2016年 11月 14日
関西医大眼科同窓会 秋の勉強会 その2(979)
2)緑内障外来「緑内障診療アップデート」
2-1)薬物治療 松岡雅人 講師
今回は、何故かβ遮断剤の話。緑内障学会でも、同じような話を聞いたが・・・再び脚光?
http://takeganka.exblog.jp/26111438/
β遮断剤を使う上では、薬剤耐性に留意(short term "escape" and long term "drift".)チモロールホリデイが必要なことも。点眼の80%は鼻粘膜から血液中へ。涙嚢圧迫しなければ、呼吸器・循環器に作用する血中濃度になる。呼吸器では、喘息だけでなくCOPDにも注意。循環器では徐脈・房室ブロック、心不全に注意。ただ、慢性心不全・COPDを改善するという報告もある?
2-2)手術治療 城信雄 講師
流出路手術
- トラベクトーム(これも Trabeculotomy ab interno)、単独で16-17。
- ナイロン糸によるロトミー(これも Trabeculotomy ab interno) (漏れ伝わる情報では、良好な成績だと聞いていましたが・・・) 前房側から、Vランスのようなもので線維柱帯を切開して、そこから糸を半周ほど入れて(?)切開。2回に分けて、ほぼ全周切開する。単独で13-14、ロトミーより少し低い。前房出血もやや多いものの、2.4日で(-)に。時に大量出血あり。一過性眼圧上昇少し多い。ただ、時間が経つと、少し上昇してくる。その時に、再手術の選択肢がないので、初回は通常のロトミーで、糸ロトミーは2回目に?
- iStent 2本入れても単独で16-17。改良版がiStent inject?
- https://www.youtube.com/watch?v=DU7OPrQUsbo&list=PL92A8B945485BE78D
- https://www.youtube.com/watch?v=4liVsI5lExA
- エクスプレス 前房虚脱(-)、出血(-)、術後低眼圧(-)?レクトミー同等の眼圧下降で、合併症少ない。視力回復も早い。ただ、3.0テスラのMRIは安全とは言えない?濾過量が制限されているので、長期的には不利?ニードリング効果が弱い?内皮障害のリスクも。 ☆高齢、抗凝固療法中、強度近視、無水晶体眼などにはいい適応。
- バルベルト(ロングチューブ)城先生は、アーメドは経験がないので、バルベルトの話のみ。アーメドと違って調圧弁がないので、工夫が必要。チューブにスリット入れたり、ステント入れてあとで抜いたり・・・。大きな本体は直筋の間に設置して固定し、チューブは、輪部から3.5mmから挿入。早期に過剰濾過による低眼圧の後、高眼圧期があって、3-6ヶ月で14-15ぐらいで安定するらしい。難治緑内障相手に、20以下が76.9%(1年)というのは、なかなか良好な成績。
☆やはり眼圧下降が大きい手技は安全性が低いようで、眼圧下降的には①バルベルト②MMCレクトミー③エクスプレス④ロトシノ・ビスコの順。ただ、糸ロトミーはロトミーより少し眼圧低い。トラベクトームはロトミー同等。iStentは安全だが、眼圧下降悪い。
2-3)診断一主にOCT- ひらかた山岸眼科 山岸和矢 院長
圧倒的な情報量にまたもやノックアウト。ただ、緑内障の定義からすると、その機能障害が証明されない段階では、緑内障とは言えない。つまり、定義的には、どんなにOCTが進化しても、単独で緑内障とは診断できない。機能障害は視野検査するしかない。HFAの30-2や24-2は基本だが、早期発見には適さない。10-2は非常にいいのだが、その範囲外の障害を見逃す。その点、所謂眼底対応視野計のKowaAP7700は最も有効。皆が持っている器械じゃないので、通常は、10-2でいいかな?
先生の持論だが、全例OCTを行うべき。全例保険請求せよ・・とは言ってなくて、異常がなければ検査はサービス。私も、実践しようと努力しています。いくら頑張って視神経乳頭その周囲の網膜を見ても、全例OCTを行ったのと比較すれば、山岸先生のような超エキスパートでさえ、OCTに負けることもあると。従って、見逃しなくチェックするには、全例OCTすべきだと。石橋をハンマーで叩いてから渡る(?)先生らしいご意見。倒像鏡で、ちらっと眼底見て、怪しいと思った時にOCTするのでは、宝の持ち腐れ?個人的にはなるべく全例に(^^;)トプコンのSS-OCTのワイドというプログラムを行う事にしています。このワイドひとつで、視神経乳頭周囲の神経線維厚や黄斑のGCC解析が両方同時に可能なので。
☆またOCTの視神経en-Face画像でみるNFLDの解析。これは非常に興味深い。同じようなNFLDでも、OCTのen-Face画像ではかなり鮮明に見える。それが浅層から結構深い層まで見えるのだが、幅が10°以上で、3レイヤー(基準が不明だが)以上だと視野障害が生じている可能性が高いと。
★en-face画像:深さが違うとNFLDの角度・鮮明度も異なる。これを決められたレイヤーで見ることにして、ある幅以上で検出されたら、平面的に見ていたNFLDも、失われた神経線維総量の判定につながり、視野障害確実・・・と判定できれば、OCTで緑内障と言えるかも・・・・?
【宇山賞授与式】 プレゼンター:高橋寛二教授
今回は、長い間未熟児外来を支えている星野先生に授与。他の外来より、個人にかかる負担が非常に大きい未熟児外来をささえているスタッフ全員に対する教授から感謝の気持ちかな。
【病院報告】
☆附属病院紹介 中内正志病棟医長
☆総合医療センター紹介 尾辻剛病棟医長
☆香里病院紹介 垰本慎部長
【まとめ】 高橋寛二教授
最後に、尾辻准教授に関西医大総合医療センターの手術場・病棟・外来・医局を案内してもらいました。疲れている時に、長時間に渡って、時に説教を浴びながら、本当にご苦労様でした。改めて感謝申し上げます。