2006年 10月 06日
第60回日本臨床眼科学会2
この日のランチョンは、アルコンへ行きました。暖かいお弁当に感激しながら・・
緑内障症例検討会 どうしますか? この症例!!
オーガナイザー
四谷しらと眼科の白土城照先生と大阪厚生年金の桑山泰明先生
(新しいコンビとして売り出し中!?角膜の木下・大橋コンビに対抗できるでしょうか・・・)
東大の先生と阪大の先生ですから、若い頃、症例検討したことはないと思われるお二人ですが、時は流れ、今や、日本の緑内障学会代表するスーパー専門家の東西対決(対談)です。20年前の日緑研と異なり、すっかり丸くなった2人に対決姿勢はなく、その点若干不満でした。昔は、そんなに、和やかじゃなかったじゃないですか・・。
交互に症例を提示されました。先ず白土先生から
①63歳女性。眼圧右18、左15.ハンフリーは左がやや悪い。一見すると普通のNTG症例のようですが、左眼にKPがあったり、虹彩が若干萎縮気味だったり、ポイントは、隅角所見で、線維柱帯の色素の左右差。これで、NTG+左眼のポスナーシュロスマン(PS)を疑う。あなたは疑えますか・・・と。でも、これは、簡単すぎるかな。ただ、経過みてると、実は、PSと違うほう(右眼)が眼圧上昇してくる。つまり、ry両眼のPOAGで、左眼のPSの方は、寛解期で眼圧が、むしろ下がっているのだと・・。次の問題は、PSには、キサラタンが使いにくいので、どうしますかと・・。
右眼は、キサラタン。左眼は、経過観察(又はβ遮断剤、CAI)が答?
次は、桑山先生
②34歳女性NTG
この症例は、経過中に妊娠したので、点眼を中止。でも、通常、妊娠の場合、眼圧が上がらない(むしろ下がる)。授乳中も点眼中止(母乳に濃縮されて出てくるので。特にβ遮断剤は危険?)。ただ、もし、中止して、眼圧が上がるならLTPで対応。
35歳女性POAG(進行例)
この症例は、もともと点眼のフルメディケーション中で、妊娠したので点眼中止すると、眼圧30以上となり、視力・視野ともに悪化した。仕方なく、授乳中も、キサラタンとサンピロ点眼継続してたが、その後、また、妊娠してしまった。もう、点眼中止できない・・・・。どうしますか。
桑山先生はロトミー、しらと先生はレクトミー。
※35歳の年齢を考えると、関西医大なら、濾過胞を作りたくないので、よほど進行例でなければ、下方からロトシノでしょうか。
2回目 白土先生
③35歳女性NTG
無治療で経過をみた後、
⇒キサラタン開始、だけど無効?
⇒エイゾプトに変更、これも無効?
⇒再度キサラタンに変更、1-2度下がったが無効
⇒今度は、キサラタン+エイゾプト(結構効いた。時に、こういうこともあるしい。あまり効かない2剤の組み合わせが有効だったりすることが。)
⇒キサラタン+エイゾプト+ミケラン(はっきりと有効)
ただ、視野は、-0.80dB/年程度悪化していたので、結局レクトミーした。今は、眼圧8mmHg
白土先生は、手術に持ち込むまで、5年以上みていた。良く我慢するなあと。大学におられた時の、白土先生なら、もっと早くに手術されていたような・・・
桑山先生は、エイゾプトが向こうだった段階で、眼圧レベルが15以上なら、SLTするらしい。
2回目 桑山先生
④65歳男性
高度近視、血管逆位、乳頭血管のanomaly +緑内障
眼圧20弱。SLTして、12-13。キサラタン入れて、10-13。
それでも、視野が悪化した。24時間眼圧見た上で、夜間眼圧上昇を確認した後、再度SLT
※こういう、中途半端な眼圧で視野が悪化する場合の対応が一番難しいが、夜間高眼圧を理由にSLTで、しのぐか、ズバッとレクトミーしてしまうか。
※SLTは、初回が有効なら、2回してもいい。ごくごく稀に3回も?
※SLTは、使い方を知らない人が多いらしい。無効例に何回も繰り返すことが多いらしい。何とかに刃物?
※このSLTというのは、実は、ALTという、昔から、アルゴンレーザーで行われていたLTP(laser trabeculoplasty )という緑内障レーザー治療を、特殊な波長のレーザーを使うことで、線維柱帯を破壊するのではなく、掃除する感じなので、繰り返し、何回も行える安全確実なレーザーと紹介されているのですが、この繰り返し何度も・・・ということは、とっても、利益を産むということで、この点の魅力に負けて導入した緑内障をわかっていいない施設では、かなり乱用されているという噂を聞いたことがあります。山ほど緑内障患者さんを抱え、SLTを日本で最もよくわかっている大阪厚生年金でさえ、3回したことは、数えるほどしかないようです。更に、LTPそのものが、緑内障治療にしめるポジションはもともと微妙で、それほどこの手技を積極的に行う緑内障専門家はあまりいなかった筈。それを年に1回行うとか、目薬の代わりに行うとか・・・信じられません。
3回目 白土先生
⑤63歳女性
急性発作後、レーザー虹彩切開術して、その後放置。
初診時:眼圧18、周辺虹彩前癒着60%、視野末期
(多分、この周辺虹彩前癒着の広さは、原発閉塞隅角緑内障の慢性型の急性発作でしょうか・・)
キサラタンとエイゾプトで、12-14
⇒レクトミー+PEA+IOL
⇒術後、浅前房 眼圧18
軽い悪性緑内障(浅前房眼に濾過手術をすると、稀にこうなります)
⇒ヤグレーザーにて、前・後嚢切開(硝子体の嵌頓を回避する為レクトミー部から離れた場所で)
⇒切開部に硝子体が嵌頓して、改善せず。
(通常ここで、硝子体手術だが・・・、白土先生は、硝子体手術が嫌いなので・・)
⇒経結膜強膜弁縫合(これで、房水の流れを変える?)
⇒前房深くなるが、眼圧23
⇒抜糸(切糸)して、眼圧10
⇒めでたし・・・?
※こんな治し方もあるのだと・・・感心しましたが、再発は心配です!
3回目 桑山先生
⑥48歳女性
眼圧 右50、左40
一見サイレントだが、隅角をよくみると、nodule が累々と・・・
眼サルコイドーシス?
Trabeculitis , Grant’s syndrome・・・
通常、ステロイド点眼でOK。
問題は、眼圧が下がらない場合、どれぐらい待てる?
視野・乳頭が大丈夫なら、3ヶ月でも6ヵ月でもOK?
但し、このタイプの緑内障眼の視野は、一度悪くなりだすと、早いので、1ヶ月で手術へ。当然レクトミー
ここでお開きとなりました。
お弁当も美味しくて、勉強もできて、アルコンさんありがとうございました。
原発閉塞隅角緑内障の治療についてネットで検索していて、先生のブログに行き当たりました。
とても充実したブログで楽しいですね。
それにしても、このランチョンセミナー、5年も昔のこととは言え、お粗末な内容ですね。
これで勉強した気になってもらっては、緑内障を専門にしていない先生方のレベルアップは望めない・・・
先生は突っ込みの質問はされませんでしたか?
ところでこの両氏、大御所(なぜそうなったか分かりませんが)ゆえに影響力があるのに、間違ったことをしゃべりまくってミスリードしているだけにたちが悪いと思います。
最初に大いに気になったのが ② 35歳女性POAG(進行例)。
>妊娠したので点眼中止すると、眼圧30以上となり
とありますが、「眼圧が30mmHgを超えたらPOAGは考えにくい」とは松村先生も執筆に加わっていらっしゃる『緑内障治療経過図譜』にある記述です。
この症例はPOAGではなく、例えばDGではなかったのでしょうか。
そうであれば、とっととLOT+SINを実施してあれば妊娠に際して点眼を中止することにためらいを感じずに済みます。
実際、私は29歳のDGの女性(術前眼圧40mmHg程度)にLOY+SINを実施し、その後、二人の出産を無事に終え、手術から6年以上経過した今も無治療で正常眼圧を維持しています。
授乳中にサンピロ処方していただとか、レクトミーをやってしまうとか、もってのほかと思いますが、先生ならどうされるのでしょうか?