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緑内障との戦い2013 その3(656)

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かつて、手術が非常に楽しかった時期、知らず知らず手術適応に少しバイアスがかかり、外来では手術適応の患者さんを探していたような気がしています。『手術したほうがいいですね・・・。このままだと視野欠損が進行して将来困ったことになりますよ・・』などと何度言った事でしょう。でも一応、天理・京都文化圏に近く(?)、基本術式は、トラベクロトミーで、時々レクトミー・・
  レクトミーは上手くいけば眼圧を大幅に下げる事ができるものの、早期には前房が消失したり、ダダ漏れで縫ったり、逆にマッサージしたり、糸を切ったり・・・と大変で、それでもしばしば濾過胞が消失して全く無効になってしまうことも。また大きな濾過胞が形成されて眼圧が下がっても、今度は濾過胞の維持が大変で、大きく薄くなれば破綻して、感染の危機・・。厚く・平坦になればやはり濾過胞消失・眼圧上昇の危機が・・。
  そんな時に5FUが登場し、これを手術後1週間ほど結膜下注射を続けると、ちょうど角膜上皮がぼろぼろになる頃、濾過胞が立派に育ってくる。やってみなくちゃわからない患者さんの創傷治癒能力をコントロールすることが可能に思えて喜んだものです。角膜はボロボロになっても戻るという確信もあったので。その後、MMCが登場して、角膜上皮を障害せずに、濾過胞を育てる事が可能となり、私だけでなく、全国的にレクトミーが広がり、NTGでさえ手術する施設もありました。ただ、やはり濾過手術。眼圧が下がりすぎて、低眼圧黄斑症になったり、濾過胞が薄くなって破綻し、最悪、感染・失明することも。この手術は眼圧を下げるが、QOLも大きく下げる可能性が広く理解された筈・・・

  やがて、キサラタンが登場。この薬剤の眼圧下降は圧倒的で、今までの薬剤とはレベルが違う。下手な手術より良く下がる(?)と・・・思いました。人によっては、30前後から単独で15以下に下がることも・・・。これってロトミー並。もちろん、ロトミーも進化して、深層強膜を切除したり、内皮網を除去したり、シヌソトミーを追加したり、もはや何の手術かわからない(何が効いてるのかわからない)ぐらい変化していますが、それでも非濾過手術の限界は超えられないので、キサラタン登場以後、単独手術症例は随分減ったのではないでしょうか。
 
 キサラタン登場のずっと前、古い世代の先生は、エピスタとサンピロのみで緑内障と戦っておられたのでしょうが、私が眼科医となった頃は、既にチモがありましたので、基本的にはチモとピロのみで戦い始めました。ピロはよく効くのですが、縮瞳して、視野も狭くなるし、こちらも眼底が見えない・・。また喘息や心不全があると、チモが使えず、ピロのみで戦わざるをえない。その後β遮断剤の種類が増えましたが、ミケランは好きで、私の中では生き残ってます。
  CAI点眼については、皆ダイアモックス内服の切れ味を知っていたので、随分期待していたのを覚えています。こいつが点眼になれば、もう大丈夫かも・・と。ところが、さし心地悪い上に切れ味が悪い。随分がっかりしました。そしてプロスタグランジン製剤の登場です。最初はレスキュラ。あまり眼圧が下がらないけど、これしかなかったので、すごく使われたのを記憶しています。その後、感動的な眼圧下降作用を有するキサラタンが登場するのです。

現在私の手元には、
1,PG製剤:キサラタン、ラタノプロストPF、トラバタンズ、ルミガン、タプロス、(レスキュラ)
2,β遮断剤:ミケランLA、チモロールPF、リズモンTG
3,β1遮断剤:ベトプティックS
4,αβ遮断剤:ニプラジロール
5,α1刺激:アイオピジン
6,α2刺激:アイファガン
7,CAI点眼:エイゾプト

配合剤
1,PG製剤とβ遮断剤:デュオトラバ、ザラカム
2,β遮断剤とCAI:コソプト

非常に多数の点眼があります。採用していない点眼も他に多数あります。この中から、患者さんにとって、ベストな点眼(組み合わせ)を見つけ出す必要があるのです。戦う道具がなくて困った時代から、多すぎて困る時代になりました。
by takeuchi-ganka | 2013-01-07 14:00 | 緑内障 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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