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すだちの会

 台風がすぐそこに迫っている祇園の宵山が始まる7月14日にチョット興味のある勉強会がありました。『すだちの会』という勉強会です。亡き父が懇意にしていただいていた阿部先生が世話人をしておられる勉強会なので、多分、大正区を中心とした病診連携の為の勉強会でしょうか。少々場違いな場所に入った感じでしたが、興味のある演題が多く収穫たっぷりでした。今回の1000円は安い。

 第6回すだちの会(西六区眼科勉強会) with 大阪北地区眼科病診連携の会
※演者:敬称略

一般演題
低視力者向けの網膜投影式視覚補助装置(大阪市立:戒田)

  ロービジョンの患者さん視覚補助装置には、様々なものがあり、ロービジョンエイドと呼んでいます。
 拡大鏡(近用)、単眼鏡(近・遠用)、掛けメガネ型、据え置き拡大読書型・・・・
 今回紹介されたのは、網膜投影式の視覚補助装置で、ピント合わせが不要で、通常の視覚補助具では得られない、くっきりした映像を見ることができるそうです。既に、ウエアビジョンとう会社から発売されているようで、ここを参考にしてください。


1、涙道内視鏡の世界(多根眼科病院:大江)
涙道の検査としては、昔から、ブジー、通水検査、涙道造影しかなく、一般開業医にとっては、ブジーと通水検査だけで判断せざるを得ないのですが、この日は、涙道内視鏡の画像をたっぷりと見せていただきました。
  最もポピュラーな疾患である(後天性)鼻涙管閉塞ですが、今までは、どうしてもブラインド操作で閉塞部の開通をせざるを得ないのですが、この内視鏡を用いると別世界です。先ず、涙小管の様子、涙嚢内の状態が分かります。正常な涙嚢と鼻涙管閉塞している涙嚢とは内壁の状態が違うのです。この内視鏡で観察しながら、閉塞部位を穿破する内視鏡下直接穿破法を行い、その後シリコンチューブを留置し、涙道内視鏡と鼻内視鏡の両方で確認するのです。涙嚢内が白いと内視鏡下直接穿破法は1回では無理らしい。
 そのほかにも、先天性鼻涙管閉塞にブジーして治らなかった涙嚢(穴ポコだらけ・・)、涙小管炎 with 涙石、涙嚢内に落ちた涙点プラグ(フレックスが多いらしい)など、興味深い画像ばかりでした。
 更に、DCRの鼻内法も紹介されました。慣れてくれば、低侵襲&短時間の手術で、鼻外法と同レベルの成績(95%成功)も期待できるようです。
 涙道治療の世界も大きく進歩しているようです。
内視鏡は、ファイバーテック社製で、ここに少し画像がアップされています。

2、私のNTG治療方針(大阪厚生年金:桑山)
  日本の緑内障のトップリーダーの一人である桑山先生の登場です。いつも非常に興味深い内容の講演なのですが、今回は、どこかで聞いたことがあるような・・・
  NTGの治療をどうするか。眼圧を30%下げると進行しない。眼圧を1mmHgでも低くすれば、それだけ、視神経は長持ちする・・・・というエビデンスにのっとり、眼圧を下げねばなりませんが、具体的にはどうするか。全例で30%を目標にする訳に行かないし、できない。
そこで、初期の場合、視野を小まめに測り、2年で6回ほど。それで、MDスロープを求める。平均余命を考慮し、この患者さんが、一生不自由なく過ごせるには、このままでいいのか、点眼だけでいいのか、手術が必要なのか判定する。まあ初期なので、それぐらい時間をかけて判定していいのです。
中期の場合、それほどゆっくりと時間をかけていられない。特に固視点近く、下方の暗点は要注意。他眼が見えない場合も要注意。この中期の場合は、視野が悪化したかどうかの判定を器械に委ねます。なかなかいい判定方法がなかったのですが、ハンフリー視野に附属しているGPAという緑内障視野進行解析プログラムがお勧めだそうです(少し前に慌てて導入したので、当院でも行えます)。これで判定し、悪化しているなら、その眼圧レベルは不十分と判断する訳です。
末期の場合。進行すればするほど低く眼圧を維持する必要がありますが、末期になると守るべきは、中心視野です。GPでは大雑把にしかわからないし、通常の30-2のプログラムでも大まかにしかわからない。だから、10-2を使えと。それでも真っ黒になるようなら、指標サイズⅤにして10-2を行いなさいと・・・

3、正常眼圧緑内障と神経眼科医の役割(近大堺病院:中尾)
最後は、ご存知、神経眼科の大家、中尾先生です。今回は、非常に興味深い内容でした。なかなか、ここまで興味深い講演を聴く機会は少なく、台風の中、行った甲斐がありました。
※正常眼圧緑内障の診断には、頭蓋内疾患の除外と簡単にかいてありますが、脳外に依頼してMRIを撮っても駄目な場合があり、神経眼科医の出番が結構あるというのです。

1)NTGのように見えたが・・・・
蝶形骨縁の髄膜腫だった。
つまり、視交叉近傍の良性腫瘍、特に鞍結節髄膜腫、蝶形骨髄膜腫は間違いやすいので、注意しましょう。MRIは必ず造影して。
※乳頭所見と視野が合わない、CFFが悪い、対光反応が悪い、視力が悪い・・・場合は、要注意。

2)緑内障性視神経萎縮の画像
  緑内障性視神経萎縮をMRIで撮ると? (STIR法を用いると、明瞭に捉えることができる)
  脳腫瘍の場合は、下行性萎縮だが、緑内障の場合は、上行性萎縮。視神経の前から後ろへ向かって萎縮がすすむ。そして、前ほど萎縮が強く、後方ほど弱い。
 有名な話だが、緑内障は、視野に初期変化が出た段階では、既に神経線維の50%が失われていると言われていますが、視神経の50%が萎縮しているとすれば、これはMRIで容易に検出可能であると。つまり、MRIを緑内障早期発見に応用できると・・・・。

3)緑内障類似疾患
視神経乳頭の形成不全は、しばしば視野欠損を伴います。この場合、緑内障との鑑別診断が問題になりますが、緑内障かどうかは、1-2年待てば、進行しているかどうかでわかるのですが、すぐに知りたい。しかも正確に知る方法があるというのです。緑内障の専門家が、視神経を睨んで、どうも怪しいというのとは異なる、客観的な方法です。先ず、MRISTIR法を用いて撮像します。視神経を横断するスライス面で、信号強度比(=視神経/脳白質)を計算します。正常例の信号強度比は、1.09±0.10(N=24)だそうです。この比を測定することで、如何に緑内障類似の疾患(近視・低形成・傾斜乳頭・小乳頭・巨大乳頭・・・)であっても、低信号なら、緑内障を除外できますし、高信号なら緑内障も存在すると診断できるのだそうです。
 また早期の緑内障性視神経萎縮は、横断面で見ると分節状に生じています。上方のビエルム暗点だけの緑内障なら、萎縮は下方を中心に生じている筈です。このことも、最新のMRIを用いれば、視神経のスライス面で、下方に高信号を証明できるのだそうです。緑内障が初期であれば、前方のみ高信号ですし、進行すれば、高信号は徐々に後方に進みます(上行性萎縮)。
 このことを応用すれば、視野に異常が出る時期、つまり50%の神経線維が失われる時期よりも遥か以前に、早期発見可能かもしれないと。だから、緑内障の家族歴がある人は、20歳代にMRIをSTIR法で行い、この信号強度比を測定すれば、超早期発見可能?緑内障の早期診断の為に、様々な方法が行われていますが、このMRIを用いた方法は、発見時期を飛躍的に早めてしまう可能性を秘めているようです。


※質問は簡潔にしてほしいなあ・・・
by takeuchi-ganka | 2007-07-16 17:37 | 学会報告 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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