2007年 02月 08日
レーザー虹彩切開術の適応の変化に伴って
レーザー虹彩切開術の合併症が喧伝され、水疱性角膜症の恐怖によって、レーザー虹彩切開術の適応が狭められるのは避けられないと思います。私も、制限せざるを得ないと思うにいたりました。というのも、大丈夫だと強く反論できる根拠がないからです・・・残念ですが。
ただ、1980年以降、気軽にレーザー虹彩切開術が行われたことで、複雑な原発閉塞隅角緑内障が非常に減少したのは事実だと思います。それまでは、瞳孔ブロックを解除する唯一の手技は、周辺虹彩切除しかなかったのですから。レーザー虹彩切開術によって、ハードルは思い切り下げられたのです。
20年ほど前に緑内障外来(関西医大)に入った時は、まだまだ様々なケースの原発閉塞隅角緑内障がありました。急性発作後、慢性経過から急性発作したもの、慢性経過で進行したもの、どう見てもプラトー虹彩だと思ったケース、周辺虹彩前癒着が8割を越して薬物コントロールの限界付近をさまよっている症例など・・・非常にバラエティーに富んでいて、これらを隅角鏡所見を頼りに診断し、治療方針を立てるのです。これによって、腕が磨かれたといっていいと思います。つまり、20年以上前は、予防的に瞳孔ブロックが解除されることなく、様々な形で発症し、その後治療された症例が多かった訳です。今と全く異なります。
ところが、その後レーザー虹彩切開術全盛となり、予防的に或いは早期にレーザー虹彩切開術が行われることで、複雑な緑内障は激減しました。最近は、ちょっと複雑な原発閉塞隅角緑内障があると、若い医者は、緑内障経験の結構多い人でさえ、特殊な閉塞隅角緑内障だと思ってしまうほどです。そんな時代にあって、時代を逆行させて、レーザー虹彩切開術の適応を大幅に縮小せざるをえないかもしれないのです。欧米化?したといっても日本人には、まだまだ狭隅角眼は多いと思うのです。予防的レーザー虹彩切開術の敷居が高くなれば、複雑化した原発閉塞隅角緑内障が増加するのは確実です。水疱性角膜症と引き換えだというのなら仕方ありませんが・・・。
この状況は、不謹慎ですが、旧世代にとっては、面白いといえば面白いのです。複雑な隅角鏡所見を読める世代だから?私は、今年50になりますが、50歳以上?の緑内障専門家にとって、この分野は若い医師に比べて大きなアドバンテージがあるかも・・・しれない。ないかもしれないけど・・
若い眼科医諸君。かかってきなさい・・?