2016年 11月 01日
第22回 大阪眼科手術シンポジウム その3 (977)
2,緑内障手術のEvidence Based Medicine 木内良明 広島
今回は、一風変わった内容の講演でした。正しく理解できたとは言い難いのですが、ネットで拾った情報を元にちょっとEBMについて復習してみました。
http://spell.umin.jp/index.htm
例にあげられた症例は、82歳女性で左眼が末期に近い緑内障。ルミガン・エイゾプト・チモロール・アイファガン・グラナテック+ヒアレイン(てんこ盛り点眼)、そしてダイアモックス内服という、ちょっと信じられない症例。この患者さんにこの先どう対応するかについて、EBMに基づくなら・・・?
EBMの5つのステップ
- Step1疑問の定式化
- Step2疑問についての情報収集
- Step3得られた情報の批判的吟味
- Step4情報の患者への適用
- Step5 Step1~4のステップの評価
Step1疑問の定式化 (疑問をPICOの形にする)
- Patient :どんな患者が (高齢の末期緑内障患者が)
- Intervention :ある治療、検査を行うのは (チューブ手術を行うのは)
- Comparison :他の治療、検査と比べて (レクトミーと比べて)
- Outcome :どうなのか?(どちらがいい(眼圧・視力・合併症・・・・?)
なんて、当てはめるのでしょうか。緑内障手術の効果とは・・・⇒ 眼圧を下げる。緑内障性視神経萎縮の進行(網膜神経節細胞死)を抑制する。そして失明を回避する・・・
Step2疑問についての情報収集
先輩や同僚(結構これに依存してきたが大丈夫?)、新聞・雑誌(殆ど信じられない?)、インターネット(玉石混交)、教科書(情報が古い?)、原著論文(ちょっと古いが正しい情報?)、二次情報(優れた原著論文を集めて利用しやすいように加工した2次資料)(個人的には、何だかこれを探している気がする・・・)
Step3得られた情報の批判的吟味
治療に関する論文のエビデンスレベルの分類(質の高いもの順)
- I システマティック・レビュー/randomized controlled trial(RCT)のメタアナリシス
- II 1つ以上のランダム化比較試験(RCT)による
- III 非ランダム化比較試験による
- IVa 分析疫学的研究(コホート研究)
- IVb 分析疫学的研究(症例対照研究、横断研究)
- V 記述研究(症例報告やケースシリーズ)
- VI 患者データに基づかない、専門委員会や専門家個人の意見
得られた情報の推奨レベル(グレーティング?)
⇒ これによる、例えば現在の『緑内障診療ガイドライン』は、エビデンスレベルⅥ、推奨スレードC1と科学的根拠に乏しいもの?EBM基づいた改定が望まれているようです。
Step4 情報の患者への適用
『文献の批判的吟味が済めば、次にそれらの論文の結果が、目の前の対象者に適用できるかどうかを検討する.この段階で重要な点は、論文の結果だけではく、医師の専門的知識や技術、対象者の価値観(意欲、目標など)などと併せて総合的に介入方法を検討していくこと』・・・のようで、TVTスタデイによればチューブ手術すべき?
Step5 Step1~4のステップの評価
・・・・だが何故しない?
EMB用語のLHH(Likelihood of being helped versus harmed)(実際に役立つのかどうか?)は、チューブ手術の方がいいようだが、晩期合併症まで含めて検討すると同程度か若干レクトミーがいい?
最初の例に戻るが、あの72歳の緑内障患者さんに、どんな手術を行うのかは、このようなEBMに基づいたステップで決定できるのだろうか?高血圧の治療と違って、介入するのは、人の手による手術だし、世界中のデータがある方向を示しているから、日本において、自分の病院において、特定の術者が、その方向に一歩踏み出すことについて、ちょっと疑問を感じてしまう。術者Aがバルベルトチューブを用いた手術を患者Bに行う場合、術者Aの技量や、患者Bの諸条件が、その手術成績に大きく関わると思うのだが、それはEBMレベルの高いスタデイの結果を適用できるのだろうか?ただ、日本においては、まだまだチューブ手術は、様々な前提があって、限られた症例にだけ行っているのだが、もう少しその適応は拡大されるべきなのかも。
最後に医療経済の話。QALYs、ICER、WTP?最近、保険適応が認められた、有効だけど超高額の抗がん剤(オプシーボ)があるのだが、年間3500万もかかるのだとか。3割負担でも1000万超。ただ高額医療制度があり、月1万2000円が限度額。こんな薬が普及すれば、間違いなく医療財政は破綻する。