2011年 10月 23日
第17回大阪眼科手術シンポジウム その3 (567)
1,新しい角膜手術
以前は、全層角膜移植術(TKP)が殆どで、10年間透明治癒率は72.5%。ただ、内皮は減少するし、乱視は大きいし、時に駆逐性出血があるし、拒絶反応も避けられない。それに本当に全層移植する必要性があるかが問題だった。瘢痕性角膜上皮障害なら上皮が、遺伝性角膜ジストロフィーなら問題のある層を、実質炎後混濁なら実質を、そして水疱性角膜症なら内皮を移植すればいい筈。 輪部移植は上皮を、DALKは実質を、DSAEKは内皮を移植する手技。
1)輪部移植:瘢痕性角結障害において、上皮の幹細胞を移植する。アロでは拒絶反応があるので、他眼からの移植がベスト。
2)DALK:内皮機能があると推定される場合に行う。内皮を残せば拒絶反応が少なくなるので。ただ、手技が難しい。つまり、デスメと内皮という非常に薄い層一枚だけ残して、他の部位を取り替える訳で、デスメと実質の間を剥離するのが簡単ではない。Big bubble techniqueが主流。適応疾患:格子状角膜変性、結核角膜実質炎後、円錐角膜などで・・
3)DSAEK: ケラトームカットした内皮+後部実質を貼り付ける手術。内皮機能不全に陥った眼に行う。なるべく早めの手術がいい。浮腫発生から1年以内がいい。ただ、国内ドナーの入手が困難・・。手技は慣れるまで難しいが、慣れれば、乱視も少なく、良好な裸眼視力が得られる。
2,フェムトセカンドレーザー
レーシックのフラップ作成に利用が始まったレーザー。角膜を自由自在に切開できる。
1)ZigZag切開を作成し、TKPに。乱視軽減、視力も向上。強度も増す。
2)lamellar surgeryに応用:表層移植・DALK・DSAEK
※レーザーが、内皮にダメージ与えるかもしれないが・・
3,羊膜利用
眼表面をカバーし、消炎図りつつ、上皮再生を促す。穿孔部を補填。培養上皮の土台に使う。
4,再生医療
幹細胞がない、ドナー不足を打破する為に自己細胞を培養。実質・内皮の応用はまだだが、上皮については行われている。上皮の前駆細胞からシートを作成。できれば無血清・無フィーダー培地で培養。他眼が残っていれば、他眼の輪部上皮を採取、培養して移植。その後必要があれば、TKP。両眼ダメな場合口腔粘膜上皮を培養して移植。