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第61回日本臨床眼科学会-1

 秋晴れの10月11日(と言っても昼からですが・・・)、芝生の上ではなく、国立京都国際会館へと向かいました。この学会も還暦が過ぎ、第61回目となった日本臨床眼科学会です。学会長は、目新しいものを提供したいと考えるのでしょうが、参加する側としては、いつもと同じやり方のほうが、戸惑わなくていいのですが・・・。当日登録は、妙な場所で、妙な雰囲気で、これって画期的なんでしょうか。学会に参加するのですから、小さな鞄ぐらい用意しているのに、コングレスバックを配られて、荷物がかさみます。どうせ、ランチョンは、長蛇の列。整理券、意味あんのかなあ・・・。いつもと一緒でいいのに・・・
 
 最初は、専門別研究会です。昔グループディスカッションと、言っていたものです。勤務医時代には、決して近づくことのなかった『屈折調節』に行ってきました。羊の皮をかぶった狼も渋滞には勝てず、少し遅れてしまい、肝心の不二門先生の話は終わりかけていました・・

専門別研究会 『屈折・調節』
Ⅰ 基調講演 
① 近視化の機構 不二門尚

 殆ど終わっていたので、コメントしようがないのですが、要するに近視化のトリガーは、網膜像の『ぼけ』にあることは間違いないようです。網膜に鮮明な像が写っていたら、近視にならない。ただ、無調節の状態で、ピントがあうのは、一箇所だけ、それより手前のものを見るとき、我々は調節を使わないとはっきり見えない。ただ、この調節は、不完全で、網膜に鮮明な像を落としてくれない。『調節ラグや調節リード』。このラグが、眼軸を延長させるトリガーのようなのです。だから、調節することを止めさせて、子供に累進多焦点眼鏡を掛けさせると、近視の進行が予防できる?
 Atropin や Pirenzepin点眼で、アセチルコリンの作用を阻害して、網膜内情報伝達系に働きかけて、近視予防することも可能らしい・・
 ※今後の展望として、点眼と累進多焦点眼鏡の組み合わせで、近視予防を確立しようと・・・ただ、近視を防ぐために、ずっと眼鏡を掛け続けるのってどうなんでしょう?40過ぎたら、老眼鏡が必要になることも多いのに・・・。高度近視になる運命の眼だけを選択的に治療するなんて、無理なんでしょうね。

Ⅱシンポジウム
②小児の調節と屈折異常 長谷部聡

調節が少し不足する状況を調節ラグといいます。例えば、正視の子供が25cmの指標を見る時、4Dの調節力を必要としますが、通常少し調節が不足(調節ラグ)するようで、近視の子供は、この調節ラグが少し大きいのだそうです。このラグが眼軸の延長(近視の進行)を引き起こします。また、あまり調節が不足すると、近見障害の原因にもなりかねません。一応、調節ラグは、近視進行の元凶と考えられているようですが、実は、原因なのか、結果なのは今後更に検討を要するらしい・・

③小児前眼部疾患と屈折異常 山田昌和
  今回は、輪部デルモイド。無理に屈折・調節と結びつけた感がありますが・・・。
このデルモイドは、圧倒的に耳下側に多く発生するが、通常、このデルモイドを通る経線が、フラット化して弱主経線となる(引っ張られるので?)。デルモイドが大きいと、乱視も強く、遠視も強い。遠視が強いと不同視弱視になりやすい。
手術は、腫瘍を切除し、表層角膜移植が基本。整容的な目標は達成されるが、視力の向上は、ごく僅か・・特殊症例を除いて、極早期手術は勧められないと。

④小児白内障と屈折異常 野村耕治
白内障の程度によって、対応が難しいが、片眼の白内障で健眼に比べて視力がそれほど悪くない場合、所謂弱視治療を(3-6ヶ月)。改善がなければ、手術へ。
先天白内障にPPLをした場合と、PEA+IOLをした場合で、差があるか?術後の近視化は避けられない。特に、視力不良群においては、顕著。さらに、IOLを挿入しても、近視化を防げない。

⑤小児網膜疾患と屈折異常 近藤峰生
 1)網膜色素変性(18歳未満):近視化+中等度の乱視 (視細胞障害がトリガー?)
 2)先天停止性夜盲(CSNB)
   完全型:全例近視で、高度近視になりやすい。平均―7程度。
   不全型:軽~中等度の近視。平均-2.8D
 ※不全型は、夜盲なし、屈折異常も軽度、眼底も正常なので、ERG以外に証明する方法なく、 原因不明のまま弱視とされているかもしれない・・・(まあ、診断がついても、治らないのですが・・。)
 3)先天網膜分離症:遠視が多い。軸性遠視。平均+1.9D
 4)卵黄状黄斑ジストロフィー:非常に有名だが、非常に稀な疾患。視力低下は軽度。免許取得可能なことも。
 5)Occult Macular Dystrophy(OMD):黄斑部の局所錐体ERG以外全ての所見が正常。通常は、殆ど診断不可能。視力低下は、軽度。
※時々思うのですが、CSNBの不全型やOMDは、以外と沢山埋もれているかもしれないですね。

⑥未熟児網膜症(ROP)と屈折異常 平岡美依奈
 未熟児網膜症の治療後(瘢痕期)、高頻度に近視が発生にする。重症ほど、近視も高度。
 1歳で、既に高度の近視になっていることも多く、その後は殆ど変化しない。(近視化は、生後3から12ヶ月)この近視は、軸性近視じゃない。原因は、水晶体厚の増加(前房浅い、水晶体屈折力↑はその結果?)。この原因は、ROP治療による前眼部の発達停止。

※つまり、チョット想像が入ってますが、この生後3~12ヶ月というのは、角膜や水晶体の屈折力が低下し、これが眼軸の延長に伴う近視化をある程度キャンセルする役割をしている筈。新生児の眼軸17mmから、成人の24mmへ、約7mmの眼軸延長は、20D以上の近視化に相当。でも、通常、ほぼ正視にとどまっているのは、角膜が扁平化し、水晶体が薄くなるから。これがROP治療により停止すれば、当然高度の近視になる。だから、近視進行は、1歳までに完了している。増殖性変化のあるROPでは、これ以外の要素もあるようだが・・・
by takeuchi-ganka | 2007-10-13 17:10 | 学会報告 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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