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第363回大阪眼科集談会

平成20年4月5日午後2時~7時
毎日新聞オーバルホール

ソメイヨシノは満開となり、日中気温が20度になろうとしている花見日和の土曜の午後、既に花見は済ましてあるので(?)、眼科の勉強に行ってきました。

今回もたった10題なので、ミニレクチャーが付きます。これも新臨床研修制度のあおり?

1、後転短縮術にFaden手術を併用した小児内斜視の2例 :大阪医大
 このFadenの手術というのは、外眼筋の付着部から後方10mmとか12mm(長さは関係ないでしょうが・・)の部分を眼球に縫着する手技のようで、門外漢の私のコメントは信用できませんが、今回の発表は、斜視角が大きくて不安定な内斜視に対して、やりすぎないように、大よそ最大斜視角の半分程度の矯正を後転短縮術で行い、それにFadenを併用することで、良い結果が得られたようです。

2、動的眼瞼機能再建術を施行した先天性顔面神経麻痺の1例:大阪警察病院眼科・形成外科
 顔面神経麻痺が、改善せずに、固定してしまった場合の再建術には、静的な再建と動的な再建があります。静的再建というのは、歪みを矯正したりするだけのようで、動的再建とうのは、動かなくなったものを動かす再建術だそうです。今回の発表は、先天性顔面神経麻痺で、左眼が閉瞼できず、角膜障害が生じているケースで、Gillies-Anderson法という形成外科医の30の基本手技(?)の一つを用い、三叉神経支配の側頭筋を一部移動させて、外眼角付近に縫着し、なんとか自力で閉瞼可能な状態にし、角膜上皮障害の改善が可能だという発表でした。眼科医は、この手技の存在(動的再建)を知らなかったりするので、私も知りませんでしたが、皆いい勉強になったのでは。顔面神経麻痺が、固定してしまい、兎眼性角膜障害が生じた場合、このような解決策もあるということです。なるほど・・・

3、近畿大学眼科におけるアカントアメーバ角膜炎の検討:近大
 恐ろしい角膜感染症、アカントアメーバの発表です。ずさんな使い方をしているコンタクトレンズユーザーに起るアカントアメーバによる角膜炎です。ただ、診断が困難で、ヘルペスや真菌感染と間違われます。また、近大でも、7年で5-6例の症例だったので、一般開業医は、ほとんど遭遇する機会がなく、時々写真を見ておかないと診断が難しいようです。この疾患は、
1) 病期進行を見分けることが肝要で
① 初期 ⅰ) 放射状角膜神経炎、ⅱ) 偽樹枝状角膜炎、ⅲ) 角膜上皮内・上皮下浸潤
② 移行期/成長期
③ 完成期 ⅰ) 輪状浸潤、ⅱ) 円板状浸潤

と、進行しますが、なかなか初期には診断がつかないようで、迷っている間に完成期になってしまう。移行期のヘルペスとの鑑別は、痛みが強いこと、抗ヘルペス薬の効きが悪いなどで、場合によっては、涙液のPCRなどで、積極的にヘルペスと診断していくことで、否定されれば、アカントアメーバを疑うことになるようです。
2) 病期によらず高度の毛様充血が、ポイントのようです。
診断がついたら、3者併用療法:① 病巣掻爬(角膜掻爬)、② 抗真菌薬および消毒薬の点眼、③ 抗真菌薬全身投与が、基本のようです。
 まあ、いずれにしても怖い病気です。今回の患者は、ハードコンタクトを水道水で保存していた人、頻回交換ソフトコンタクトやカラーコンタクトの患者でした。 最終的に大きな混濁を残してしまった場合、混濁がそれほど深層にまで及んでなかったら、PTKで、深層に及べばDLKなどで対応するようですが・・
※カラコンしている若い人へ。そんな事で失明したらつまらないですよ。

4、硝子体手術を施行した梅毒性ぶどう膜炎の1例:大阪医大
 梅毒によるぶどう膜炎、今回は、網膜静脈の閉塞性血管炎。診断は、特徴的眼底所見と、血清梅毒反応、さらには、今回のように硝子体手術にまで至った場合は、TPHAの硝子体/血清の比が参考になるようです。治療は、バイアスピリンを投与し、視神経炎・CMEがあれば、ステロイドを内服やテノン嚢下に、勿論、駆梅療法(サワシリン)は行いつつ、血管閉塞が広ければ、網膜光凝固、そして、血管新生、硝子体出血になれば、硝子体手術だと。

5、放射線療法が著効した眼内悪性リンパ腫の2例:関西医大
 1例は、周辺部にARNに似た濃厚な滲出斑(閉塞性血管炎)、高度の視神経炎も。もう一例は、それほど周辺でないが、網膜色素上皮下の黄白色病変。ともに、確定診断の為の硝子体手術は拒否されたので、放射線治療(30~40Gy)。ともに著効。ただ、1例目は、視神経委縮で失明(高度の視神経炎は炎症ではなく腫瘍細胞の侵潤?)。

6、20年以上ほぼ鎮静化していた原田病再発の1例:大阪市大
 後極部の漿液性網膜剥離型の原田病で、ステロイド内服で治癒し、夕焼け状眼底になった症例が、22年後、豚脂様KP、硝子体混濁、脈絡膜剥離に。プレドニン20mgから治療して治癒した。
本当に原田の再発?

7、選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)の長期治療成績:大阪医大
 以前よく行われたアルゴンレーザートラベクロプラスティー(ALT)に似たレーザー手術ですが、線維柱帯からの房水流出を促進し、低侵襲なので、繰り返し行うことができるというふれこみです。今回は、SLTを半周と全周を比較したものですが、やはり全周の方が眼圧下降効果が高いようです。
 ただ、かつてのALTも今回のSLTもそうですが、眼圧下降効果が弱い。中途半端。全周に施行しても、1年後の眼圧下降率は、平均で17%程度。この中途半端な治療を緑内障治療全体の中でどのように位置づけるかが問題では。SLTを繰り返している内に、手術機会を逸してしまうようなことがあってはならない。比較的有用であるに違いないこの手技の最大の問題点はこのへんにあるのでは・・・安易にしない方が・・・。

8、網膜中心静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫に対する硝子体手術:関西医大
 このCRVOを視力予後から見れば、虚血型か非虚血型か問題、虚血型の場合は、PRPをするかしないかが問題、非虚血型の場合は、薬物治療の効果が問題となるでしょうが、様々な病型の中で、黄斑浮腫が生じた場合、硝子体手術すればどうなるか。当然ながら、黄斑浮腫は、改善するようです。ただ、視力は他の要因で決まるので、BRVOの場合のように、この黄斑浮腫の有無が手術適応の大きな要因とはならないようです。

9、糖尿病黄斑浮腫に対する再手術での内境界膜剥離:多根記念病院
 糖尿病網膜症に硝子体手術を行い、その後黄斑浮腫が遷延するか再燃した場合に、追加手術として、内境界膜剥離(ILM)の効果はどうか?このILM剥離は、専門家の間でもその効果について疑問があるようです。だからこそ、この発表のように、初回手術では、ILM剥離せずに、黄斑浮腫が遷延・再燃した時だけにしようとなるのでしょうが、結果はまあまあいいようです。ただ、池田先生は、あまりしないと言われていました。まあ、硝子体もそうですが、このILMも網膜のミュラー細胞の基底膜です。多分、生理的には必要なものの筈で、病的なILMの場合は剥離すべきでしょうが、その見極めが難しいのかも。

10、特発性黄斑円孔術後のFD-OCT所見と視力変化:大阪大
 黄斑円孔の手術後、FD-OCTでその断層像を分析すると、7.9%に網膜下液が、13.2%に網膜内にcyst が、そして71%に視細胞再構築不全が。この視細胞再構築不全を解析。
少し論文を検索すると、こんなものが。
Retina. 2008 Mar;28(3):453-8. 
Correlation of visual recovery and presence of photoreceptor inner/outer segment junction in optical coherence images after successful macular hole repair.

この論文では、IS/OS junctionが、視力予後に関わる所見だとありましたが、この発表では、そうではなく、ELMの連続性だと?。OCTが進歩すればここまで解析できる。ただし、その為にどうすればいいかの、答えはない?

長くなったので、ミニレクチャーは、後日。
by takeuchi-ganka | 2008-04-06 14:30 | 学会報告

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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