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狭隅角眼についての妄想・・・(2013年) (723)

狭隅角眼についての妄想・・・(2013年) (723)_f0088231_15242471.jpg狭隅角眼についての妄想・・・(2013年) (723)_f0088231_15245738.jpg















  短い眼軸、短い角膜曲率半径、厚い水晶体、虹彩根部形状・・・・・様々な解剖学的アンバランスが、主として瞳孔ブロックが原因の隅角閉塞へと向うと、隅角は非常に狭くなり、徐々に閉塞したり、急に閉塞したりする。様々な関連要因は、加齢にともない、或いは外傷や他の様々な疾患に伴い変動して、隅角閉塞へと向かう事もある。(※チン小帯が緩みや水晶体亜脱臼、水晶体の膨化、脈絡膜剥離・・・など要因が明らかなら、続発性となりますが・・・。)

浅い前房・狭い隅角を見た時、よく観察すると、
①まだ隅角は開放している場合、②一部閉塞している場合、③広範囲に閉塞している場合
以上3つのケースが存在します。

加えて、眼圧が正常なのか上昇しているのか、或いは時々上昇しているのか。更には、既に緑内障性視神経萎縮(GON)が存在しているのかどうかが問題になる。

①どんなに狭くても、開放している場合。
間歇的にでも、閉塞している可能性がないなら、眼圧が高ければ高眼圧症で、GONがあれば、POAG~NTGと診断される。

②一部閉塞している場合
ここが、一番判断が難しいのですが・・・・
眼圧が高い場合
もし隅角閉塞の範囲が70-80%もあれば、眼圧上昇は、恐らく隅角閉塞が原因と考えて、PACと判断し、加えてGONがあればPACGと断定できる。眼圧が高くても、隅角閉塞が10%程度であれば、診断は難しい。眼圧上昇と隅角閉塞の因果関係は灰色である。ただ、瞳孔ブロック解除前に、器質的隅角閉塞が10%でも、UBMなどで広範囲に機能的隅角閉塞が存在していると判断される場合は、PACと判断すべきと考える。また、UBMなどで、一部の閉塞以外は、非常に狭いものの確実に開放していることが確認されても、所謂appositional closureの存在を示唆すると言われるappositional pigmentがあれば、PACと診断していいのかもしれないが、真相は闇の中?隅角閉塞が10%程度で、瞳孔ブロックもあまり強くなく、他の90%程度が確実に開放しているなら、判断はさらに微妙となる。高い眼圧の原因を10%の隅角閉塞に求める訳には行かないので、開放隅角緑内障の色合いが濃くなる。GONがあれば、慢性のPACGよりは、POAG with PAC・・・?

※狭隅角眼をUBMで見ると、隅角は上方ついで下方が狭く、耳側・鼻側は意外と広いことが多い。上下だけ見かけ上閉塞しているように見える隅角にはしばしば遭遇する。部屋を暗くすると、散瞳するにつれ、瞳孔ブロックが強くなり隅角は更に狭くなるが、耳側・鼻側まで全て見かけ上閉塞することは稀である。ただ、もしそうなれば、隅角閉塞のリスクは非常に高いと判断し、レーザー虹彩切開術の適応と判断するが、この検査は、前房深度、瞳孔ブロックの程度、隅角の広さ、プラトー虹彩形状の有無、脈絡膜剥離の有無など・・・様々な情報を提供してくれるものの、PACなのかどうかは教えてくれません。PACの診断、つまり、主として瞳孔ブロックが原因で隅角閉塞が発生して眼圧が上昇しているかどうかは、器質的隅角閉塞の程度・範囲の評価が基準であり、昔ながらの隅角鏡が最も重要な検査だと考えています。

眼圧が高くない場合
隅角閉塞が70-80%でも、10%でも、残存している隅角が十分機能しているPACと判断。ただ、10%の隅角閉塞で、眼圧正常なのに、GONがあれば、GONの原因を隅角閉塞には求めにくく、NTG with PACと診断すべきと考える。

③広範囲に閉塞している場合
眼圧が高くても、そうでなくても、PACの診断に迷いはない。勿論、確率的に with NTGの可能性はあるが。

治療
じゃあ、治療はどうするか。
レーザー虹彩切開術を、ヤグを併用して、丁寧にやれば角膜内皮に大きなダメージを与えないと仮定する(個人的にはそう信じていますが・・・)と、レーザー虹彩切開術の適応は、眼圧ではなく、瞳孔ブロックの強さと、それによる隅角の狭さによって決まると思うのです。具体的な数値を上げれば、前房深度が2.0mmを大きく下回り、1.6mm近くまで浅くなり、瞳孔ブロックが中等度以上で、UBMでIC(iris convexity)値が0.3mm以上もあって、隅角が見かけ上閉塞しているような場合でしょうか。眼圧は基準に入らないと思うのは、PACが慢性化して、隅角閉塞範囲が広がれば広がるほど、瞳孔ブロックはむしろ軽くなり、レーザー虹彩切開術で解除しても、眼圧下降が得られない事が多いからです。仮に、100%近い隅角閉塞があれば、原理的には、瞳孔ブロックはほぼゼロの筈で、レーザー虹彩切開術の意味もゼロとなる筈です。レーザー虹彩切開術は、あくまでも更に瞳孔ブロックが原因の隅角閉塞が増加するのを止める役割しかないのですから・・・。
 何でもかんでも、水晶体を取ってしまう派のドクターには、理解してもらえないでしょうが、例えば、サスマンなどの圧迫隅角鏡で判断したPASが10%でも、appositional closureが広範囲に生じていて、眼圧が高ければ、レーザー虹彩切開術の良い適応だし、逆に、PASが80%あって、眼圧が30を超えていてGONもあれば、レーザー虹彩切開術の適応はなくて、GSL+PEA+IOLがベストだと思います。このあたりの適応決定は、やはり隅角鏡検査をしっかり行い、UBMや前眼部OCT所見を参考にして決定する必要があると思います。
 全てのPACSやPACに対して、水晶体摘出術が行える訳ではないので、現在においても、隅角所見と眼圧とGONの程度を勘案しながら、レーザー虹彩切開術を含めた、今後の治療計画を立てることは、重要だと思っています。

※最後に、UBMで狭い隅角を観察すると、見かけ上閉塞しているように見える事がよくある。これを機能的隅角閉塞と読んでいいのだろうか。機能的に閉塞していれば、水を通さないと思うのだが、見かけ上閉塞しているように見えるのと、水も通さない状態との間には、大きな溝があるような気がする。非常に狭い隅角を暗室でUBMを行うと、時にほぼ全て象限で見かけ上閉塞することがあるが、眼圧上昇発作を経験したことはない。
by takeuchi-ganka | 2013-12-06 15:27 | 緑内障 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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