2007年 03月 09日
緑内障点眼3
最後のジャンルです。かつて、点眼をめいっぱい入れて(full medication)、それでも眼圧下降が不十分な場合、時に内服の CAIを使用しました。ダイアモックスという白くて大きな錠剤です。短期の使用は、今でも行ってますが、手指のしびれ、低カリウム血症、腎・尿路結石などといった副作用の為に、長期連用は困難です。長期連用する場合、ダイアモックスで、1日1錠(250mg)分2を上限と決めていました。ただ、 CAIは、眼圧下降作用は強力で、1日2錠、3錠使えば、確実に十分な眼圧下降が得られます。従って、この点眼が発売されると聞いたときは、ついに夢の新薬登場?!・・・・と期待しました。
炭酸脱水酵素には、7種類存在し、全身の様々な部位に局在していますが、房水産生に関わる毛様体上皮にはⅡ型が多く、内服の CAIは全てのCAを阻害しますが、点眼 CAIはⅡ型CAを選択的に阻害すると言われています。毛様体のCAが完全に抑制されると房水産生は40%抑制されるそうです。だから、点眼 CAIは、房水産生のみを強く抑える新薬として期待したのです。
ただ、臨床治験が進むにつれ、実は、夢の新薬と騒ぐほどじゃないことが分かってきて、少し落ち着いた雰囲気の中?平成11年にトルソプト、平成14年にエイゾプトが日本発売されました。このトルソプトは、日本発売の段階で、濃度は、1.0%と0.5%の2種類となりました。米国で先に発売されているものは、2%のものが同名のtrusoptの名で発売されています。この2%点眼の効果ですが、メルク社のHPを見ると、同社にcosoptという点眼があり、これは、0.5%チモプトールと2%トルソプトの合剤なのですが、0.5%チモプトール単独治療の場合よりも、さらに20%(5mmHg)も眼圧を下げると謳っています。これが真実なら、20%というのは、なかなかいい数字です。どちらも房水産生抑制であるにもも関わらず、相加効果があり、更に20%下げるというのが本当なら、凄いことだと思います。だけど、日本のトルソプトは、濃度が半分の1%で3回点眼を必要とします。しかもかなり刺激感が強い。つまり、2%は刺激感が強すぎて使えないのと、1%も2%も眼圧下降に大した差がない?と判断した結果なのでしょう。ほんまかな。
トルソプトのあと発売されたエイゾプトは、この刺激感が抑えられているようです。しかも1日2回点眼。ただ、しみないけど、霞むのです。懸濁液なので、仕方ないのですが、黙って処方すると怒られます。緑内障点眼というのは、非常に長期にわたって使うのです。しみるのも、霞むのも、好ましくありません。1週間なら我慢できても、5年、10年は我慢できない。この点も、改良が望まれますね。
内服の炭酸脱水酵素阻害剤ほどじゃないけど、点眼でもいろいろ問題があり、炭酸脱水酵素阻害剤というのは、なかなか快適に使用しづつけることを許してくれない薬なのかもしれません。