NEW POST

第111回日本眼科学会総会(その2)

平成19年4月21日土曜日
午前の診療終了後、とっても天気が良くて、なんだか勿体無いのですが、学会上へ・・・・
特別講演とか宿題報告とかは、要約して記載すると、演者に失礼なので、印象記ということで、内容を正しく反映していなくてもご勘弁を。

特別講演2 偽(無)水晶体眼の臨床病態生理を巡る40年
眼科三宅病院 三宅謙作

 白内障手術は、
1、古典的水晶体嚢外摘出
2、水晶体全摘出(ICCE)
3、超音波白内障手術(前期)
4、水晶体の計画的嚢外摘出へ回帰
5、現在の形に近い超音波白内障手術(PEA)

 おおよそこんな変遷を遂げました。私が眼科医になったのは、2の水晶体全摘出時代です。この時期、術後しばしば類嚢胞黄斑浮腫(CME)がおこり、視力不良の原因となっていました。特に、硝子体脱出という合併症を起こすと、CMEは高頻度だったようです。昔使われた、虹彩支持型のIOLの場合、100%だとか。
第111回日本眼科学会総会(その2)_f0088231_834522.jpg

 結局、CMEは、手術侵襲が原因で産生されるプロスタグランジンが原因であること、ステロイド点眼では抑制しにくいが、インドメサシン点眼やジクロフェナック点眼にて抑制できること。黄斑部に特徴的な変化が起こり、視力低下を来たすが、実は網膜全体にERG異常が生じていること・・・・・
(あまり興味を引きませんでした。)

宿題報告1
ヘルペスの潜伏感染、再発、新治療法
近畿大教授 下村嘉一


 大橋先生曰く、ヘルペス三兄弟の次男、下村先生の発表です。長男大橋、三男井上だそうです。優秀な兄弟ですね。
 単純ヘルペスは、幼少時に初感染し(ありふれた結膜炎の形)、三叉神経節に潜伏感染し、何かをきっかけに再活性化を起こし、樹枝状角膜潰瘍に代表されるような角膜ヘルペスを発症します。この再活性化は、何がきっかけなのかをアンケート調査で調べると再発誘因は、疲労69%、睡眠不足31%、肩こり31%だそうで、疲労に注意だとか・・。ただ、聞かれると、こんな答えしてしまいそうな気がするし、疲れるなと言われても、難しいですね。
 古い常識では、潜伏感染は、三叉神経節にあると考えられていましたが、実は角膜内にもいるらしいのです。角膜移植に使われるドナーの角膜を調べると、角膜ヘルペス既往のある角膜の殆どにウイルスが証明され、既往のない角膜にも10%程度はいるそうです。つまり、角膜ヘルペスを発症していなくても、角膜内にヘルペスが潜伏しているかもしれないのです。 また、涙液中にも、ヘルペスのDNAは証明されているし、角膜内のヘルペスは各種眼内手術で増加するそうです。我々はヘルペスと共に生きているということでしょうか。
 最近話題のケモカイン。これは、特定の白血球サブセットの遊走作用・活性化を支配する一連のサイトカインとして発見されたものの総称だそうです。この中に、抗ウイルス活性を持つものがあることが示されました。
 現在角膜ヘルペスの治療薬は、アシクロビル眼軟膏がメインですが、このアシクロビルのプロドラッグのバラシクロビルの内服(バルトレックス)が使われるようになりました。この内服は急性期にも十分な治療効果を発揮しますが、再活性化も抑制するようです。


宿題報告2
東京大学 角膜組織再生医療講座助教授 山上聡
拒絶反応のない理想的な角膜移植手術を目指してー全層角膜移植から内皮細胞移植へー


 角膜移植の成功率は、10年で72%だそうです。つまり3割弱が失敗。その原因は、やはり拒絶反応がメインのようで、この拒絶反応のない手術を目指そうというのです。また、屈折矯正という側面で眺めると、まだまだ非常に荒っぽい手術なのです。
 移植角膜片が、異物として認識され、抗原提示される。樹状細胞という細胞が抗原提示細胞として働くそうです。頚部リンパ節で抗原提示をうけたT細胞が移植片に移動し、拒絶反応を引き起こすのでしょうが、その際、白血球の移動・定着に、ケモカインが働いていて、CCL19、21や受容体のCCR7の関与が濃厚で、ここを抑制できれば、拒絶反応制御の可能性があるらしい・・・・・・
 ・・・・中略・・・
 マウスで、培養した角膜内皮細胞を移植すると、免疫反応が全くおこらないそうで、ほぼ100%成功するそうです。この角膜内皮というのは、抗原が認識されない(免疫無視)・・・?。角膜移植が必要になる原因疾患としては、水疱性角膜症がありますが、これは角膜内皮細胞が減少し、一定レベル以下になると角膜内に水がたって混濁する状態です。悪いのは内皮細胞だけで、それを拒絶反応起こすことなく、移植できれば理想の手術になるのかもしれません。臨床応用直前だそうです。乞うご期待。

宿題報告3
九州大 園田康平
眼炎症と自然免疫


 免疫には、自然免疫と獲得免疫があります。獲得免疫は、T/B細胞が担当し特異性の高い免疫反応を引き起こす。自然免疫は、白血球、マクロファージ、樹状細胞、NK細胞・・・などが担当し、感染初期の感染防御を担う免疫で、以前は原始的で特異性の無いものと考えられてきました。
 慢性遷延化したぶどう膜炎の硝子体手術で得られたサンプルを解析すると(by Luminex®システム)、リンパ球に働く、サイトカインはなく、IL-8、MCP-1といった自然免疫系のケモカインばかりだったそうで、急性期には、Th1細胞主体だったのが、慢性期にはTh17主体にシフトしているようで、慢性期の治療ターゲットもそれに応じて変える必要があるらしい。
 そして加齢黄斑変性。免疫屋さんから見た見解だそうです。
 自然免疫ですが、最近、Toll-like receptor(TLR)の発見、その役割の解析により、自然免疫系が病原体を特異的に認識すること、病原体に適応した反応を引き起こすこと、また感染後期の獲得免疫系の活性化にも重要な役割を果たしていることが明らかとなってきたようで、この分野の専門用語が飛び交っています。私の知識は、自然免疫は原始的・非特異的で止まっていたのが、今回理解できない発表が多かった原因のようです。この自然免疫も加齢黄斑変性に関係している・・?
 NKT細胞は、NK細胞(ナチュラルキラー)とT細胞の両方の性質を合わせ持つ、新たに分画されたリンパ球で、レーザーで脈絡膜新生血管を誘導するマウスのモデルで、NKT細胞がVEGF産生に関連して、新生血管発生に関わっているようだと・・・
 最近、動脈硬化部位から肺炎クラミジアが検出され、心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化性疾患と肺炎クラミジアとの関係が注目されていますが、加齢黄斑変性発症においても補足的な因子にもなっている可能性ありだそうです。肺炎クラミジア・・・。少し勉強しないといけませんね。
 VEGFレセプターのFLK-1を遺伝子導入した非病原性のサルモネラ菌を経口摂取させて、FLK-1を叩くCD8キラーT細胞を誘導し、VEGFが働けなくして、脈絡膜新生血管発生を抑制するという試みも紹介されていました。難しい・・・
 また、加齢黄斑変性の最終段階の瘢痕期を想定した網膜下瘢痕モデルを作成し、その瘢痕形成にIL-6が深く関わっていること。また、最近バブルリポソームと超音波技術を組み合わせた新たなドラッグデリバリーシステムの医療分野への応用が行われつつあるらしいですが、抗IL-6抗体をこの技術で網膜下へうまくデリバリーする方法が紹介されていました。

※やはり日眼は難しいです。
by takeuchi-ganka | 2007-04-23 08:37 | 学会報告 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31