NEW POST

塩化ベンザルコニウムについて その1 (311)

塩化ベンザルコニウム(以後BAC)というのは、一般的には消毒薬として、眼科医には点眼に含まれる防腐剤として有名な薬物です。我々の世界では、最近、この防腐剤が眼表面に与える影響を無視できない事が分かってきて、防腐剤濃度を下げたり、防腐剤を含まないものが開発されたり、或いは代表的な防腐剤であるBACを含まない新しい防腐システムが開発されたりと、BACを取り巻く環境は大きく変わりつつあるようです。(或いは、我々にそう感じさせる環境作りがなされています。)
 そこで、このBACについて少しだけ勉強してみようと思います。BACは、陽イオン界面活性剤(逆性石鹸)の一つで、別名、塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウムと呼ばれる第四級アンモニウム塩だそうです。
一般論ですが、消毒とは、ヒトに病原性を有する大部分の微生物を死滅させるが、細菌芽胞は生存する状態で、滅菌とは細菌芽胞を含むすべての微生物を死滅させ、除去することと定義されています。我々は、この消毒と滅菌を適宜使い分けています。例えば、手術に使用する器具類は、全て滅菌しますし、感染症の患者さんの診察終了後は、接触部位を消毒します。
消毒薬には、Spaulding の分類なるものがあり、高水準:最も抵抗性の高い細菌芽胞まで死滅させる、中水準:細菌芽胞を除いて有効、低水準:結核・真菌・ウイルスに効かないが、増殖型細菌にのみ有効・・・と分類されています。どの水準の消毒薬も日常臨床で使用する消毒薬で、高水準のグルタラール(ステリハイド)は手術器具の消毒に使うことがありますし、中水準のポピドンヨード(イソジン)や消毒用エタノールは、術野の消毒にも使用します。
今回のテーマであるBACは、低水準消毒薬の中に含まれるオスバンの主成分で、BACを10%含む溶液です。BACというのは、定義によれば、陽イオン界面活性剤の一種。示性式が C6H5CH2N+(CH3)2R•Cl− (R = C8H17 ~ C18H37、長鎖アルキル)と表される四級アンモニウム塩の混合物だそうですが、オスバンに使用されているBACは、インタビューフォームによれば、有機物存在下での殺菌力が優れているアルキル側鎖がC12H25のBACを80~85%含有しているのだそうです。BACといっても、アルキル側鎖はC8H17〜C18H37まであり、C12C14が主に使われるのだそうです。薬学・薬理学についての知識に乏しい臨床医としては、ちょっとした驚きでした。塩化ベンザルコニウムという名前の薬物が一種類あるんだ・・・ぐらいに捉えていたものが、実は、そうではなく、 C6H5CH2N+(CH3)2R•Cl−の、Rの部分にかなり多様性があるようなのです。オスバンのBACは、C12を80-85%を含むのだそうです。さて、我々が気にしている点眼液に含まれている非常に低濃度のBACはどうなっているのでしょうか?
by takeuchi-ganka | 2008-10-12 14:15 | めぐすり

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31