2007年 10月 21日
第61回日本臨床眼科学会-6
インストラクションコース 未熟児網膜症アプデート
久しぶりに未熟児網膜症の勉強です。勤務医時代は、未熟児の眼底を見る機会がありましたが、担当したことはないので、最も疎遠な分野です。
1、未熟児網膜症 : 母子保健センター 初川先生
05年の全国盲学校の原因疾患をみると、いまだに未熟児網膜症がトップなのです。また、85年頃には、激減?していた新規発症が、このところ増加しているのです。未熟児網膜症医療の後退というよりは、極小未熟児の生存率向上が原因でしょうか・・・。
国際分類(と厚生省分類との関係)
Stage 1 demarcation line 厚生省2期
Stage 2 ridge 厚生省2期
Stage 3 extraretinal proliferation
※硝子体への立ち上がり。網膜光凝固を行う時期。
Mild・Moderate・Severe 厚生省3期初期・中期・後期
Stage 4 subtotal RD
A(黄斑部含まない)・B(黄斑部含む) 厚生省4期
※失明するかどうかの分岐点
Stage 5 total RD 厚生省5期
※Plus disease,
※aggressive posterior ROP(AP-ROP) Ⅱ型網膜症
※担当医に対する負担が大きい分野です。眼底検査をしていて、Stage2になれば、頻回に検査し、ridge を血管の乗り越え、立ち上がってくるようになると、いつでも、光凝固できる準備をしながら、毎日のように検査を行い、光凝固するタイミングを間違わないようにしないといけない。
2、未熟児網膜症(ROP)の診察と治療 旭中央病院 稲用先生
Ⅰ ROPの診察
1)診察対象
出生体重1500~2500g以下
CRYO-ROP Studyでは、1300g以下
※厳密な基準はないようです。
2)診察開始時期:生後3週(在胎26週見未満なら29週目から)
3)散瞳 :通常ミドリンP、Caputo点眼液(ネオシネ:ミドリンM:サイプレ=1:2:1)
4)検査機器:双眼倒像鏡+レンズ(18~30D)
Ⅱ ROPの分類
厚生省分類(1983)、国際分類(2005改訂)
※治療基準に普遍性があるかどうか、結構問題がありそうです。
Ⅲ ROPの治療基準
1)日本の基準
Ⅰ型:厚生省分類 Stage3の中期に入って更に進行の傾向を示し、視神経乳頭からの動脈の蛇行、静脈の怒張が著明な場合。
※厚生省分類 Stage3初期の行うことも・・・
2)米国他施設共同研究による基準
①Threshold ROPだったが、ZoneⅠdeseaseの治療成績悪いので
②Prethreshold ROPへ
1)ZoneⅠ
2)ZoneⅡ、stage2 ROP with plus disease
3)ZoneⅡ、stage3 ROP without plus disease
4)ZoneⅡ、stage3 ROP with plus disease
※但し、線維血増殖組織が連続して5時間未満、累積して8時間未満
※新しい治療基準
TypeⅠROP:診断後、直ちに治療
ZoneⅠ、any stage ROP with plus disease
ZoneⅠ、stage3 ROP without plus disease
ZoneⅡ、stage2 or 3 ROP with plus disease
TypeⅡROP:さらに観察を続け、TypeⅠか、Threshold ROPに進行すれば治療する。
ZoneⅠ、stage1or 2 ROP without plus disease
ZoneⅡ、stage3 ROP without plus disease
Ⅳ ROPの治療方法
1、冷凍凝固
2、光凝固
①双眼倒像観察下
・保育器内(この方が、安全だし、やりやすい。介助者に保護眼鏡は必要。)
・保育器外
②細隙灯顕微鏡観察下
※通常は、双眼倒像観察下での光凝固でしょうか。
3、超低出生体重児の未熟児網膜症 斉藤先生
この演者は、倒像レンズを用いた側臥位細隙灯顕微鏡下に網膜光凝固しているようです。少し工夫が必要ですが、セッティングがうまくいけば、通常の網膜光凝固凝固と同様に行うことができるようです。
適応
・ type 1 retinopathy of prematurity (ROP)
・ pre-threshold retinopathy
・ aggressive posterior ROP ( AP-ROP )
提示された症例は、
1、27W+5d、1048g、2、27w+5d, 1029g、3、25w+6d, 802g、4、24w+0d, 588g
※最後の症例などは、網膜血管の発達は極端に悪く、乳頭黄斑の3分の1ぐらいしか伸びていない症例でした。完全失明を食い止めるのが精一杯でしょう。医療の進歩が極小未熟児の生存率を上げると、このような重症ROPの発症は、避けられないのでしょうか。