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トラバタンズ点眼液0.004% 発売記念学術講演会

  新しい緑内障点眼薬の発売記念講演会が、大阪市長選挙の投票日に帝国ホテルで行われました。アルコンとしては、相当な力の入れようのようです。外人はよく知りませんが、オーガナイザー・座長・演者は、日本を代表する緑内障専門家の超選りすぐりの人たちで構成されているのですから・・・
 かつてチモプトール以上に、キサラタンは、緑内障点眼薬市場で一人勝ちを続けています。眼圧下降作用の切れ味の良さを考慮すれば、キサラタンを使わないと緑内障治療が成立しないと思われるほどです。長らく独占市場でしたが、やっとのことでライバル(トラバタンズ)登場です。このライバルは、以前からアメリカで発売されていましたが、日本発売のこの製品は、最初から塩化ベンザルコニウムを含まないバージョンなのです。(オーガナイザーは、このBAKを違う呼び名で読んでいたような・・・)。この点眼が、果たして、緑内障治療において、どのようなポジションを占めるのかは、まだまだこれからでしょうが、ポイントは?

①トラバタンズは、キサラタンと同等以上の眼圧下降効果をもつらしい。
②トラバタンズは、塩化ベンザルコニウムを含まない。
③トラバタンズは、充血するらしい。


この3つでしょうか。眼圧下降効果については、多分同等なんだと思います。ただ、充血する。この充血が許容範囲なのか、そうでないのか。だけど、塩化ベンザルコニウムを含まない点眼なので、眼表面に優しい。これが、どれほど良いことなのか。眼に優しいと説明した薬で、真っ赤に充血してしまったら・・・・。実際は、使ってみないと分からないのですが、重鎮達の意見を聞くことにしました。

1、緑内障薬物療法の現状と展望 白土先生
 白土先生は、特にトラバタンとは関係のない一般的な緑内障の話が多かったようですが、
①目標眼圧を設定すべきであること。
②正常眼圧緑内障が多い日本においては、30%眼圧下降の達成は中々困難であること。
③緑内障点眼は、7種18品目、ジェネリック入れると21品目もあること。更に、α2遮断剤やPG関連薬が登場すること。
④現時点で、20%の眼圧下降が期待できるのは、キサラタンのみであること。
⑤トラバタンズとキサラタンの眼圧下降はほぼ同等であること。
⑥充血の問題は、確かに気になるが1週間もたてば許容範囲内であること。
⑦キサラタン無効例にトラバタンズが有効である可能性があること。(それほど高くはないが・・・)
⑧代謝拮抗剤併用レクトミーは、濾過胞からのリーク、感染の可能性が非常に高いこと。
⑨それでも、MDスロープが-1dB/年より悪い例は、手術を選択すれば、悪化を抑える可能性が高いこと。
⑩ハンフリー視野:-15dBが危険領域、-20dBが生活不自由度上昇、-25dBが機能的失明で、MDスロープがいつこれらの危険に入るかどうかを予想することが、重要。
⑪合併症の多さを考慮すると、安易に手術を選択できないが、年齢と現時点の視野障害レベルとMDスロープを考慮し、中途失明の危険性が高ければ、手術の選択肢も残ると・・・・

※かつて、東から、眼圧が下がらないが非常に安全なロトミー系の手術の存在意義なんか無きが如き発言を繰り返しておられた筈の氏にして、この変貌ぶり? きっと、いかに多くの、また困難を極めるレクトミー術後問題を抱えているか・・・・ということでしょうか?

2、プロスタグランジンと眼圧下降 相原先生
 何故眼圧が下がるのか:毛様体のFP受容体を介して、MMP活性化がU-S flowを増加。
 ただ、これでは、長期の眼圧下降を説明できても、短期の眼圧下降は説明できない・・・
 FP以外の受容体は関係ない? EP3だけは、少し関与。内因性PG産生。FPを介した効果とEP3との相乗効果。


3、BAC-Free製剤の可能性 Clark L Springs
 
緑内障患者は、眼表面の問題が多く、愁訴が多ければ、QOLが低下する。
 長期にわたる点眼の影響?点眼に含まれるBAKの影響。
 BAKは、0.0001%で細胞増殖停止。0.01%でアポトージスへ。0.05%で壊死へ。
 トラバタンズは、BAKなし
 眼表面に多く問題を抱えることを宿命づけられている緑内障患者には朗報!?

4、Travoprostの有効性と安全性に迫る John R Samples
 MMPs 1,2,3,9が関与。Inhibitorsとのバランスが問題?。
 ステロイド緑内障は、ここに働いて、眼圧上昇?
 あのキサラタンより更に眼圧下げる。しかもBAKフリー

 ※少々疲れてきて、あまり印象に残らないし、それに外人の言うことなので、話半分に聞いておりました。
 ※日本人において、このBAKフリーのPG関連薬がどのようなポジションを占めるか楽しみです。キサラタン・ノンレスポンだーに有効あればいいのですが・・・
 ※スライドにあったZの旗を見て、皆何を思ったでしょう。トラバタンズのズ(Z)、怪傑ゾロがサーベルでつけたZの印、フェアレディーZ?それとも、「皇国の興廃此の一戦に在り、各員一層奮励努力せよ」?

トラバタンズ点眼液0.004% 発売記念学術講演会_f0088231_14392930.jpg

by takeuchi-ganka | 2007-11-19 14:41 | 学会報告 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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