NEW POST

第10回 Osaka Ophthalmology Forum その3 (1022)

第10回 Osaka Ophthalmology Forum その3 (1022)_f0088231_16171283.jpg

談山神社 今年は赤の発色がいまいち・・・?


特別講演

濾過手術の現状と未来 東京大学 眼科教授 相原一

いつも難しくて、ついていくのが大変なのだが、今回は比較的理解しやすい濾過手術の話。

眼圧を下げれば緑内障が進行しにくい(しない)事は明らかなので、眼圧を下げに行くし、濾過手術が上手く行けば眼圧10以下も達成可能なので、積極的に行いたいが、そうなれと合併症の頻度が高くなる。トラベクレクトミーは、安全領域である10以下を狙える術式。眼圧が低いだけではなく、眼圧の質もいい。つまり、日内変動や日々変動も少なくなるし、体位変動による眼圧変化も少なくなる(3.31.0)。特に進行するNTGには10以下にするしかない。ただ、濾過胞感染の頻度はかなり高く、5年で2.2%。リークがあればリスク4倍。無血管濾過胞はリーク・感染しやすく、できれば、有血管のdiffuseな濾過胞を作りたいのだが、いくら頑張っても、達成率は28%ぐらいにしかならない。濾過胞リーク・感染を防止する確実な方法はない。

①エクスプレス:レクトミーより低侵襲で、ほぼ同等の眼圧下降が期待できるのだが、デバイスの位置が不正確、虹彩・内皮に接触、糸切りするとデバイスが動く、ニードリングしにくい、ブレブが小さい、3T以上のMRIが不可・・・などの問題点がある。37眼に行なって、14.810.01年)、31%下降で、生存率61.8%。脈絡膜剥離13.5%、前房出血10.8%ほど。レクトミーより合併症少なそう。長期的には・・・?

創傷治癒過程

結膜切開してから、瘢痕形成が作られるまでの幾つかの過程に薬物を関与させて安定した濾過胞を作る努力が続けられている。

  1. Monocyte chemoattractant protein-1 (MCP-1)
  2. Sphingosine-1-phosphateS1P
  3. TGFβ
  4. VEGF
  5. 5FU
  6. MMC
  7. ・・

MMCは濾過胞を作ることができるが、安全な濾過胞は中々作れない。将来創傷治癒過程に働く新薬の登場を待ちたいものです。そう言えば、もう10年以上前だが、相原先生の話で『虚血を作らない結膜切開』に関する演題が記憶に残っている。

 確か2006年の緑内障学会のモーニングセミナー(http://takeganka.exblog.jp/3347529/)で聞いた記憶が鮮明に残っています。こんなこと考える人がいるのかと・・・。結膜血管の事なんて特に考慮することなく、結膜を切開していましたが、結膜循環を考慮せよと・・。結膜血管の名前なんかあまり考えた事もなかったのですが、後方から前方へ走る血管にACA ( anterior ciliary artery) PTA(posterior tarsal artery??) があり、輪部付近で吻合している。輪部付近を切っても大丈夫だが、円蓋部切開で、PTAを切ると結膜が虚血に陥る。経験だけじゃなく、医学的な裏付けがあって、輪部切開すべし・・。ただ、頑張っても一番理想的な有血管びまん性濾過胞は28%程。

 で、この先手術は、切らない手術、MIGSへ。

  • 流出路再建(主経路):トラベクトーム・カフーク・シュレム管拡張・・
  • 流出路再建(副経路):前房脈絡膜下シャント
  • 濾過手術:前房結膜下シャント

InnFocusMicroshuntIMS

 結膜切開して、MMC塗布して、輪部から3mmの場所から幅1mmのポケットを作って、IMS挿入し、房水流出確認したら結膜縫合。丈の低いサイレントな濾過胞ができる。今年の緑内障学会での発表では術前18.712.91ヶ月)、16.53ヶ月)。1眼はチューブ閉塞して3ヶ月で抜去。これを除くと13.7mmHg?海外でのスタデイでは、24.111.73年)

AquasysXen:豚のコラーゲン、柔らかいチューブ

Abinterno approach to thesubconjunctival space using a collagen glaucoma stent. LewisRA. J CataractRefract Surg. 2014 Aug;40(8):1301-6.

※ともに、低侵襲で、視力良好で、合併症少ない。ただ、レクトミーのような術後調節はできなくて、入れっぱなし。いずれにしても、結膜下へ房水を流すのは、非生理的で、予測困難。白土先生の至言:濾過手術の成功は偶然にすぎない?


by takeuchi-ganka | 2017-11-13 16:17 | 学会報告 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31