2009年 08月 23日
甲状腺眼症(388)
眼で見る神経内科 下直筋肥大による眼球の上転障害で急性発症したeuthyroid Graves' ophthalmopathy 神経内科(0386-9709)58巻5号 Page521-522(2003.05)
※こんな論文を見つけました。私も、急性発症ではなかったですが、15-6年前にeutyroidの上転障害を発症した下直筋肥大症例を経験したことがあります。当時、MRIをよく勉強していたF氏が、この疾患は下直筋に初発するんや・・・と力説していた記憶がありますが、最近の教科書にも、この筋肉の障害頻度が一番高いと書いてあります。この論文の症例は、67歳男性ですが、私の経験した症例も同じような年齢だったと記憶しています。教科書によれば、20代の眼球突出は、眼窩の脂肪組織の炎症で、中高年では外眼筋肥大が原因と記載されています。恐らく、抗甲状腺抗体が球後組織に自己免疫疾患として作用し、リンパ球浸潤を伴う浮腫・腫脹が発生し、やがて線維化・瘢痕化して固定するのでしょう。
眼障害としては、以下の4つが主でしょうか。①②が原発性障害で、③④が続発性障害。
①眼球突出
※ヘルテルによる基準はあまり意味がないが・・・21mm以上はやはり異常?
②上眼瞼後退(Dalrymple sign, Graefe sign)
③角膜・結膜障害(←兎眼・涙液分泌減少)
③眼球運動障害(←外眼筋の炎症、瘢痕・癒着)
※治療は、急性期とその後瘢痕が形成された場合で、対応が異なるでしょうが、慢性期でなければステロイドパルスや放射線治療で鎮静化を図り、残存する固定化した障害に対して手術となります。
※かつて、緑内障外来をしていた時経験したのは、下直筋肥大があって、強い上転障害のある患者さんで、眼位によって大きく眼圧が変化し、少し上方をみさせると異常に高値(30mmHg以上)、少し下方を見させると正常値をとり、長期間経過を見ましたが、緑内障性視神経障害を引き起こしませんでした。