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再び糖尿病網膜症について その3 (糖尿病網膜症の患者さんに朗報?)

  内科の知識に疎い私には、高血圧治療薬は、カルシウム拮抗剤が主と考えていました。が、これは80年代の話のようで、83年にACE阻害薬が発売され、98年にARB(アンジオテンシンⅡ受容体ブロッカー)が発売された後、治療薬の勢力図は急速に変わりつつあるようです。この最後のARBは、血圧を下げるだけじゃなく、確かに虚血性心疾患や脳血管障害、さらに腎障害のリスクも下げることが明らかになるにつれ、その市場は急速に拡大しているようです。

  眼科との関わりで言えば、カルシウム拮抗剤(ニルバジピン)が正常眼圧緑内障に有効である可能性が示されたことがありましたが、市民権を得るところまでは言っていません。実は、高血圧治療薬分野において、最後に登場し、急速に市場を広げつつあるARBが、糖尿病網膜症に有効である可能性があり、大規模な臨床試験が進行しています。天下の武田薬品とアストラゼネカ社が共同で参加しているDIRECT試験(DIabetic REtinopathy Candesartan Trial)です。この試験は、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬「カンデサルタンシレキセチル」(ブロプレス)の糖尿病網膜症に対する効果と発症予防を検証する世界で初めての大規模臨床試験です。カンデサルタン32mg投与群とプラセボ投与群を比較する二重盲検試験で、3つの独立した試験で構成されます。
1、糖尿病網膜症未発症の1型糖尿病患者を対照とした発症予防 (n=1,421)
2、1型糖尿病で糖尿病網膜症を発症している患者を対照とした進展抑制 (n=1,905)
3、2型糖尿病で糖尿病網膜症を発症している患者を対照とした進展抑制 (n=1,905)
 現在、世界30カ国、309施設で5231人の患者が参加し、今年07年に試験の結果が明らかになる見込みです。
 糖尿病患者において、高血圧は、血糖とは独立した糖尿病網膜症発症の危険因子であることがわかっています。高血圧をしっかり管理することが糖尿病網膜症に有効なのです。糖尿病の患者さんは、血糖だけでなく、高血圧の管理もしっかりやらんと駄目なのです。
 ただ、高血圧治療薬の中でも、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を用いた厳格な血圧コントロールは、糖尿病性腎症の進展を抑制するだけでなく、改善も図れることが明らかになってきましたが、多分、このことは、糖尿病網膜症においても・・・・・
  それを証明しようとする試みのようです。選ばれた薬剤は、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬「カンデサルタンシレキセチル」(国内製品名:ブロプレス)です。もし、有効であれば、糖尿病網膜症を直接治療してくれる初めての薬となるかもしれません。結果が発表されたら、また報告します。
by takeuchi-ganka | 2007-08-23 10:09 | 糖尿病網膜症 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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