2010年 02月 01日
タプロス点眼液発売1周年記念講演会 (425)
第1部
①眼圧視点 市販後臨床効果 松下賢治 阪大
1870年ピロカルピンに始まった緑内障点眼の長い歴史は、1920年にエピスタ、70年代にチモ、そして90年代に登場したプロスタグランジン製剤によって佳境を迎えました。今回発売1年を迎えたタプロスはC15位の水酸基がフッ素に置換されている為、FP受容体に対する親和性が高く、結合力も強い。プロスト系点眼の作用機序は全てUS flowの増加ですが、いくら強力に眼圧下降が得られるからといっても、微小脈絡膜剥離があるかと言えば、前眼部OCTでも見えないようです。
バージン症例に使うと5mmHg、20%ほど下降。高い眼圧の場合30%ほど、低い眼圧の場合でも15%ほど下降可能。他のPG剤単独治療からの切り替えでも20%下降可能?ノンレスポンダーも少ない・・・
②血流視点 市販後臨床効果 杉山哲也 大阪医大
LSFG-NAVI™は、LSFG(Laser Speckle Flowgraphy)技術を用いた眼底血流画像化システムです。詳しいことはよく分かりませんが、これにより乳頭上の任意の場所の血流の変化を解析することができるようです。これによれば、視野異常検出前の緑内障(preperimetric glaucoma)では、乳頭の上方と下方で血流が低下し、緑内障が進行すれば耳側で低下するようです。
ウサギの実験では、エンドセリンによる血流低下を2時間前に点眼されたPG製剤でブロックできますが、他のPG剤と異なり、タプロスは4時間前点眼でもブロック可能なようです。健常人においては、タプロス点眼は乳頭血流増加し、黄斑部の血流も増加?
ラタノとの比較では、眼圧下降は同程度だが、ラタノが眼灌流圧を上げるのに、タプロスでは変化なし。LSFG-NAVI™での解析では、上方・下方・耳側においてラタノは血流変化なしだが、タプロスは増加させた。これは、FP受容体を介した作用じゃなく、直接血管拡張作用の可能性。血流に関しては、タプロスは他のPG剤と若干異なる作用を有しているようです。
③NTG視点 市販後臨床効果 山岸和矢
このスタデイは、殆どがバージンケースです。当院もホンの少しだけ、参加させていただきました。目的は日本人のNTGにどの程度有効かという点です。その中でも、眼圧がある程度高い症例(16以上)に著効することは予想されますが、低い眼圧(16未満)眼にはそれほど有効でない・バラツキのある結果が予想されるのですが、やってみると意外に有効だったのです。16以上で25.9%下降、16未満でも23.4%下降。副作用も大したことなく、ノンレスポンダーも少なくて、とってもいい薬・・・
第2部
①タプロス点眼液の意義 基礎・臨床に基づく緑内障薬物治療 稲谷大 熊本
緑内障点眼は、1870年のピロカルピンに始まり、エピスタ、チモと続き、94年にレスキュラ、99年にキサラタンが発売され、07年にトラバタンズ、08年にタプロス、09年にルミガンが出て今日にいたっています。PG剤・β遮断剤・CAI・α2遮断と4種類ありますが、PG剤の眼圧下降が28-29%と最も強力で、NTGでも18-20%。1日1回点眼はコンプライアンスがよく、β遮断剤より継続率が高い。眼圧下降はUS flow増加で、毛様体や強膜にFP受容体があり、毛様体筋の弛緩やMMP活性亢進による細胞外マトリックス分解促進による・・・などと説明されているが、実は完全に解明されてはいない?
メタアナリシスによると、先行発売されているPG剤、ラタノ・トラボ・ビマト、+チモの比較は、24時間平均眼圧下降が24、27、29、19%とPG剤が一段上だが、トラフ値は28、29、28、26%とほぼ同程度?ビマト、トラボ、ラタノの比較臨床試験の報告は多いが、スポンサーによるバイアスあり?どこまで信頼していいやら・・・。ビマトやトラボが若干強力?充血強いが・・。
1)Intraocular pressure-lowering effects of all commonly used glaucoma drugs: a meta-analysis of randomized clinical trials. van der Valk R, Webers CA, Schouten JS, Zeegers MP, Hendrikse F, Prins MH. Ophthalmology. 2005 Jul;112(7):1177-85.
2)Patients prefer once-daily glaucoma drops. Buller AJ, Morgan LH, Hercules BL. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2007 Feb;245(2):293-4.
発売後間がないタプロスは、まだ同じような比較試験はない。FP受容体親和性は、ラタノの12倍だが、眼圧下降は同レベル。(桑山ら、あたらしい眼科25(11)1595-1602(2008.11))
ここで問題提起。ある種のPG点眼のノンレスポンダーが、他のPG剤にはレスポンダーって事があるか。そこで相原先生の仕事が紹介されました。ラタノプロスト低反応サルに生食・ラタノ・タプロス・ラタノと点眼していくと、タプロスにだけ反応したと・・・。これはサルの実験ですが、ルミガン含めるとプロスト系点眼は、4種類ある訳で、互いに補完しあう可能性もあり、あるPG剤にノンレスポンダーの場合、他のPG剤を試してみる価値はあるようです。
※相原先生の実験少し興味あるので、昨年の日眼の抄録を読み直しました。
昨年(2009)の日眼で相原先生が発表された演題、『ラタノプロスト低反応性サルにおけるタフルプロストの眼圧下降効果』ですが、なかなか興味のある内容です。飼育しているカニクイザルのうち覚醒下で圧平式眼圧計で安定して眼圧測定できる個体を対象?私もカニクイサルの飼育経験があるのですが、覚醒下で眼圧測定なんて・・・・・先ずここでびっくりです。その従順なサルにラタノを点眼。7日間点眼し最大眼圧下降度が1mmHg以下のものを低反応性従順(?)サル(11頭)。眼圧下降度は0.6~0.7。それにタフルを7日間点眼すると、11頭全てが眼圧下降し2.1~2.9下降。
つまり、ラタノが駄目でもタフルがあるさ・・・ということもあるらしい。サルの場合・・・
②タプロス点眼液の意義 アドヒアランスとメグスリ力 吉川啓司
聞けず・・