2006年 12月 20日
原発閉塞隅角緑内障のスクリーニング その2
この疾患は、何をきっかけに診断されるのでしょうか。
1、眼圧が高い。もし30も40もあれば、何故ということで、精査します。多くの心ある?眼科医は隅角鏡もあてるでしょう。スリットの所見、隅角鏡の所見から、当然原発閉塞隅角緑内障と診断されるはずです。
2、眼圧が高くない場合。きっかけはスリットで、『ん?前房浅いのでは?』こう感じるところから始まるのではないでしょうか。この前房を浅いと感じることが実は簡単じゃないといえば、反論があるでしょうか・・・
もう、UBMという特殊なエコー検査に関わって10年以上になりますが、前房深度(角膜後面から水晶体前面まで)を測定していて、例えば
2.5mm以上:誰が見ても正常の深さで、浅いと感じることない筈です。
1.5mm以下:誰が見ても浅い前房で、これを見逃すようでは大問題でしょう。前房深度的には原発閉塞隅角緑内障発作眼同等です。
問題は、この間です。2.0mm前後の前房深度。これは、医師によって判断に大きくばらついていますし、同一の医師でも、日によって、判断にばらつきがあります。でも、慢性型の原発閉塞隅角緑内障の多くが、時に発作前の原発閉塞隅角緑内障が、或いはプラトー虹彩がこの前房深度帯に混在しているのです。だから、このやや浅い前房を特に意識する必要がある(ここがポイントでしょうか)。
つまり、深くない(2.5mm以上でない)と判断したら(そうでなくても)、スリットをスキャンして、周辺部の前房深度をチェックする必要があります。すると、この周辺部の前房深度がまたバラツキがあるのですが、意外と深い場合や、『えっ!』と思うほど浅い時がある。この周辺部の深さは、瞳孔ブロックの程度に左右されるので、日によって異なったりします。もし、『浅い』と感じたら、AC/CTをきちんとみる。これが、1/3以下なら、隅角鏡をあててみる。あとは、一連の流れにそって診断されるはずです。
つまり、やや浅い前房は、特に意識しないでいると、正常の深さと感じてしまうことがあるので、意識しておくことが大切なのです。
患者さんにとってみれば、全く自覚症状のない状態ですから、通常の診察に加え、隅角鏡検査を繰り返し受けることになり、負担増となります。
でも、私が『前房が浅いですね。将来緑内障になりやすい(普通の人より少し閉塞隅角緑内障になる可能性が高い)ですね。検査しておきましょう・・・』と、言った場合は、長々と述べたような理由があるのです。前房深度が2.5mm以上の人にこんなことを言う訳はないですし、1.5mm以下なら、レーザー虹彩切開術を検討することになるので、違った話になるはずです。皆さんご協力お願いします。
診察途中で、この微妙な前房深度の患者さんに、十分な説明ができるかと言えば、限りなく零に近い・・・のが現状で、ここに書いてみましたが、肝心の対象となる患者さん達が、ここを読んでくれる確率もまた、零に近いのかなあ・・。