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オキュラーサーフィスシンポジウム2009(16th)その1 (394)

 先日、オバマが上下両院合同会議で歴史的な演説を行ったそうです。先進国で唯一、国民の多数が保険に加入していない状況を解消する為だそうです。貧富の差に関わらず、最高レベルに医療が受けられるこの日本の国民皆保険制度の素晴らしさは、今、アメリカが苦しんでいる医療改革をみれば理解できると思います。かの国は、裕福な人間が受ける医療レベル、そうでない人が受ける医療レベルが違うのです。たぶん、医療を提供する側にも、松竹梅があるのかもしれません。アメリカのような巨大な先進国の医療がこのようなゆがんだ仕組みである裏側で、郵便局の簡保のカネを狙っていることで有名になった、利権をむさぼる巨大保険会社がいるのです。民主政権の行方は予想できませんが、この日本の医療制度の基本は維持してほしいものです。できれば郵便制度も・・


 9月10日、今年初めてと言ってもいい秋晴れの空の下、神戸の山奥の芝生の上で、朝から運動しておりましたが、勉強も大切と・・・奮起してハービスosakaへ出かけました。どうも、外資系の勉強会は苦手です。気取った雰囲気、大上段に振りかぶった演出、個人的には居心地悪いですが・・・

1、角膜感染症 update 鑑別と治療の考え方  外園千恵(京都府立医大)
 診療の為の3ステップ
  ①見る:特徴的所見の有無              ⇒ 推理
  ②考える:患者背景・経過               ⇒ 推理 
  ③調べる:病巣部の鏡検・培養、ウイルスPCR  ⇒ 同定

特徴的所見と患者背景
1、ブドウ菌       限局性膿瘍・楕円、周囲の角膜がきれい
※免疫抑制・上皮障害・高齢・糖尿病・・
2、肺炎球菌性    限局性膿瘍・不正形・匍行性、周囲の角膜比較的きれい。穿孔しやすい。
※外傷・つきめ・高齢・慢性涙嚢炎
3、緑膿菌性     輪状膿瘍、スリガラス状。穿孔しやすい。
※比較的若い、CLユーザー
・グラム陽性菌の特徴(ブ菌・連鎖球菌):病巣周辺の角膜がきれい。
・グラム陰性菌の特徴(緑・セラチア・モラクセラ):全体がスリガラス状
☆このような特徴的所見と患者背景から原因菌を推定する。
※モラクセラ(グラム陰性):キノロン、ベストロンが良く効くので、滅多に遭遇しないが、類円形潰瘍で周囲角膜スリガラス状

薬剤感受性
・ベストロンは、ブ菌と連鎖球菌に有効。緑膿菌に無効。
・キノロン系は、ブ菌と緑膿菌に有効。連鎖球菌に弱い。
・アミノグリコシド系は、緑膿菌に有効。
☆この薬剤感受性を考慮して、初期治療を開始する。

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初期治療
(広域スペクトルの薬剤または起炎菌を推測)

適正治療
(適切な抗菌薬による治療)
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※当初ベストロンとキノロンを併用するのはいいが、途中で緑膿菌とわかったら、漫然とベストロンを継続していると、キノロンを希釈していることになるので、有効性が低下する。ベストロン中止すると、効果が高くなることもある。あるいは、ベストロン中止して、アミノグリコシド系を加える。これが適正治療への軌道修正?

初期治療
(広域スペクトルの薬剤または起炎菌を推測)
1、フルオロキノロン+βラクタム(ベストロン)
2、フロオロキノロン単剤
※真菌、MRSA、アカントアメーバに無効。

患者背景・感染ルート
眼外からの侵入       VS     日和見感染
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外傷・手術                乳児・高齢
コンタクトレンズ             長期抗菌薬・ステロイド薬
                       患者背景:糖尿病・アトピー
免疫力正常               免疫不全
緑膿菌・糸状型真菌          MRSA・酵母型真菌
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提示症例:角膜移植後の2例
①大人しい・充血なし、2か月前からゆっくり進行、強拡大してみると辺縁が羽毛状 ⇒ 酵母型真菌
②辺縁丸い。非病巣部角膜きれい。 ⇒ MRSA角膜炎


角膜真菌症
①酵母型真菌:日和見感染   ※炎症弱い
②糸状型真菌:外傷       ※炎症強い
1)潰瘍辺縁は不規則、羽毛状    ☆スクレラルスキャタリングが有用
2)衛星病巣
3)病巣の大きさに比して炎症少ない
4)硬く隆起した病巣
5)前房蓄膿(見逃しやすいことも・・)
6)角膜内皮側プラーク形成
☆どうやら、特に初期においては、スクレラルスキャタリングを使用して、強拡大で病巣辺縁を睨むことが重要そうです。

治療薬
ポリエン系(殺真菌的)
 ピマリシン眼軟膏
アゾール系(静真菌的)
・フルコナゾール(ジフルカン):最近少し効きが悪い。
・ミコナゾ-ル(フロリード)
・ミカファンギン(ファンガード)
    などを希釈して点眼(自家調整)
・ボリコナゾール(ブイエンド 内服が点滴並に有効なので使いやすい)

MRSA角膜炎
MRSA感染症増加の一途
・類円形・限局(ブ菌の特徴を保持しているから・・・)
・表層性(上皮下レベル)(菌の毒性が強くないので、表層にとどまる)
※日和見感染:高齢・糖尿病・アトピー・長期のステロイド・抗菌剤
※上皮障害(糸の緩み・びらん)がきっかけに
※角膜手術後にも発症しやすい(例PTK後、翼状片術後)。特に予防的に抗菌剤使用していて発症したらMRSAが疑わしい。

※海外の報告では、PRK,LASIK後の重症MRSA角膜炎多い。日本は1例?
Methicillin-resistant Staphylococcus aureus infectious keratitis following refractive surgery. Solomon R, Donnenfeld ED, Perry HD, Rubinfeld RS, Ehrenhaus M, Wittpenn JR Jr, Solomon KD, Manche EE, Moshirfar M, Matzkin DC, Mozayeni RM, Maloney RK.
Am J Ophthalmol. 2007 Apr;143(4):629-34. Epub 2007 Feb 23.

※ 9/13 が医療従事者。7日前後で視力低下。バンコで治癒。結構重症化して予後不良。
※傷ついた角膜が修復する際、まず欠損部に“足場”が広がり、その上に角膜細胞増殖していくのですが、その“足場”を築くのが、血液中にある『フィブロネクチン』。これは、細胞と細胞を接着させる作用をもっているタンパク質。手術や外傷があり、その後上皮が再生する場合、その再生の先端部分にはフィブロネクチンが露出している?そこにFibronectin-binding proteinをもつブドウ球菌が付着しやすい?

MRSA・MRCNS角膜感染症
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       MRSAの保菌
      ↑        ↓・角膜上皮障害
  治療 ↑        ↓・縫合糸弛み
      ↑        ↓・角膜手術など
角膜感染症
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MRSAに対する感受性
  クロラムフェニコール 90%程度
  フルオロキノロン   35%程度      点眼高濃度なので有効
  バンコマイシン    100%        もうすぐ眼軟膏が入手可能となる。
  アルベカシン     100%
  ミノマイシン
※バンコマイシン軟膏 4回/日 滞留性もよく、即効性もあり、有効。

眼表面常在菌
・表皮ブ菌
・コリネバクテリウム
・Pアクネス
・黄色ブ菌
※このコリネバクテリウムはいままで病原性がないと言われていたが、そうでもないらしい。角膜感染ありうる。経験されたのは、角膜手術後だった。キノロン耐性70%、ベストロン有効。
☆まさか、この菌に病原性があるとは驚きです・・・。たまに結膜培養で引っかかってきますが、多剤耐性であることもしばしばです。だとすれば、これからは、キノロン耐性コリネバクテリウム感染が増えてくるかも・・
※ペニシリン耐性肺炎球菌にも注意。


☆真菌の話を聞いていて思うのは、毎晩飲んでる酒の事です。皆さんご存知ですか。糸状型真菌と酵母型真菌のコンビネーションが米を酒に変えてしまう事を。非常に複雑な工程で酒は造られます。多分、日本以外ではあり得ないような複雑な工程です。その中で、米にカビ(糸状型真菌)をつけ、そこで産生される酵素を利用してデンプンを糖化しつつ、それを酵母型真菌でアルコールに変える作業が並行して行われます。この並行複発酵というシステムが美味しい酒を作るのです。詳細は、上原浩著の『純米酒を極める』『いざ、純米酒』をどうぞ。040.gif
by takeuchi-ganka | 2009-09-13 10:27 | 学会報告 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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