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Xalatan Forum in 大阪 (297)

 かつて、国際緑内障シンポジウムという名の緑内障勉強会が何度かありましたが、それは当時ダントツで1stチョイスだった点眼メーカー主催で、日本中(世界中)の緑内障専門家が集まっていて、本当に勉強になった記憶があります。その時々のダントツ1stチョイス点眼メーカーは、このような規模の勉強会を開きたいのかもしれません。ただ、今回の内容は・・・・・・
 純粋な勉強会の側面とキサラタン宣伝の側面を聞きわけながら拝聴しました。

Ⅰ緑内障診断―達人に聞く
①眼底診断の極意 白土城照先生(四谷しらと)
 建前を言えば、緑内障は、眼底を見れば診断可能。緑内障の本質が神経節細胞死に始まる神経線維欠損である以上、眼底を精密に検査して、それを見つければそれでいいのです。ただ、昔から言われている乳頭の垂直CD比だとか、そのリム/乳頭比などの定量には、低い限界があり、もともとバリエーションに富む眼底所見の診断は、定性的に行わないといけません。
※ Br J Ophthalmol. 2008 Mar;92(3):303-9.
※ Br J Ophthalmol. 2008 Mar;92(3):310-4.
 神経線維の脱落は、やや黒い帯状を呈しますが、もともとの眼底の色調によっては、わかりやすかったり、そうでなかったりするのです。大量の神経線維欠損に基づく視神経乳頭陥凹の変化も、もともとの視神経乳頭の形状によっては、わかりやすいこともありますが、なかなか判断できないことだってあるのです。達人になれば、その微妙な変化も判断可能・・・・かもしれませんが、重要なことは視野検査を駆使し、対応する視野異常を捉えること。名人芸に頼った診断では客観性が低い。神経線維の抜けた場所や量によって、ハンフリーなら30-2、10-2、周辺視野・・・などプログラムの選択が重要となるようです。何でも30-2じゃ見落とすよ。

②視野診断の極意 松本長太先生(近大)
 まず、視野検査で緑内障を診断する極意?視野診断の極意といっても、要するに眼底所見との対応の確認作業が最も重要です。視野だけでは診断不可能で、視野異常を引き起こすような緑内障性の変化があるのか、乳頭網膜に見られる緑内障性変化が引き起こしている視野異常が確認できるかどうかが重要なのです。
※紹介されたオクトパスの視野データ解析の『EyeSuite™ Perimetry & OctopusFieldAnalysis』は、ハンフリーにない魅力的なプログラムです。ツアイスさん、導入検討お願いします。
http://www.octopus.ch/products/default.htm
 極早期の緑内障を検出する為に様々な工夫が行われています。古くから言われていることですが、動的視野で最初の視野変化が検出された時点では、既に神経節細胞の50%が消失している。つまり、その時点でもう初期ではなく、中期以降?!ハンフリーなどの静的視野計で、MDが5dB低下すれば、20%消失、10dB低下すれば40%、15dBなら70%、20dBなら80%、また中心部分に限れば、5dB低下で50%消失していると言われています。それほど、視野異常というのは、相当量の神経節細胞の消失がないと検出が難しいのです。また、もともと神経節細胞が担当する視野はオーバーラップしているので、少しぐらい消失しても、視野欠損にならないし、検査視標サイズ(通常Size3)は大きく、一度にいくつもの神経節細胞を刺激してしまうので、小さな暗点検出が難しく、測定点も疎らなので、30-2で普通に検査しても、極早期視野の検出はなかなか困難なのです。そこで、SWAP、FDT、フリッカー視野・・・或いは、プログラム10-2などが早期検出用として利用されています。
 次に、経過観察についてですが、これには、イベント解析とトレンド解析があります。イベント解析というのは、その日の検査が、その患者さんのベースライン視野と比較して進行したかどうか判断するものですが、これは、ベースラインとの比較なので、なかなか精度低い判断にならざるを得ません。トレンド解析というのは、通常はMDをグラフにして、回帰直線を引き、MDスロープを求め、徐々に悪化してるのか、安定しているのかを判断することになります。
 ハンフリーの解析ソフトとしては、GCP、GPA、VFIなどが次々と出てくる新しいプログラムに振り回されそうです・・・。

Ⅱキサラタンの今を語る
※あまり面白くないセッション・・・
①有効性からみたキサラタンの評価 谷原秀信・熊本大
 淡々とその有効性を紹介されました。
Arch Ophthalmol. 1996 Aug;114(8):929-32.
Arch Ophthalmol. 2004 Jul;122(7):957-65.
Am J Ophthalmol. 2003 May;135(5):688-703.
Am J Ophthalmol. 2004 Sep;138(3):389-95.

②安全性からみたキサラタンの評価 相良健・山口
1)全身性副作用はない?
喘息に禁忌?そうでもないらしい。
Arch Ophthalmol. 1999 Oct;117(10):1305-9.
Surv Ophthalmol. 1997 Feb;41 Suppl 2:S111-5.
2)局所性副作用
 いろいろ言われている局所の副作用ですが、虹彩炎やCMEに関しても気にせず使っていい(他の緑内障点眼と差がない)、ヘルペス発症に関しても、因果関係は認めにくい。角膜上皮障害についても、他の緑内障点眼と同レベル。気にせずどんどん使っていい?虹彩の色素沈着は30%以上に生じるが、幸い日本人においては、それほど問題にならない。眼瞼の色素沈着については、洗顔指導が有効。
Eur J Ophthalmol. 2008 May-Jun;18(3):408-16.
Arch Ophthalmol. 2004 Jul;122(7):957-65.
J Ocul Pharmacol Ther. 2003 Jun;19(3):233-45.
  

Ⅲパネルディスカッション
・石田恭子 先生(岐阜県総合医療センター)
・森和彦 先生(京都府立)
・大鳥安正 先生(大阪医療センター)
・溝上志朗 先生(愛媛)


症例を提示しながら、会場の参加者も投票しながら、診断・治療についてのディスカッション。それにしても、そう簡単に皆の意見は一致しないことが印象的でした。
症例1:40歳男性 極早期緑内障?
FDTとOCTが異常で、W/W、B/Y、HRTが正常。
⇒どうやら人間の眼をOCTは越えたようで、こいつがNFLDを示せば、緑内障と言っていい?。それだけを根拠に?治療を開始。演者の肉眼ではどう見えたのですか?すべて器械任せで大丈夫?
症例2:80歳男性 早期緑内障。
⇒少し待って、進行が確認されたら治療へ。1剤入れて、進行するなら2剤へ・・
症例3:60歳男性 中期緑内障
既に7年治療している。ベースラインから3剤点眼して、30%ほど眼圧下降。十分眼圧下がったものの、徐々に視野悪化。片眼は、中途失明の危険性あり。
⇒リスク承知で、本気でレクトミー or そのまま経過観察
症例4:91歳男性 片眼のみ末期緑内障、IOL亜脱臼
どうやら、緑内障の原因はPE。点眼2種にダイアモックス1錠でも、時々眼圧36.角膜浮腫で霞む。⇒これは流石に意見バラバラ。高齢なので何もしない。PEなので、LTPでも有効。ロトミー系手術も侵襲少なくて有効。91歳でレクトミー?もしやるなら、IOL外れるかもしれないので、摘出・縫着も同時に。
症例5 37歳女性 中期緑内障
 ベースライン20ぐらい。点眼3剤入って12程度。十分な眼圧下降だが、徐々に視野進行。右眼のみ徐々に視野悪化(‐0.65dB/年)。このまま進行すれば将来、右眼の中心視野が大きく損なわれる可能性が高い・・・・ ⇒山本先生はこの程度で手術はしない。桑山先生、すぐにじゃないが、いずれレクトミー。両巨頭意見分かれる。要するに合併症をどうとらえるかでしょうか。本気でレクトミーすれば、眼圧は下がって緑内障の進行は止まるかもしれないが、大きなブレブが出来て、角膜乱視の増加、白内障の発生、低眼圧黄斑症など視力の低下、更には稀でない感染によって失明の危険性も抱えることになる。当然QOLも低下する。これが嫌なので、保存的に治療し徐々に視機能が損なわれるのを待つ。なんだか究極の選択ですが、個人的には、それほど危険でないブレブを作成する自身があれば右眼のみでも、やるべき?桑山先生の意見に与します。
 ※某先生、藁をも掴む思いで、シュワーベ ギンコ(90粒)6000円?本気ですか?単なる藁だと思いますが・・・
http://www.lusc.jp/lu/detail.php/897567
症例6 55歳男性 初期だが中心に近いビエルム暗点
 ベースライン15ぐらい。キサラタンで12程度。3年間変化あまりなかったが、最近乳頭出血頻発。
⇒将来悪化すると、確信のもと、更に眼圧を下げに行く。 ミケランLA?チモプトールXE?ハイパジール?私なら、ニプラジロール?!
Commented at 2008-08-28 18:37 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by takeuchi-ganka at 2008-08-29 22:32
http://www.takeuchi-ganka.clinic-hp.com/contact.html
ここに質問していただければ、対応できます。宜しくお願いします。
by takeuchi-ganka | 2008-08-24 14:19 | 学会報告 | Comments(2)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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