2013年 11月 06日
緑内障患者さんの見え方とは・・・(720)
もう渡れなくなってしまった赤川仮橋
How does glaucoma look?: Patient perception of visual field loss
Crabb DP, Smith ND, Glen FC, et al.
Department of Optometry and Visual Science, City University London, London, UK
Ophthalmology 2013, 120: 1120-1126.
チョット興味深い論文を目にしました。緑内障患者さんはどのような見え方をしているのか・・・に関する報告です。英語は苦手ですが、緑内障患者さんの早期発見の為に少しは役立つようにと、原著にあたってみました。ここで緑内障というのは、正常眼圧緑内障を含む原発開放隅角緑内障とほぼ同義と捉えていいと思います。
ビエルム暗点や鼻側階段に代表される緑内障性視野欠損を患者さんはどのように捉えているのでしょう・・。多くの初診患者さんがそうであるように、実は無自覚であることが非常に多いのです。例えば網膜静脈閉塞症や加齢黄斑変性のように、急速に視野に大きな変化が出たら、誰でもすぐに自覚するのでしょうが、緑内障は、5年も10年もかけて、非常にゆっくりと視野欠損が進行するために、かなり進行してしまうまで自覚しないことが多いのです。このことが、現在でも緑内障の早期診断を妨げているのです。
図1は、かなり進行した緑内障です。流石にここまで進行すれば視野欠損の自覚があるでしょうが(時に気付かないこともあり)、ここから治療スタートというのはあまりに遅すぎます。
一般の方がどのようなイメージを緑内障に抱いているかと言えば、恐らく、『徐々に狭くなる』か、『視野が欠ける』というイメージでしょうか。
1.black tunnel
2.black parts
3.blurred tunnel
4.blurred parts
5.missing parts
このスタデイでは、5つのタイプの画像を用意して、50名の患者さんに選ばせるのですが、対象となった患者さんの平均MD-10dB前後は、決して初期ではない・・・・。この図は、MDが約-10dBの視野ですが、明瞭な大きな暗点(視野欠損)が検出されています。それでも13名26%も無自覚なのです。凄い事です。
『徐々に狭くなる』か、『視野が欠ける』ようなイメージの1,black tunnelや2,black partsは一人もなくて、3、blurred tunnelも僅か(2名4%)でした。
オリジナル画像は、ここに載せる訳に行かないので、本物を見たい人は、原著にあたって下さい。私の自作画像で恐縮ですが、つまり、こんな感じの人は一人もいなくて・・・
こんな感じの人も、二人だけ。
こんな感じの人が過半数なのです(blur (foggy, fuzzy, unfocused)、missing (e.g., blank, blind spot, hole))。だとすると、特に初期の緑内障患者さんは、視野の異常に気づきにくいのは無理がない気がします。本を読んだり、楽譜を見たりする機会が多ければ、文字がフッと消えて、おかしいと気づくかもしれないですが・・・。非常にゆっくりとしか進行しない緑内障性視野異常というのは、特に初期においては自覚しにくい。
従って、やはり早期診断の為には、検診を受けてもらうのが一番ですが、それが無理であれば、ファイザーのサイトで、自己チェックしてください。