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平成19年関西医科大学眼科同窓会秋の勉強会

関西医科大学眼科同窓会秋の勉強会
平成19年10月27日 関西医大滝井病院 南館2階 臨床講堂にて
☆やはり滝井は近くて便利!!

1、教育講演 糖尿病網膜症による血管新生緑内障の治療  松村美代教授

  糖尿病網膜症が原因で、発生した血管新生緑内障に対する治療についてです。糖尿病網膜症に対する治療は、年々進歩しているにも関わらず、依然として重症例は多く、失明原因の第二位です。
  糖尿病網膜症が原因で重大な視機能障害を来たす原因には、
1、網膜虚血(網膜萎縮)
2、視神経萎縮

3、血管新生緑内障
4、黄斑浮腫

5、網膜剥離
6、硝子体出血

などがあります。ただ、5、6については、硝子体手術の進歩によりほぼ解決したといっていい。1,2については、現在の治療手段ではどうにもならない。3,4については、努力によって、改善が得られるかもしれないといわれています。今回のテーマは、その血管新生緑内障です。
 ご存知のように、血管新生緑内障は、開放隅角期を経て、閉塞隅角期に移行し、予後不良となります。この疾患に対する治療ストラテジーは、その血管新生緑内障のステージと、その後方の網膜・硝子体の状態によって異なるのだそうです。

硝子体出血を含む網膜硝子体病変がない場合
1)開放隅角期 :PRP+点眼
※とにかく焼くことが基本です。
2)閉塞隅角期:PRP+点眼+LECT
※このステージになれば、PRP+点眼だけでは、不十分なことが多く、この場合レクトミーが必要なる。
  

硝子体出血を含む網膜硝子体病変がない場合
1)開放隅角期:(PEA+IOL)+PPV + NPT
※このステージなら、網膜硝子体の処理をすれば、眼圧下降に関しては、一時的に下げればいいので、NPTで十分。
2)閉塞隅角期
※このステージに進行すれば、隅角が閉塞しているので、網膜硝子体の処理だけでは、眼圧が下がらない。ルベオージズが細ければ、レクトミー。太ければ毛様体レーザー。
  ①虹彩隅角新生血管が細い:(PEA+IOL)+PPV + LECT
  ②虹彩隅角新生血管が太い:(PEA+IOL)+PPV + 眼内毛様体レ-ザー

※PPVのポイント:術中の網膜光凝固は、1000発程度。不足なら後で追加(大よそ1000発を目標)。術中は、周辺部をしっかり行い、後極側はあとで追加。ここがポイントで、術後眼底の視認性が良いか悪いかが勝負の分かれ目となります。従って、積極的にシリコンオイルを併用し、術後の眼底の視認性の確保するようです。
※1999年~2006年にかけての糖尿病網膜症による血管新生緑内障100眼の治療成績
  18眼:網膜光凝固のみ。
   8眼:網膜・毛様体光凝固のみ。
  16眼:濾過手術
  26眼:白内障・硝子体同時手術
  32眼:緑内障・白内障・硝子体同時手術
つまり、光凝固だけで対応できるのは、26%に過ぎないことが分かります。治療前、平均30の眼圧を平均16に下げることが可能で、85%が20以下に。予後に関する因子としては、やはり周辺虹彩前癒着(PAS)の範囲でしょうか。PASが広範囲だと眼圧が下がっても、視力予後不良なようです。また、治療前視力は最終視力と相関するようです。

  予後予測
   視力が良くて、PAS狭い:◎
   視力が良いが、PAS広い:〇~×
   硝子体出血高度なら、PAS次第で〇~×
   眼圧高くても、PAS狭いなら、頑張れば何とかなる。

※以前は、既に血管新生緑内障を発症している糖尿病網膜症の硝子体手術は、禁忌でした。白内障手術でさえも。その後、93年頃には、PASが狭くて、眼圧が高くなければ、硝子体手術可能となり、99年には、PEA+IOL併用するようになり、PAS30%以下なら、眼圧コントロール良好だと。現在では、PASが広範囲でも、眼圧だけなら何とかなる時代になったと・・・

 緑内障・白内障・硝子体同時手術
   レイアウトは、上鼻側の結膜を再手術用に残すように工夫する。
   PAS 30%以下ならNPT。
   PAS 50%以上ならLECTに。
   これで、85%が20以下に。

※アバスチン併用の話。
  アバスチン投与により、虹彩新生血管は劇的に退縮します。アバスチンは、半減期20日間。この間に網膜光凝固をしっかり行えば、開放隅角から閉塞隅角への進行が止められる。また、術後炎症や出血も抑えられるかもしれない(シリコンオイル不要に?)。
アバスチン使うなら
1、アバスチン投与して、眼底透見可能なら、PRPへ
2、硝子体出血で眼底透見不可
  1)PAS30%以下なら硝子体単独手術
  2)PAS30%以上なら、硝子体手術+緑内障(ろ過)手術
これで、平均眼圧15以下で、84%が視力維持以上。失明なし。

※アバスチンの問題点
  生理的なVEGF活性までも抑えてしまう可能性。
  PEDFへの期待?


講演と関係のない話になりますが、
糖尿病網膜症の合併症が
1、頑張ってもどうにもならない、網膜虚血・視神経萎縮と
2、頑張ったらどうにかなる、血管新生緑内障・黄斑浮腫
3、既に克服した感がある、網膜剥離・硝子体出血
と3つに分けられていましたが、この2の頑張ったらどうにかなるかもしれない例を提示します。
ともに、非常に病識に乏しい中年男性という共通項があり、当然、糖尿病のコントロールは非常に悪く、何度も何度も何度も・・・しっかり治療しなければ、失明につながりますよとお話をしても、あまり真剣に受け止めてもらえない。そんな症例です。

 症例1は、しばらく通院されなくて、特に愁訴はなかったのですが、目薬でも処方してもらおうと思ったのか、突然来院されました。
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 糖尿病網膜症が若干悪化しているようですが、検眼鏡的には黄斑部はまだドライな感じで、綿花様白斑が少しあって、出血も散在しているものの、大したことない?
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 ただ、FAGしてみると、後極部には、無血管野が散在し、血管外漏出が旺盛で、潜在的に黄斑浮腫が生じていることが明らかです。このケースは、網膜光凝固すれば、黄斑浮腫増悪、視力低下は必至です。病識がないので、説明が難しい。大学で相談すると、ケナコルト前投与しておいて、網膜光凝固するらしい。それでも、発症したら、ケナコルト再投与か、早期硝子体手術。
ただ、患者さんは、今は、何の不満もなく見えているのに、眼に注射して、網膜光凝固して視力が落ちて、場合によっては、手術まで必要になったら、納得できない確率99%以上?

 症例2 糖尿病コントロール最悪だったので、散々、糖尿病網膜症による失明の可能性を言っていたのですが、実は、眼底は、さっきより更に、一見大したことないのです。単純型にしか見えない。黄斑部外下方に硬性白斑と出血が散在。下方アーケードに綿花様白斑少し。これだけです。ところがある日突然、眼圧30。隅角見ると、こんな感じ。細い新生血管がびっしりと。FAGしてみると、後極は大したことないのに、周辺部は、広範囲に無血管野が。
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 すぐに、PRPへ。結構びっしりPRPしても、なかなか新生血管が消えない。眼圧も下がったと思ったらまた上昇。コントロール最悪の糖尿病の場合、後極部だけ見ていたのでは、わからない?じゃあ、どこ見ればいいの?

☆当然手術になると、大学へ行くことになるのですが、その手前でも悪戦苦闘しなければなりません。


2、特殊外来ミニシンポジウム
  ①神経外来(安藤)
    聞き漏らしたことも多いですが、チョット話が散漫で、印象に残りにくい・・・
     ・甲状腺眼症
     ・クッシング症候群 原因と結果の関連が理解しにくい。
     ・Fisher 症候群
     ・周期性内斜視
     ・片頭痛
     ・新しい抗癌剤の副作用としての視神経障害、網膜症
  ②ロービジョン外来(正)
地味な外来ですが、地道に頑張っておられるようです。ご苦労様です。


☆訳あって、この後の問題には触れず。
by takeuchi-ganka | 2007-10-29 19:44 | 学会報告 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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