NEW POST

第13回大阪眼科手術シンポジウム

 9月に入り、秋雨前線の南下とともに、すっかり涼しくなってきました。日本酒の旨みがぐっと増す時期の到来です。そんな9月最初の土曜日の午後に、超高級車が玄関に並ぶリッツカールトンに行って来ました。と言っても、1000円しかお金のかからない勉強会です。

第13回大阪眼科手術シンポジウム

一般講演
1、当院における眼内レンズ縫着術(大阪市大)
  白内障手術で水晶体嚢にトラブルがあり、IOLが入らなかった場合、IOLの縫着術が行われますが、このIOLをいつも同じ位置に正確にポジショニングすることは中々困難です。縫着用IOLがありますが、滅多に使わないIOLを常備することも困難です。この発表では、先ず、通常使用するfoldable IOL(AMO AR40e アクリル)を用いて(小切開から挿入可能)、IOLへの縫着部位はループの先端から3mmの正確に位置とし、眼球への糸の通糸位置は、輪部から1.5mmとし、2箇所の通糸位置が180度の対面になるように、縫着用マーカーを用い、残存水晶体は23Gシステムで完全に除去する。このように十分計画性をもって縫着すれば、位置ずれを起こすことはない・・・らしい。

2、増殖糖尿病網膜症に対するBevacizumab術前投与を併用した経結膜硝子体手術の成績(阪大)
  従来20Gで行われていた硝子体手術ですが、最近、結膜切開なしで、縫合不要で、術後の見場がいい、23/25Gシステム:MIVSが急速に広まりつつあるようです。このシステムは、複雑な操作には向かないようで、黄斑円孔やERMには行われても、増殖糖尿病網膜症には不向きとされてきました。この発表は、術前にBevacizumab、つまりアバスチンを術前(平均10日)に1.0mg硝子体内投与し、新生血管の活動性を抑えておけば、MIVSで手術しても20Gでやっても、結果に遜色がない・・・らしい。今後器具の充実とともに、益々MIVSが広まるのでしょうか・・
※ただ、アバスチンを入れると新生血管の退縮とともに強い線維化が生じ、網膜の牽引が強まり、剥離が全剥離となり予後を悪化させることもあるので注意が必要だとか。


3、濾過胞再建術を施行した硝子体術後眼の検討(高槻赤十字)
  何だかよくわからん発表でしたが、再建術の成功率は3年で33%程度だとか。硝子体出血があると成績悪いようです。

4、白内障硝子体同時手術後における新しいアクリル製IOLの安定性についての検討(関西医大)
  アルコンのSA60ASと、HOYAのVA60BBRを比較したようですが、手術の際のガス使用の有無にも関係なく、差はあまりないようでした。BBRは、ガスを入れない時、近視化傾向あり。それだけ・・・
  ※IOLの位置は、直後が角膜から2.75mmで、2週以降は4mmで安定。

5、当院での極小切開Triple手術の現状(トメモリ眼科)
  橋本という地域性から、硝子体手術を日帰りで希望される方があり、その希望に応える必要性に迫られ、十分に準備を積んで、症例を選択肢、手術の説明をしっかり行い、立派な手術システムを組んで始められたようです。立派な個人病院ですね。

特別講演
1、角膜パーツ移植(慶応大 榛村)
 角膜手術分野の進歩は目覚しく、チョット目を離すと格段の進歩を遂げていて、びっくりさせられます。今回も、中々面白い発表でした。一昔前まで、角膜移植と言えば、全層角膜移植しかありませんでしたが、何も必ずしも全層移植する必要はないのです。内皮が正常であれば、内皮だけ残して、他のパーツを移植すればいい、つまり、上皮、実質、内皮など必要なパーツのみを移植する方向に移行しつつあるようです。(再生医療に商業資本が入り込めば、必要なパーツが製品化される日も遠くないようですが、今回は、その話ではありません。)従来は、手術成績といっても透明治癒率が問題になるだけで、視力が悪くても仕方ないというレベルでしたが、ようやく患者さんの満足度を議論できるレベルに上がってきたようです。

①上皮移植
適応疾患:角膜熱傷、化学火傷、眼類天疱瘡、スチーブンス・ジョンソン症候群、膠様滴状角膜ジストロフィ、無虹彩
  例えば、膠様滴状角膜ジストロフィは、強く角膜が混濁していて、全層駄目なように見えますが、実は上皮のみの障害で、濁っている部分つまり、上皮と表層実質の混濁部位を切除して、LKPとアロ輪部移植を行うだけでいい。
  ここで活躍するのは、人工前房で、これに、ドナーから採取した強角膜をセットすれば、通常の角膜手術と同様の方法で、ドナー角膜に細工ができるのです。この装置の貢献度は非常に大きいようです。ここで、表層角膜実質を切除するのと同じ手技で、ドナー角膜から表層実質を採取し、更に、輪部も非常に薄くしてドーナツ状に採取してきて移植するようです。これで完璧?

②実質移植
  適応疾患:円錐角膜、格子状・顆粒状角膜ジストロフィーなど
  表層の混濁している部位を切除する。混濁が深いなら、異常のない内皮のみ残して、深層角膜までも切除し、人工前房にセットしたドナーから該当部位を同様に切除し、移植する。輪部幹細胞や内皮は正常なのでそのままを利用する。
  ・表層角膜移植術(LKP)
  ・深層角膜移植術(DLK)
  
③内皮移植
  適応疾患:フックス角膜内皮変性症、レーザー虹彩切開術後水疱性角膜症、偽水晶体性水疱性角膜症の3つで、欧米ではフックス、日本ではレーザー虹彩切開術後が多いようです。何故だか知りませんが・・・
☆この角膜手術も、やたら暗号のようですが、内皮移植には、この3つがあります。
 ・ELK  :endothelial lamellar keratoplasty
 ・DLEK :deep lamellar endothelial keratoplasty
 ・DSEK :Descemet’s stripping and endothelial keratoplasty
 
最後のDSEKのみ紹介しますと、先ず、デスメ膜を剥がします。通常の手術手技からすれば、そら恐ろしい行為ですが、これが目的なのでいいのですが、実際は、逆シンスキーフックで、以前の白内障の前嚢切開法:can opner法の要領で、円形に内皮を穿孔し、円形に剥がしてくる。マイクロケラトームで切開されたドナー角膜から内皮を剥がし、円形の移植片を採取し、fodable IOLのように、折りたたんで、前房へ入れ、中で広げ、空気を前房内に入れて角膜実質に押し付ける。成功率がどの程度か知りませんが、術後の仕上がりが非常に綺麗な手術でした。

2、糖尿病患者のQOV向上のために何をすべきか(女子医 北野)
翌日に大切な用事があり?、疲れが出ないように、ここで退席してしまいました。
手術のシンポジウムなのになあ・・・
by takeuchi-ganka | 2007-09-02 15:47 | 学会報告 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31