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第361回大阪眼科集談会

1941年のこの日、日本陸軍はマレー北部に上陸し、日本海軍が、ハワイの真珠湾攻撃を開始し、太平洋戦争勃発しましたが・・・・この手の事に関して深くふれると、友人K氏から熱い講義をされそうなので、早速本題へ。この記念すべき日?に、今年最後の集談会が毎日新聞オーバルホールで行われました。

1、大阪大学眼科における選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)成績(阪大)
 珍しく?、クリニックが忙しく、少し遅れたので、殆ど聞けませんでした。 要するに?
・隅角色素の程度にその効果が影響されない。
・PEとPOAGで差がない。
・無効は20%。これは、定義の問題で、過去の報告に比べ若干悪いらしい・・・
・出力は、シャンパンバブルがでる少し手前がいい?(あまり強くやると眼圧上昇の報告があるから?)

※たかだか数mmHg下降できるだけ。キサラタンと同程度? 但し、点眼と異なり、年々効果が減弱。
※侵襲が少なく安全で、繰り返し行えるので、緑内障専門家でなくても手を出しやすく、繰り返し行っている間に、手術時期を逸してしまうという話も聞きますが・・・。観血的手術の適応が分かっていて、SLTの適応を見極めて使うのならいいのですがね。
※SLTは、線維柱帯からの流出促進なので、これに変わる薬剤は、現在では殆どない。ピロカルピンも殆ど使わないし・・。将来選択的ROCK阻害薬が出るまでは、この代わりの1剤として使っていい?ただ、数年で効果がなくなるから、繰り返す必要があるけど、本当に大丈夫なの?数年後、選択的ROCK阻害薬が出たら、皆さん、どうするのでしょうね。
 
眼圧を下げる為には、
①房水産生抑制:β遮断剤、炭酸脱水酵素阻害剤
②ブドウ膜強膜流出路促進:プロスタグランジン製剤、α1遮断剤
③線維柱帯流出促進:ピロカルピン、ピバレフリン・・・・ともに殆ど使わないので、この代わりにSLT?



2、緑内障点眼薬の眼圧下降効果における個体差 座位および仰臥位での検討の続報(大阪南医療センター)
座位眼圧<仰臥位眼圧 5mmHg近く上昇?
日中眼圧<夜間眼圧
※一見眼圧コントロール良好なのに、視野が悪化していく原因はここにある?
キサラタン、チモプトール、ハイパジール、デタントール・・
この中で、眼圧下降効果が一番強いのは、キサラタンだが、仰臥位では、その優位性が下がる。仰臥位眼圧まで考慮して、点眼の種類を考慮すると、時にキサラタンがファーストチョイスでないこともあるという話。
※この手の話を聞くたびに思うことは、緑内障患者は、なるべく横になってはいけない?寝るときも、少し頭をあげた方がいい?ベッドの頭部を挙上すべき?そうだとしたら、辛いですね。

3、白内障手術10ヵ月後に緑内障を発症したFuchs虹彩毛様体炎と思われる1症例(大阪医大)
網膜剥離手術、白内障手術の後、緑内障発症。
レクトミーして、濾過胞再建して、眼圧コントロール不良のまま中断。
FHCの決め手は?何か、積極的にFHCを診断する根拠があったのでしょうか。なんとなく除外診断的な気がします。

※『眼科診療プラクティス16眼内炎症診療のこれから』から引用
虹彩異色、虹彩毛様体炎、白内障を3主徴とする片眼性の肉芽腫性炎症で、硝子体混濁や眼圧上昇もしばしば起こす。虹彩異色というのは、びまん性に虹彩色素上皮が萎縮した状態を指し、ヘルペス性虹彩炎の虹彩萎縮が限局性である点で異なる。前眼部炎症はヘルペス性虹彩炎より弱く、mutton fat KPも小型で数が少なく、虹彩色素を伴うことは少ない。虹彩後癒着は起こさない。


4、片眼性閉塞隅角の4症例(国立大阪)
片眼性のPAC??
数字は正確でないかもしれないですが、 1例目は、前房深度右1.79、左3.54。この左は、全く正常な前房深度。だとすれば、右の1.79は、亜脱臼(~脱臼)でもしてなければ、ここまで差がつく筈がない。つまり、この差を見ただけで脱臼を想定すべき。だとすれば、片眼に続発閉塞隅角緑内障が生じるのは妥当。
 2例目:1.42と2.14
 3例目:1.63と2.29
 4例目:1.74と2.18?
この3症例は、深い方でも、PACを生じても不思議じゃない前房深度。浅い方は急性発作を起こす眼の平均的な前房深度に近い。たまたま、この程度の差があるのは、不思議じゃないし、可能性はかなり低いものの、亜脱臼に近い脆弱チン小体症例なのかもしれない。いずれにしても、時間差で先に前房の浅いほうが先に発作を起こすのは妥当。だからどうだって言うのでしょう?

5、失明した僚眼からの結膜弁移植が奏功した濾過胞感染の1例(大阪医大) 
濾過胞感染というタイトルですが、実際は、感染は既に治癒していて、単なる、破綻濾過胞の処置。他眼から結膜弁を移植して、成功。それにしても、10回以上の手術って、何をしたんでしょう?

6、眼内に滞留したインドシアニングリーンにより、角膜染色と眼圧上昇を来たした1例(大阪医大)
何故これほど大量のICGが滞留したのでしょう?
ただ、大量だと危険なことに間違いないようです。

7、3次元光干渉断層計(3D-OCT)が確定診断に有用であった黄斑低形成症の一例(阪大)
3D―OCTという高価な器械を使えば、黄斑低形成の診断が容易なようです。使わなくても容易?
※広範な眼形成不全症についてPAX6変異が解析され、これまでに多数の変異を同定されてきました。PAX6のハプロ不全によって無虹彩症となり、一方、PAX6のミスセンス変異によって、黄斑低形成症、白内障、Peter奇形など、様々な病態を呈する不全症となるらしい・・・。

この黄斑低形成は、中心窩の陥凹がなく、キサントフィルもない?視力も不良。
今回の症例は、両眼とも3.0Dの直乱視(近視性乱視)で、矯正視力0.4.
K氏の質問:弱視治療は?当然継続すべきですよね。

8、スペクトラルドメインOCTをもちいたHIV陽性患者における網膜神経線維厚の測定(国立大阪)
HIV網膜症で、CWSや出血が散在している症例の網膜神経線維層厚を調べると黄斑部それも下方と鼻側が、視神経周囲の下方が減少しているようです。

9、Bevacizumab硝子体投与による網膜毒性の検討(近大)
ERGでの検討だが、異常なし。
もっともっと早くやらんと。順序が逆じゃない?

10、裂孔原性網膜剥離に対する25Gシステム経結膜硝子体手術の成績(関西医大滝井)
時代の変化を感じさせますね。塚原・宇山に始まり、伝統的にRRDのバックリング手術の先頭を切っていた筈の病院で、何と、バックリングを置かないことを基本術式とする25Gのシステム経結膜硝子体手術。
※初回復位率92.1、最終復位率100%
※ポイントが強膜切開を斜めにして、術後の低眼圧を作らないことだとは・・・。

11、強膜外浸潤をきたした脈絡膜悪性黒色腫の1例(関西医大)
ここまで大きくならん内に、眼摘承諾させてほしい。

12、涙丘脂腺腺腫の1例(大阪市大)
様々な種類の腫瘍ができるが、母斑や乳頭腫が多い。脂腺腺腫は非常に稀。癌との鑑別が重要。

13、眼痛と複視で来院した眼筋麻痺性片頭痛の小児の1例(関西医大滝井)
眼痛ついで複視、動眼神経麻痺?MRI異常なし。
しばらくして寛解。その後再発・寛解を繰り返すが、予後良好らしい。
子供で、片頭痛と眼球運動障害を合併する珍しい報告。

14、診断に苦慮したLeber遺伝性視神経症の1例(大阪市大)
LHONは、10-20代で、両眼性で、急性~亜急性で、中心暗点を生じ・・・・
今回は、55歳。視神経乳頭所見、FAGから、球後視神経炎が疑われ、パルスを開始したが、途中ミトコンドリアDNA11778の点突然変異が分かり、治療中止。

※よく言われる視神経乳頭の発赤・腫脹し、乳頭炎様。網膜血管は蛇行し、特に動脈が拡張。視神経線維は混濁・腫脹し、乳頭近傍の微細網細血管は拡張。蛍光色素の漏出がみられないことが特徴で、乳頭炎と鑑別可能・・・・だそうだが、この所見は伴わないことも多いらしく、だとすれば、当然球後視神経炎と間違われる。
※日本人のLHONの場合、殆どが11778変異で、3460変異や14484変異は少ない。また、11778変異の最終視力は0.1以下が90%近く、他の変異より予後不良らしい。

15、全層角膜移植術後の水疱性角膜症に対する角膜内皮移植術(DSEK)の3例(日生病院)
以前も、どこかの勉強会でビデオで見ましたが、侵襲が少ないので、上手くいけば、内皮障害による水疱性角膜症患者さんには、大きな福音に違いない。

16、診療所におけるCL障害患者の現実(森下眼科)
 以前、カラーコンタクトレンズについて記事を書きましたが
関連記事
本来、建前上?高度管理医療機器のコンタクトレンズが、ずさんな扱いをされている実態を紹介していただきました。特にカラーコンタクトは酷すぎる・・・。この実態を国はいつまで放置するのでしょうか。
Commented by いち患者 at 2007-12-16 22:41 x
失礼します。ブログを拝見させていただいている者です。
専門的なお話をアップしてくださり、大変勉強になっております。ありがとうございます。

ひとつお聞きしたいことがあり、質問させていただきます。
緑内障の視野障害は、中期以降は加速度的に進行速度が上昇していく、ということを時々耳にするのですが、これは本当なのでしょうか?
よろしくお願い致します。
Commented by takeuchi-ganka at 2007-12-17 20:01
緑内障の進行というのは、神経線維の脱落(消失)速度ですから、その速度は、多分、早期から末期までそれほど変わらない筈(?)です。もともと神経線維には、余裕があり、最初のうちは、少々神経線維が脱落しても、視野は正常です。神経線維が半分ぐらい無くなるまで正常とも言われています。それでも、半分以上なくなってしまうと、徐々に視野変化が現れます。この状態で初期緑内障です。
つまり、初期の緑内障といっても、神経線維の量的には、中期と言った方がいいかもしれないのです。だとすると、中期以降の緑内障というのは、神経線維量的には、かなり厳しい状況で、既にその80%、90%が失われている状況なのです。測定された視野的にみると、初期に比べて、神経線維に余裕のなくなった中期以降のスピードは早く感じるのかもしれないですが、個人的な印象としては、必ずしもそうだとは感じていません。中期以降の方が、患者さんも一生懸命治療されるし(good compliance)、残された神経線維というのも、眼圧に対して比較的強いからこそ残存している可能性があるのです。
ただ、言えるのは、早期に発見して、余裕のあるうちに治療を開始するのが一番ということでしょうが・・・
Commented by いち患者 at 2007-12-17 20:49 x
はっきりした見解は出ていない、ということでしょうか。
「進行速度が速くなっていく」と言うドクターは少なくないようですし、病期が進行しているほど目標眼圧の目安が低くなっているので、そういうものなのだと考えておりました。
そうでもないのですかね。
Commented by takeuchi-ganka at 2007-12-17 23:38
進行速度の基準を何にとるかが問題ですね。客観的な基準なんかないのですから。
by takeuchi-ganka | 2007-12-09 22:42 | 学会報告 | Comments(4)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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