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アデノウイルスキットについて その1 (547)

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夏休みに入ったので、もうすぐ終息すると思いますが、最近、アデノウイルス結膜炎と思われる患者さんが非常に多く、少し気になっていた免疫クロマトグラフィー法について再度勉強してみました。参天からアデノチェックが発売されたのは、97年ですから、あれから14年ほど経過し、現在非常に多くの免疫クロマトグラフィー法によるアデノウイルス抗原検出キットが発売されています。ただ、古典的手法を愛する(?)私は、未だにアデノウイルス結膜炎の診断に、この検査を積極利用していません。昔ながらの、伝統的手法(?)で診断しているのです。眼脂の性状・角結膜所見・臨床経過などで・・・

『白金-金コロイド標識抗体を用いたアデノウイルス迅速診断検査キットの評価』医学のあゆみ(0039-2359)237巻2号 Page210-214(2011.04)

この論文は、抄録しか読んでませんが、アデノウイルス結膜炎疑い171例で、PCRで陽性が94例55%。つまり臨床的にEKC疑っても、半分ぐらいは陰性。この陽性例94例中、免疫クロマトグラフィー法、つまりアデノチェックのようなもので、陽性に出るのは86例、つまり91.5%の感度だそうです。この感度であれば、まあ問題がないのでしょうが、問題は、EKCかもしれないという臨床判断の方です。この論文でも、半分近くはPCRでもアデノウイルスは出ないのです。我々はPCRで確認する訳じゃないので、臨床判断がこの発表の病院レベルだとしても、0.55×0.915=0.50・・となります。最新の免疫クロマトグラフィー法でも、臨床判断の半分しか当たらないのです。
 第3種学校伝染病の中に、このアデノウイルスが原因の流行性角結膜炎(EKC)と、EV70やCA24vが原因の急性出血性結膜炎(AHC)があります。この2疾患を疑えば、学校出席停止となりますので、それなりに重い判断です。ただ前述のように、EKCを疑った症例の半分しか陽性にならず、AHCは今でも臨床所見のみで判断するしかありません。こんな状況下で、免疫クロマトグラフィー法の位置づけについて悩んでいたもので、導入が遅くなってしまったのです。免疫クロマトグラフィー法を行う症例を私なりに分類すると、
① 臨床判断で間違いなくEKCと思われる症例
② EKCが疑われる症例
③ EKCが否定できない症例
この3パターンとなります。①は多分陽性でしょうが、もし陰性だっとしても臨床診断を信頼して、出席停止とするでしょうし、②は、多分陽性・陰性半々でしょうが、陰性の場合に、安心して学校出席していいとは言いにくい・・。③の場合、陽性なら、驚いて出席停止としますが、陰性なら出席可とするでしょう。つまり、免疫クロマトグラフィー法の結果が出ても判断は微妙なのです。
 話を少し戻すと、前述の論文で、アデノウイルス結膜炎疑いの半分近くがPCR陰性だったのですが、その半分近い結膜炎は一体何だったのでしょう。AHCの可能性があり、これなら出席停止。アレルギー性結膜炎と間違うことはない筈で、残りは、細菌性結膜炎でしょうか。すると、大学病院の医者と違って、日常結膜炎を見ている一般臨床医ですから、頑張ってアデノウイルスが原因でないEKC類似疾患の鑑別能力を上げて、AHCや細菌性結膜炎などをしっかり臨床診断できれば、免疫クロマトグラフィー法の診断能力は限りなく90%に近くなっていく・・・?
by takeuchi-ganka | 2011-07-27 08:36 | 結膜炎 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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