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第22回 大阪眼科手術シンポジウム その3 (977)

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2,緑内障手術のEvidence Based Medicine 木内良明 広島

今回は、一風変わった内容の講演でした。正しく理解できたとは言い難いのですが、ネットで拾った情報を元にちょっとEBMについて復習してみました。

http://spell.umin.jp/index.htm

例にあげられた症例は、82歳女性で左眼が末期に近い緑内障。ルミガン・エイゾプト・チモロール・アイファガン・グラナテック+ヒアレイン(てんこ盛り点眼)、そしてダイアモックス内服という、ちょっと信じられない症例。この患者さんにこの先どう対応するかについて、EBMに基づくなら・・・?

EBM5つのステップ

  • Step1疑問の定式化 
  • Step2疑問についての情報収集 
  • Step3得られた情報の批判的吟味 
  • Step4情報の患者への適用 
  • Step5 Step14のステップの評価

Step1疑問の定式化 (疑問をPICOの形にする)

  • Patient :どんな患者が (高齢の末期緑内障患者が)
  • Intervention  :ある治療、検査を行うのは (チューブ手術を行うのは)
  • Comparison  :他の治療、検査と比べて (レクトミーと比べて)
  • Outcome    :どうなのか?(どちらがいい(眼圧・視力・合併症・・・・?)

なんて、当てはめるのでしょうか。緑内障手術の効果とは・・・⇒ 眼圧を下げる。緑内障性視神経萎縮の進行(網膜神経節細胞死)を抑制する。そして失明を回避する・・・

Step2疑問についての情報収集 

先輩や同僚(結構これに依存してきたが大丈夫?)、新聞・雑誌(殆ど信じられない?)、インターネット(玉石混交)、教科書(情報が古い?)、原著論文(ちょっと古いが正しい情報?)、二次情報(優れた原著論文を集めて利用しやすいように加工した2次資料)(個人的には、何だかこれを探している気がする・・・)

Step3得られた情報の批判的吟味 

治療に関する論文のエビデンスレベルの分類(質の高いもの順)

  • I  システマティック・レビュー/randomized controlled trialRCT)のメタアナリシス
  • II  1つ以上のランダム化比較試験(RCT)による
  • III  非ランダム化比較試験による
  • IVa 分析疫学的研究(コホート研究)
  • IVb 分析疫学的研究(症例対照研究、横断研究)
  • V  記述研究(症例報告やケースシリーズ)
  • VI  患者データに基づかない、専門委員会や専門家個人の意見

得られた情報の推奨レベル(グレーティング?)

⇒ これによる、例えば現在の『緑内障診療ガイドライン』は、エビデンスレベルⅥ、推奨スレードC1と科学的根拠に乏しいもの?EBM基づいた改定が望まれているようです。

http://minds.jcqhc.or.jp/n/

Step4 情報の患者への適用

『文献の批判的吟味が済めば、次にそれらの論文の結果が、目の前の対象者に適用できるかどうかを検討する.この段階で重要な点は、論文の結果だけではく、医師の専門的知識や技術、対象者の価値観(意欲、目標など)などと併せて総合的に介入方法を検討していくこと』・・・のようで、TVTスタデイによればチューブ手術すべき?

Step5 Step14のステップの評価

・・・・だが何故しない?

EMB用語のLHHLikelihood of being helped versus harmed)(実際に役立つのかどうか?)は、チューブ手術の方がいいようだが、晩期合併症まで含めて検討すると同程度か若干レクトミーがいい?

最初の例に戻るが、あの72歳の緑内障患者さんに、どんな手術を行うのかは、このようなEBMに基づいたステップで決定できるのだろうか?高血圧の治療と違って、介入するのは、人の手による手術だし、世界中のデータがある方向を示しているから、日本において、自分の病院において、特定の術者が、その方向に一歩踏み出すことについて、ちょっと疑問を感じてしまう。術者Aがバルベルトチューブを用いた手術を患者Bに行う場合、術者Aの技量や、患者Bの諸条件が、その手術成績に大きく関わると思うのだが、それはEBMレベルの高いスタデイの結果を適用できるのだろうか?ただ、日本においては、まだまだチューブ手術は、様々な前提があって、限られた症例にだけ行っているのだが、もう少しその適応は拡大されるべきなのかも。

最後に医療経済の話。QALYsICERWTP?最近、保険適応が認められた、有効だけど超高額の抗がん剤(オプシーボ)があるのだが、年間3500万もかかるのだとか。3割負担でも1000万超。ただ高額医療制度があり、月12000円が限度額。こんな薬が普及すれば、間違いなく医療財政は破綻する。


by takeuchi-ganka | 2016-11-01 14:01 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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