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第367回大阪眼科集談会 (323)

第367回大阪眼科集談会@毎日新聞オーバルホール
正月事始めの12月13日だというのに、まだ年賀状を1枚も書いていないのですが、開業医は勉強しなければ身を滅ぼす?という強迫観念に襲われて、集談会へ出かけました。今回は、なんと緑内障関連の演題が零です。N講師、何か出しなさい。


1、ドライアイと診断されていた眼瞼痙攣(阪大)
⇒ドライアイ症状を伴う眼瞼痙攣

300眼以上のドライアイ症状を有する患者にドライ治療を行い、治療に反応しなかった49人中28人がMeige症候群であったとする坪田氏の論文が紹介されていましたが、今回は、随時瞬目負荷テストで、47例の眼瞼痙攣患者で、ドライアイ症状を有する人が62%、ドライアイの診断基準に適合するのは、疑い例を入れて27%。
 眼瞼痙攣患者は、ドライアイを悪化させるし、症状も類似しているので、通常の診察で、ドライアイ所見があれば、ドライアイとだけ診断されてしまうこともあるようで、もう少し、積極的に診断を考えてもよさそうです。

2、片眼性格子状角膜ジストロフィ-ⅢAの1例(阪大)
格子状角膜ジストロフィー(LCD)は、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、ⅢA・・とタイプがあり、LCDは、アベリノ、Reis-Buecklersとともに、TGFBI遺伝子の異常だそうです。今回何故、片眼性なのかは疑問のままですが、エクソン11のPro501Thr変異があったそうです。

3、前嚢収縮により視機能低下を来した2例(枚方市民)
チン小体が脆弱な場合(PE、pigmentosaなど・・)、白内障術後、前嚢の収縮が強くおこり、時に視軸にその混濁が及ぶと、視機能が低下します。前嚢が閉じる前に、CCCにヤグで切開すればいいと思うのですが・・・。

4、小脳出血後の外方回旋偏位に対して上下直筋付着部水平移動術を施行した1例(大阪医大)
 他施設で諦められていた外方回旋偏位症例を、上下直筋水平移動術(上直筋を耳側へ、下直筋を鼻側へ1筋幅移動)することで、複視消失。上斜筋前部前転術よりいい成績。

5、Linezolidによる中毒性視神経症の1例(済生会泉尾)
 リネゾイド(ザイボックス)は、バンコマイシン耐性腸球菌に対する合成抗菌薬で、MRSAにも適応があります。他の抗菌薬と交叉耐性を示さず、腎障害もなく、切り札的薬剤なのですが、14日間以上の投与により血小板減少症など骨髄抑制が、28日間以上投与すると視神経障害が発現すると言われています。この症例は、リネゾイドしか有効でないMRSA骨髄炎だったので、長期に連用せざるをえなかった・・・・視力低下、CFF低下、中心暗点・マ盲点拡大・・・。TAテノン嚢下投与、ステロイドパルスは無効で、リネゾイド中止で視力・視野改善。骨髄炎はどうなったのでしょう?

6、若年発症の抗アクアポリンー4抗体陽性視神経炎の1例(関西医大・滝井)
 22歳女性。視力低下。両眼(0.04)、左眼眼球運動痛、視神経軽度発赤、FA過蛍光。右眼ラケット型暗点、左眼耳側のみ視野残存。その後、視力右指数弁、左光覚に。
 ステロイドパルス3回やって、若干視機能改善。その後、抗AQP4抗体陽性と判明し、血漿交換へ。ただ、ショックで中止し、二重膜濾過療法へ・・・。劇的な改善は得られていない?
※大阪医大の菅澤先生が11歳の症例を経験されて、血漿交換されたとか。ただ、それで劇的に改善が得られても、その後ステロイドか免疫抑制剤を長期に投与する必要がある?
※以前大阪眼科臨床クイックレビューで、中尾先生が詳細に報告されていました。

7、網膜中心静脈閉塞症におけるbevacizumab硝子体内投与前後の網膜電図変化(近大)
 CRVO発症後、フラッシュERGをとり、b/a比が大きいと予後が良かった。アバスチン投与との関連はない?

8、眼底自発蛍光画像を応用した黄斑色素量測定(阪大)
Macular carotenoid levels of normal subjects and age-related maculopathy patients in a Japanese population. Ophthalmology. 2008 Jan;115(1):147-57.
 納得のいく結論として、この論文では、『Low macular carotenoid levels may be one of the risk factors of progression in ARM.』となっていますが、今回の発表は、HRAで撮影した画像(488と514nmの差)から黄斑色素の定量を試みたが、Obanaらの結果と異なり、CSCの慢性型で少し減少。AMDでは低下なし?
※網膜の厚みの問題もありそう・・・

9、多発性網膜細動脈瘤を伴う網膜血管炎(IRVAN)に対し硝子体手術を施行した1例(市大)
※Idiopathic retinal vasculitis, aneurysms, and neuro-retinitis. Retinal Vasculitis Study.
Ophthalmology. 1995 Jul;102(7):1089-97.

 the presence of retinal vasculitis, multiple macroaneurysms, neuro-retinitis, and peripheral capillary nonperfusion・・・という臨床特徴をもったIRVANと呼ばれる疾患があるが、今回37歳の女性の症例を経験し、PRP後、最終的に硝子体手術して治癒した?
※Ealesに酷似。

10、光干渉断層計で経過を追えた遷延したMultiple evanescent white dot syndromeの1例(市大)
 それにしても、ハイデルベルグ社のOCTスペクトラリスの画像はきれい。このきれいな画像で、28歳のMEWDS症例を経過観察した。注目ポイントは、IS/OS lineとRPE上の高反射物。前者は、炎症の影響で乱れ、視力低下と関連。発症直後不明瞭で、8週目の視力改善時期に明瞭化。RPE上の高反射物は、それより遅れて多くなり、やがて消失する。FA/IAとの関連の分析は難しそう・・・
※Correlation of spectral optical coherence tomography with fluorescein and indocyanine green angiography in multiple evanescent white dot syndrome. Br J Ophthalmol. 2008 Nov;92(11):1552-7. Epub 2008 Jul 9.
Sikorski BL, Wojtkowski M, Kaluzny JJ, Szkulmowski M, Kowalczyk A.


11、視神経低形成に合併した小児の神経節膠腫の1例(母子保健)
 4歳の視神経低形成による弱視疑いで、アイパッチで視力が改善しない症例のCT検査で、トルコ鞍上~左基底核に大きな脳腫瘍。神経節膠腫という稀な腫瘍。放射線(50GY:1.8×28)で治療したが、視神経に対する影響は避けられず、光覚なしへ。

※残念でしたが、ここで、出身医局主催の忘年会出席の為、退席しました。かつて、天満橋界隈で行われていた忘年会も、徐々に南へ移動し、今年は、ついに難波での開催となりました。新しく教授となったT先生に挨拶し、幹部医局員と少し話をした後、若い医局員・スタッフの楽しそうな声を聞きながら、早々に静かな場所へ移動しました。昔は、あの賑わいの真ん中にいたこともありましたが、時の流れを感じます。もう終わりにしようかな。


12、原因不明のぶどう膜炎に合併した網膜中心静脈閉塞症の若年例(関西医大・枚方)
13、bevacizumab硝子体内投与後にブドウ膜炎を生じた1例(阪大)
14、押し寄せるIT化の波に備えて トプコン電子カルテPOMの使用経験(森下眼科)
by takeuchi-ganka | 2008-12-14 18:22 | 学会報告 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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