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関西医大眼科同窓会 秋の勉強会 その1 (891)

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残念ながらまだ任意ですが、学校での色覚検査が再開された事を受けて、色覚検査の講演を聞く機会が一気に増えました。湖崎先生の話を聴くのも、今年2回目・・

教育講演 先天色覚異常 湖崎淳

大正9年(1920)に学生生徒児童身体検査規程制定による「色神検査」として、色覚検査は学校現場に登場し、昭和33年からは毎年行われるようになっていたのですが、平成143月、学校保健法の施行規則が改正され、学校での色覚検査の施行義務はなくなりました。実際、その後殆ど行われずに来ましたが、文科省への要望の結果、平成26430日学校保健安全法施行規則の一部改正等について(通知)が行われました。この人達の文章って、いつもわかりにくいのですが⇒『・・・・・児童生徒や保護者の事前の同意を得て個別に検査・・・・・・特に,児童生徒等が自身の色覚の特性を知らないまま不利益を受けることのないよう,保健調査に色覚に関する項目を新たに追加する・・・』 事になりました。残念ながら色覚検査は必須検査ではなく、色覚異常について説明を行った上で、検査申し込みをしてもらうシステムのようですが、12年ぶりに色覚異常にチェックが入ることになった訳です。

演者は、緑内障や斜視弱視だけではなく、色覚に関してもうるさいのです。確か、大学の時も、【ヤング-ヘルムホルツの三色説】がどうのこうの・・・言ってた微かな記憶があります。L(赤)・M(緑)・S(青)の3つの錐体がどう反応するのかで、色感覚が決まる。これが100100100だと白、50500だと黄色だとか・・・。Lに異常があると異常3色覚(1型)、Lが欠損すると2色覚だと・・。色覚異常の名称は2005年に改正され、の色盲⇒2色覚、色弱⇒異常3色覚と呼びます。

 色の3要素は、色相・明度・彩度があり、色覚は色相のみ。CIE色度図(CIE標準表色系)で、混同色軌跡が116本、2型なら26本ある。

http://www.med.teikyo-u.ac.jp/~ortho/med/pat/color.htm

 重要な事は、色誤認を起こしやすい条件を理解すること。

1.対象物が小さい時(色の面積が狭い)。2.彩度が低い、あざやかでない色。3.明るさが足りない(薄暮、雨の日、薄暗い部屋)。4.短時間に見分けなければならない時。5.見るものに対する色の先入観。6.疲れなど、注意力が散漫な時。7.高速で移動時。※誤認を指摘された後、意識をすれば誤認は減少する。

先天赤緑色覚異常は、日本人女子では0.2%だが、男性の5%もいる。白人男性なら810%もあり、頻度的にみれば、AB型の血液型頻度レベル。40人クラスなら1人はいる計算になります。伴性劣性遺伝で、女性保因者は10%。ただ、遺伝の詳細は実は複雑で、兄弟でタイプが異なる色覚異常のこともあるので注意が必要。※1型色覚と2型色覚の比 13.03.5

1)色覚検査表(仮性同色表)

  1. 石原式 色覚検査表 II 国際版 38表:検出率99%とスクリーニングに優れるが、型判定不得意(85%)
  2. 標準色覚検査表 第一部先天異常用(SPP-1):検出率99%で、型判定もアノマロと96%一致。まもなく再発売らしい・・

2)パネルD15(色相配列検査):中等度以下(Pass)、強度色覚異常(Fail)の判定。型判定もアノマロと99%一致

3)アノマロスコープ:確定診断。強度異常3色覚と2色覚の確定など。

  • 色覚検査表(仮性同色表)の検査留意点:家族を同席させず、横に座って、聞き返すこともなく、自由に答えてもらう。
  • 検査の実際:昼光色蛍光灯下で、2種類以上の仮性同色表を用い、75cmの距離で、3秒ほど提示。読みにくい時は筆でなぞる。程度判定は、パネルD15
  • 石原式色覚検査表II国際版 38表:1類表(デモンストレーション)、2類表(変化型)、3類表(消失型)、4類表(隠蔽型)、5類表(分類型)・曲線表(あまり使わない)・環状表があり、1~21表で誤読4表以下が正常。8表以上が先天色覚異常と判定しパネルD15へ。
  • パネルD15:明度彩度が同じで色相だけ異なるカラーキャップを並べてもらう。黒い布の上で、1分かけた検査を原則2回やる。型判定に優れる。異常があれば再検査。
  • 診断書は、検査の結果を示すにとどめる?石原式色覚検査表II国際版 38表で誤読が◯個、パネルD15がパス・・・だとか。

色覚異常者へのアドバイス 

  •  日常生活に支障がない・・の裏側にある色誤認。20人に1人という現実。色誤認を生じやすい条件と回避する方法を知る。色誤認の特徴、色以外の情報利用を教える。職業適正の確認・・
  • 保護者への指導・アドバイス:色覚異常は個性。ただ不便があるので、・・
  • 学校の先生への要望:色覚に対する正しい知識を身につけてもらう。その上で、温かい配慮が必要。
  • 板書:色の組み合わせへの配慮。色以外の情報でわかりやすく表現。大きくハッキリと書く。
  • 地図・グラフも要注意。白黒コピーすると読みにくさが判断できる。

http://www.gakkohoken.jp/modules/pico/index.php?content_id=7 

進路について

理系学部は、殆ど制限ない。学部・学科(航空・海洋系)によっては制限あり。文系学部・教育学部・医学部・看護学校・薬学部・気象大学校など全て制限なし。調理師学校もないが、ふぐ取り扱い免許以外はない。航空大学校は色覚異常不可、海上保安大学校も石原表で検査正常が条件、防衛大学校は強度色覚異常は不可。競馬・競艇も何故か色覚異常不可らしい。 

資格試験などで明確な制限があるのは、自衛隊・警察・消防、JRの運転士やパイロット、海技士・航空管制官・海上保安官など。ただ、色覚異常の制限がなくても、広告・印刷、塗装、映像、デザイナー、カメラマン、服飾、食品の鮮度の判定・・・など微妙な色合わせや色識別が必要な職業は問題ありそう。

特殊な進路以外は殆ど制限がない状況で、1993年以降内申書にも書かなくなり、2001年以降雇入れ時も不問にして、バリアがなくなったようだが、色誤認を抱えたまま適正のない職業につけば悲劇を招く可能性。早い時期に自分の色覚特性を知り、経験を積んで、どの程度ハンディを克服できるか学習することが必要。


by takeuchi-ganka | 2015-11-19 13:55 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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