・・・
『カルパインの活性化とその後のp35の分解は網膜細胞死のメカニズムに関与している』らしい・・東北大・中澤教授らの仕事だそうです。少し前、to examine whether SNJ-1945 might inhibit the in vivo retinal neuronal death induced by NMDA in mice and/or the in vitro RGC-5 cell damage induced by ischemia-reoxygenation.この為に企画されたスタデイによって、経口の新しいカルパイン阻害剤(SNJ-1945)がNMDAによる網膜細胞死を抑制することが示され、緑内障の神経保護が期待できる薬物として注目されているようです。今回、軸索流障害による網膜神経節細胞死を引き起こすいくつかの緑内障病態モデルで、その効果を証明されたようです。単に神経節細胞死をレスキューするだけじゃなくて、軸索流障害に誘発された神経節細胞死を抑制するあたりが、現実の緑内障治療への道として期待できるということなのでしょう。内服薬としてのデビューを見据えているようですが、カルシウム拮抗剤などに加え、神経保護作用を有する薬物が、眼圧下降だけでは突破出来なかった緑内障の壁をブレイクスルーしてくれるかもしれない・・。元々眼圧下降の為に開発された薬剤が、たまたま神経保護作用もありますよ・・・って事とは違い、神経保護そのものをターゲットに開発された薬物が登場する可能性がある?
そうなればPG剤で、眼圧を下げることで、眼圧依存性の神経節細胞死を抑制しつつ、新薬で、結果として生じる神経節細胞死そのものも保護するというのが、近未来の基本的な緑内障治療かも・・
※A novel calpain inhibitor, SNJ-1945, reduces murine retinal cell death in vitro and in vivo
J Pharmacol Exp Ther. 2010 Feb;332(2):380-7.
※Critical role of calpain in axonal damage-induced retinal ganglion cell death
Article first published online: 8 NOV 2011
新年の挨拶

あけましておめでとうございます。
昨年3月11日、かつて経験したことのないような規模の大地震が起こり、数日後原発がメルトダウンし、放射能が日本中・世界中にばら撒かれてしまいました。時の政府はコントロールを失い、メディアは大本営と化し、残念ですが、我々は真実を知らされない間に、世界中から4流国と位置づけられていました。 大阪市民の一縷の望みは新市長でしょうか・・。ただ、小さな眼科の院長としては、日々勉強し、患者さんに真っ当な医療を提供できるよう努力するだけです。開業14年目を迎えますが、まだまだ前を向いて歩き続けます。
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