2016年 07月 12日
第5回守口オフサルミックフォーラム その2 (957)
特別講演
コンタクトレンズ関連眼感染症の未来予想図 筑波大学 准教授 加治優一
1987年(昭和62年)の話から・・・JR民営化・バブルのピーク・PL春夏連覇・ブラックマンデー・・・・私は30歳で関西医大眼科の助手でした。そんな1987年、あの石橋先生がアカントアメーバによる角膜感染を日本で初めて報告されました。欧米では1974年が最初で、1984年から急増したが、CL装用者への啓蒙が奏効して、その後激減したようですが、情けない事に、日本では、CLユーザーの低年齢化・量販店での販売・ケアの簡素化・ネットで購入・カラコンの普及・・・・などが原因が重なり、収束の気配なし?角膜感染症の中でも、CLユーザーに限れば、原因はアカントアメーバが1/3。CLユーザーか否かで、想定する起炎菌が大きく異なることが重要。CLユーザーなら、とりあえず、アカントアメーバと緑膿菌を想定すればいい。日本では、CL購入先は、一般診療所は20%、CL量販店が40%、ネットが35%と言われているが、ネットが急増中。(今や何でもネットで入手可能。エボラ対策にもなる抗インフル薬のアビガンでさえ買えるらしい・・)。ますますネット情報が増加し、ネットで購入して、自己判断で対策し、おかしくなってクリニックへ行くのだが、背景を隠していることも・・・あり、要注意。
①コンタクトレンズケース:原因の源
レンズケースは必ずチェックしましょう。問題なのは、バイオフィルム。この中に細菌・真菌・アメーバなどが取り込まれると、消毒薬も効かないようです。バイオフィルムは肉眼では見えないですが、歯垢の可視化剤(プラークチェッカー)が可視化に有効だと。GPC患者のケースでも50%陽性、角膜感染症患者の場合、100%陽性(僚眼のケースも陽性)。ケースにバイオフィルムがあると、少数のアカントアメーバでもひっついて増殖するようで、タンパク質だけなら2-3倍だが、バイオフィルムあれば70倍増殖。
②早期診断
まず、CLを使用しているかどうか。使用していたら、緑膿菌かアカントアメーバを疑う。培養・鏡検が重要だが、培養は時間がかかるので、顕微鏡検査が重要。演者は、スリットの横に、光学顕微鏡と蛍光顕微鏡をスタンバイさせている。昔高価であったが、今はそれほどもない。ニコンE100なら13万?Cyscopeminiなら12万?いくら時間をかけて細隙灯顕微鏡で睨んでも、診断は困難だが、ちょこっと組織を摘んで、ファンギオーラYで染めて蛍光顕微鏡で見れば診断は容易。
※また50%が緑膿菌。あっという間に悪化してしまう。クラビット+ベストロンの頻回点眼(三間くんのスタンスと違う?)。また超頻回点眼する場合、ベストロンは溶解液ではなく生食で溶解したほうが角膜毒性を回避できる。
③治療法
加治先生のアカントアメーバ1例目は25歳女性で、なんとワンデイタイプのCL(再利用なし)だったと。治療をスタートさせたが、ジルフルカンもフロリードも効かない。イソジンも×。有効なのはPHMB(CLのコールド滅菌の薬剤。だが、濃度が低すぎて無効なので、原液が有効だと)。
- PHMBの原液:これは分子量が大きくて、奥へ入っていかないのでちょうどいい。ただ入手が難しく、各都道府県1箇所しか無理?大阪は近大だけ?(http://spalux.jp/spalux/ ちょっと検索すると消毒剤として売ってそうなのだが、原液点眼はちょっと・・・・)
- Brolene(プロパミジン点眼薬):https://www.irxmedicine.jp/product/42678 ⇒個人輸入サイト。1本6900円ぐらいで2週間以上かかるので、間に合わないか・・ http://trop-parasit.jp/index.html ⇒ここに依頼すると無料で送ってくれる。
- クロルヘキシジン0.02% :これも原液0.02%をそのまま点眼。添付文書に結膜囊洗浄と書いてあればOK。0.05%は角膜実質炎のような炎症を引き起こすので×
④新たな脅威
- カラーコンタクトレンズ:改めて言うまでもなく、常識も知識も持たない若者が、ネットか量販店で購入し、初期指導も検診もないまま、いい加減なケア・使い方で、粗悪なカラコンを使えば、当然脅威↑↑
- オルソ-K:夜間角膜は低酸素に晒されるし、いつも少しキズついているだろうし、夜間瞬目なく、アメーバ溜まりやすい。水道水で洗浄したすれば更にリスクアップ。
- シリコンハイドロゲルレンズ:最近シェアを広げるつつあるSHSCL。実は通常のSCLよりも20倍アカントアメーバが付着しやすいらしい。シリコンハイドロゲル素材のカラコンなら、超ハイリスク?