2017年 07月 18日
フォーサム2017大阪(第54回日本眼感染症学会)その1 (1031)
第54回日本眼感染症学会
特別講演 再考 ぶどう膜網膜炎における微生物の関与
東京医大教授 後藤浩
1)既知の感染性ぶどう膜炎のレビュー
既知の様々なぶどう膜炎の中で、明らかに感染性のもの(ヘルペス、ARN、トキソプラズマなど)は2006年の統計で15%、2012年で14%。ただ、分類不能のぶどう膜炎や非感染性ぶどう膜炎の中に、病原微生物が関与しているものが含まれている可能性がある。
一般的に感染の根拠は、細菌の場合、眼内からの検出、ウイルスは検出が困難だったので、特徴的所見から診断していた(今はPCR)。或いは治療(アセチルスピラマイシン・アモキシシリン・ガンシクロビル・・)に対する反応性で判断。
①ヘルペス性虹彩炎
- HSV 豚脂様KPs⇒斑状萎縮
- VZV デスメ膜皺襞⇒びまん性萎縮
- CMV 小さなKPs・coin lesion⇒内皮減少、水疱性角膜症
HSC・VZVと比べてCMVは男性に多い、高齢者に多い、内皮減少・・などちょっと異なる。
②ARN
Jpn J Ophthalmol. 2015Jan;59(1):14-20. Development and validationof new diagnostic criteria for acute retinal necrosis.
この新しい基準での110例ほどの報告。平均49.7歳で、VZV:HSVは5:1で、男女比は1.8:1。発症から抗ウイルス剤投与までは11.6日。そして、初診時視力0.3で、最終視力が0.1。やはり今でも視力予後は厳しいものがある。中には良好な視力を維持できる症例もあるのだが・・・。そして、統計学的には、VZVとHSVは視力に差がない。何となく変な感じだが、これは、予後が悪い筈のVZVの中に薬剤が有効な症例があるから・・らしい。最終的に0.01以下が33%もある。0.7以上も30%。1つ言えることは、眼内のウイルス量が多ければ予後不良で、抗ウイルス剤投与が早ければ予後が良い。
抗ウイルス剤は、ACV点滴⇒バラシクロビル内服。抗ウイルス剤を投与しなかったら70%が両眼発症し、投与しても30%に僚眼に発症した。予防的ビトは視力に関係ない。
片眼性88%で、両眼性12%。この両眼性は2パターンがあり、ひとつは2ヶ月以内に他眼に。もう一つは3年半以降に。
③後天性トキソプラズマ
殆どがアーケード内に。初診時0.4で最終0.7と比較的予後良好。アセチルスピラマイシンやダラシン内服+ステロイド内服。基本的には治療に反応(+)。ただ、薬剤変更が必要なことも、何度も再発することもある(30%は再発する)。免疫能が低下しているとトキソ?と思うほど派手な病巣を呈することがある。
例:虹彩炎で何度もステロイドが投与されている間に、派手な眼底所見を呈した。
例:眼内リンパ腫?CMV網膜炎?と思われている間に悪化したケース。
2)何らかの病原微生物の関与が推定される“非感染性ぶどう膜炎”
① CMVで見られた網膜血管炎・麻疹感染で見られた網膜血管炎・インフルエンザで見られた網膜血管炎。或いはちょっと所見が異なるが、インフルエンザワクチン接種後の網膜血管炎・・・・これらは、両眼性・対称性で、ステロイドに反応あり。血管炎は直接病原微生物によるものではないらしい。じゃあ、結核で見られる網膜血管炎は?感染?非感染(アレルギー)?
② Fuchs虹彩異色性虹彩毛様体炎:ここに病原微生物の関与は?トキソプラズマ?HSV、CMV?風疹が疑い濃厚に。GWC(眼内抗体産生指標)7以上で、前房からも風疹ウイルス検出(※Suzuki Jら)。また先天風疹症候群の白内障からもウイルス分離。
※Rubella virus as apossible etiological agent of Fuchs heterochromic iridocyclitis. Graefes Arch Clin ExpOphthalmol. 2010 Oct;248(10):1487-91. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20585798
③ サルコイドーシス 非感染性ぶどう膜炎だが、リケッチア・クラミジア・ヘルペス・・・・色々疑われた、Pアクネスが怪しい。分厚いERMがあり手術で切除した中に肉芽腫(+)の事(4/10)、その4例が抗PAB抗体陽性。つまりPアクネスが怪しい?
④ベーチェット
⑤VKH ⇒EBウイルス、CMV?
様々な非感染性ぶどう膜炎で病原微生物関与の疑いが出てきて、今まで感染性ぶどう膜炎は14-15%と思われていたが、36%ぐらいかもしれないと・・・
3)腸内細菌叢(マイクロバイオーム)とぶどう膜炎の関連
話題のマイクロバイオーム。これが様々な疾患に関わっている。ドライアイも?つかみは、恐怖の便移植の話で演者曰く、これを内服するぐらいなら、ドライアイぐらい我慢すると・・・。全く同感です。もっと洗練された治療でないとね・・・
①強直性脊椎炎(AS)や炎症性腸疾患(IBD)は、組織所見が類似していて、ぶどう膜炎を伴いHLAB27との関連性が示されている。またこれらの疾患において、重要な働きをするリンパ球の誘導に腸内細菌が関与している?
②EAU(実験的自己免疫性ぶどう膜炎)における網膜に特異的なT細胞は腸内細菌に由来する?抗菌剤で、腸内細菌をたたけばぶどう膜炎が抑制?
Gut Microbial AlterationsAssociated With Protection From Autoimmune Uveitis. Nakamura YK Invest Ophthalmol Vis Sci. 2016 Jul1;57(8):3747-58. http://iovs.arvojournals.org/article.aspx?articleid=2535256&resultClick=1
※EIUでも検証 ※endotoxin-induced uveitis
抗菌薬で軽症化?
※つまり、腸内フローラが非感染性ぶどう膜炎に関与していて、非感染性ぶどう膜炎に抗菌治療の可能性が・・