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第466回大阪眼科集談会 その3 (1347) 実録!眼感染症クリニック

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<特別講演> 座長:江口 洋 先生(近畿大学)

「実録!眼感染症クリニック」鈴木崇 先生(いしづち眼科・東邦大学)

演者から、仕事が楽しくて仕方ない・・って雰囲気が伝わってくる素敵な講演だった。

すべての結膜炎で確定診断がきるわけではない。通常は、問診と所見から病名を推定し、治療を開始する。ただ、眼感染症の専門家であっても、どうみても肺炎球菌結膜炎だと思ったものがEKCだったり、その逆だったりすることもあると・・ 臨床所見だけでは診断が難しいことも多いらしい。今では自信がないとさえ・・・

しっかりと問診して、先入観を持たず、特徴的な所見を見逃さず、診断を推定して、治療を開始することが重要。

トリアージと対応

  • レベル0:経過観察
  • レベル1:自施設で治療
  • レベル2:自施設で治療し、悪化したら紹介
  • レベル3:すぐに専門機関へ紹介

※すべての疾患に言えることだが、一人で開業していると、この疾患のトリアージと対応は重要で、自分がそれぞれの疾患に対して、どこまで責任を持って治療できるのかを把握した上で、対応しなければいけないが、それは簡単なようで、非常に難しい問題でもある。何も知らないのに、何でもわかったような気になっている場合もあれば、勉強すればするほど、実はまだまだ十分理解できていないことが分かってくることもある。自分がどこまでできるのかを把握することって、意外に難しい・・

※恩師の「山また山」って言葉が浮かんできた^^;

https://takeganka.exblog.jp/30564642/ 

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眼瞼炎

1)眼瞼皮膚炎:皮膚科との境界領域なので、症例によっては、当然皮膚科へコンサルトすべき。乾燥・アレルギー・感染・皮膚特有の疾患・・

※眼瞼ヘルペス⇒アシクロビル眼軟膏、伝染性膿痂疹⇒抗菌剤軟膏

2)前部眼瞼炎

3)後部眼瞼炎

症例16歳男性

アトピー性皮膚炎に合併した眼瞼皮膚炎+マイボーム腺炎 ※培養でMSSA(+)

⇒レボフロキサシン+ベストロン点眼、オフロキサシン眼軟膏、ミノサイクリン内服

※ここまで徹底した処方はなかなかできそうにないが・・・・細菌性の眼瞼皮膚炎の原因菌としては、ブドウ球菌、コリネ、アクネなどで、基本的には眼軟膏を使うと(個人的にはあまり軟膏は使わないが、基本眼軟膏だとは驚き)。ブドウ球菌にはオフロキサシンが有効で、アクネにはエコリシン。コリネにはどちらも有効?ただ、殆どの場合、オフロキサシンでOK。子どもの場合、アクネ菌が原因で、エコリシンが有効。自分の乏しい経験では、ベストロン点眼が最も幅広く効いている印象があるのだが・・・・

水疱、臍窩があれば、ヘルペスを疑う。当然ステロイド禁忌。

症例75歳女性

前部眼瞼炎(カラレット(+))とMGD

※カラレット培養して、グラム陽性球菌(ブドウ球菌)

⇒ベストロン点眼+lid hygiene

※原因菌に有効な点眼を処方するけど、 重要なのは清拭、そして補助的にフルオロキノロンかセフメノキシム点眼を使うのだと。

眼瞼清拭

  • ① ぬるま湯で洗う
  • ② 界面活性剤入りの洗浄液・洗浄綿で目の縁を洗浄
  • ③ ぬるま湯で洗う

販売されている洗浄液や洗浄綿

※高齢の患者さんは、ネットでの注文に不慣れで、アマゾンなら簡単に入手できるのだが、近所のドラックストアーに売ってないことが多いようで、困ってます。まあ綺麗にすればいいので、私も前述の眼瞼清拭方法をおすすめしています。女性なら慣れ親しんでいるクレンジングフォームでもいいのかな?

①アイシャンプー(メディプロダクト)

https://eyeshampoo.com/shopping/eyeshampoo.html 

②ティーツリーフォーム(ホワイトメディカル)

https://www.eye-care-select.com/teatree/index.html 

https://www.sanwa-mall.com/products/detail/188 

③マイボシャンプー(イナミ)

https://www.amazon.co.jp/dp/B0BXNXVZT9?ref_=cm_sw_r_apin_dp_GQ1BQ4F6JWTE9BSKE40Z&th=1 

https://inami.shop-pro.jp/?_gl=1*kcv4mw*_ga*NTY4NzU1MjUuMTc1MDA0Nzc5OQ..*_ga_EBE99PEY03*czE3NTAwNDc3OTgkbzEkZzEkdDE3NTAwNDc4NTYkajIkbDAkaDA. 

Mesiru(ロート)

https://www.shop.rohto.co.jp/category/skincare/157624.html?srsltid=AfmBOooUo6BZW_QirLu77IgLuG1R_t1K5YPOha8_6bLK0x-Qy_qQslgM 

⑤オキュソフト

   https://www.eye-care-select.com/ocusoft/index.html 

眼瞼炎 レベル2

症例3 67歳男性

マイボーム腺開口部閉塞、発赤、結膜充血

⇒後部眼瞼炎(マイボーム腺炎)、MGD合併 ⇒アジマイシン点眼

※アジマイシン登場前まで、あまり積極的には治療していなかった疾患。少し前から、心を入れ替えて、積極的に眼瞼清拭を指導し、アジマイシン処方して、ファイティングポーズ取ってます^^;

24歳女性

眼痛・コンタクトレンズできない・眼瞼腫脹

マイボーム腺炎、角膜フリクテン、SPK・・・・

⇒マイボーム腺炎角膜上皮症 ⇒アジマイシン点眼

※後部眼瞼炎とは、マイボーム腺内のアクネ菌・ブドウ球菌感染で、所見としては、眼瞼縁の充血・腫脹、MGD、瞼結膜充血、そしてSPK。マイボーム腺内の病巣なので、脂溶性の高い有効な薬剤の投与が必要で、アジマイシン点眼、クラリスロマイシン・ミノマイシン内服など。

※開業医にとって、ミノマイシン内服を効果判定しながら、長期間使うのは、ハードル高かったけど、アジマイシン点眼を2週間なら可能。まず、アジマイシン2週間点眼して、治りきらなければ、エコリシン軟膏塗布。再発繰り返す場合は、内服も。

※かつて、タリムス点眼が処方できるようになって、春季カタルがレベル3からレベル2になったように、アジマイシン点眼が使えると、レベル2の眼瞼炎が拡大するかな。

眼瞼炎 レベル3

眼窩(眼瞼)蜂窩織炎

https://takeganka.exblog.jp/31096421/ 

※眼窩蜂窩織炎の場合は、視機能に重大な影響が出ることもあり、すぐに専門病院へ

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結膜炎

症例1 24歳男性

肺炎球菌による結膜炎 ⇒キノロン系点眼で治癒

※典型的アデノウイルス結膜炎:濾胞・充血・漿液性眼脂などが特徴だが、演者は瞼結膜の点状出血が特徴的所見だと・・。

※演者は最近、EKCに違いないと思ったのに肺炎球菌による細菌性結膜炎だったり、アレルギー性結膜炎と思ったらEKCだった・・というような紛らわしい症例が多くないかと・・。感染症の専門家でさえ、臨床所見のみから、細菌性かウイルス性か診断する自信が全くないと告白。専門家をして、そう言わせるのなら、我々が迷う・間違う・・のはある程度仕方ないのかも(ちょっと安心)。演者は、なるべく塗抹をして顕微鏡で確認していると。

  • 好中球・細菌  ⇒細菌性
  • リンパ球     ⇒ウイルス性
  • 好酸球     ⇒アレルギー性

採取・スライドに塗布・染色・鏡検・・・簡単にできますと。

(顕微鏡のカタログを見始めました・・・^^;

症例 83歳女性  キノロン系点眼効かない結膜炎・・

塗抹⇒好中球に貪食されるグラム陽性杆菌 ⇒コリネバクテリウム

コリネはすぐに耐性化しやすい。セフメノキシムかトブラマイシンへ。

60歳女性

左眼濾胞性結膜炎、リンパ節腫脹。ウイルス性結膜炎と判断して、ステロイド点眼いれたら、樹枝状病変出現した。ヘルペス性結膜炎も稀に経験する。演者は家族歴のない10歳代の片眼性濾胞性結膜炎は要注意で、ステロイドを使用しないように・・と言われるが、自分の感覚ではEKC100人にヘルペス1人以下だけど・・。開業して25年以上になるが、EKCだと思ってステロイド点眼入れて、ヘルペスだったのは、1-2例だけ。頻度的には、極めて稀なんですよね。

71歳女性

抗菌剤効かない慢性結膜炎だが、涙点あたりの腫脹あり。

涙点からグラム陰性桿菌(ほぼ放線菌)⇒涙小管炎。菌石摘出して、その後アジマイシン処方

31歳男性

充血とクリーム状膿性眼脂 (個人的にはレベル3

塗抹でグラム陰性双球菌⇒淋菌、キノロン無効で、セフトリアキソン投与が必要。

※クラミジア:眼科的は保険内で診断困難。婦人科キットなら可能だが・・

Direct Strip PCR 感染性各結膜炎キット、今後普及するかも・・

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角膜炎

24歳女性 円形細胞浸潤 ⇒キノロン6回点眼

(こんな症例すごく多いです。若いコンタクトレンズ装用者に・・。)

64歳男性 上皮型ヘルペス ⇒アシクロビル6

60歳女性 カタル性角膜浸潤 ⇒ステロイド点眼と抗菌剤だが、迷ったら、抗菌剤のみ。(ただ、ステロイドは著効するので、なるべく使うようにしています。)

84歳男性 水疱性角膜症で経過観察中、角膜浸潤

塗抹⇒肺炎球菌⇒モキシフロキサシン+セフメノキシム点眼

※角膜浸潤を見たとき・・

  • 単発浸潤⇒キノロン6
  • 多発浸潤、角膜潰瘍、前房内炎症⇒抗菌剤2種類を6

グラム陰性桿菌疑い ⇒ キノロン+アミノグリコシド (レボフロキサシン+トブラシン)

グラム陽性球菌疑い ⇒ キノロン+セフェム系   (レボフロキサシン+ベストロン)

24歳女性

カラコン装用したまま就寝、翌日見えない。浸潤と伴う浮腫混濁が広範囲に。
コンタクトレンズによる角膜上皮障害パターンで様々で、しっかり問診できなければ、結構大変かも。ただ、
ここで、安易にステロイドを入れてはいけない。コンタクトレンズ装用者の角膜疾患の場合、アカントアメーバの可能性が否定できなければ、ステロイドを入れるのは危険。

※コンタクトレンズ非装用者の非感染性角膜病変なら、ステロイドOKだが、コンタクトレンズ装用者の非感染性病変(点状混濁、輪状浸潤など)は、ステロイドを使わずにコンタクトレンズ中止して経過をみる。万が一アカントアメーバだったら大変。

症例 12歳男性 シンガポールから一時帰国した少年の角膜炎(角膜の顆粒状浸潤)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BE%AE%E8%83%9E%E5%AD%90%E8%99%AB 

MicrosporidiaによるMicrosporidial keratitis。東南アジアに多くて、現地では有名。土壌が眼に入って発症するようで、サッカーで泥を浴びて発症するケースが多い。Microsporidiaは、菌より大きく、カンジダより小さい(単細胞真核生物の一群)。薬剤あまり効かなが、擦過したらよくなるし、自然に治ることも。シンガポールの日本人にアウトブレイクしていて、最近日本でもサッカー選手で報告あり。何故か日本ではまだまだ報告少ない。

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質疑から

これからはAIの時代なのか・・

AIがあれば塗抹・PCR不要になるのか・・・

⇒ CorneaAIは優秀らしい。専門家でも負けると。ただ、結膜炎は、まだAIでは無理。複雑な問診、複雑な治療歴があると、AIでは少し難しいらしい。塗抹のAIができるかも。眼瞼炎のAIは作成中

※塗抹のAIができたら、塗抹するので、診断してほしいな。

非常に興味深い質疑

介護施設・寝たきりの患者さんの繰り返す結膜炎について

⇒当然、免疫落ちている状態で、上を向いていて、涙がたまり、瞬きが少なくて、閉じていることも多い。38度ぐらい、グルコースがたまる → つまり、殆ど最高の培地と言ってもいい状況で、抗菌剤使って一時的に治っても、再燃しやすいし、MRSAも増えやすい。どうしようもない。サンヨード、クロルヘキシジン、オスバンなどで消毒に努め、周囲の人が手袋テクニックしっかりと・・


# by takeuchi-ganka | 2025-06-24 17:47 | Comments(0)

第466回大阪眼科集談会 その2 (1346)

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5 非若年者の強膜炎治療中に梅毒感染が判明した2症例

○向井規子、田尻健介、武市有希也、喜田照代(大阪医薬大)

通常眼科領域の梅毒といえば、後部ぶどう膜炎で、強膜炎で梅毒を想定することは稀だが・・

  1. 68歳女性。両眼強膜炎。フルオロメトロン無効、ベタメサゾンもあまり効かないので紹介受診。採血結果梅毒診断。神経梅毒も合併。「3ヶ月以内に夫以外の男性との性交渉(+)」あーあ・・。アモキシシリン投与開始し、改善。
  2. 45歳男性。ステロイド点眼で改善しない強膜炎(0.02%フルオロメトロンだけど・・・)。採血で梅毒確定。髄液検査で神経梅毒診断。「3ヶ月以内に風俗店利用」・・・。ペニシリンG点滴で改善。

2例ともびまん性強膜炎

※最近梅毒が増加しているらしい。何故??

https://news.yahoo.co.jp/articles/ab15ce50a50415090a993c19c708b0089d75e36b#:~:text=%E5%90%89%E9%87%8E%E5%85%88%E7%94%9F%EF%BC%9A%20%E6%A2%85%E6%AF%92%E6%84%9F%E6%9F%93%E8%80%85,%E3%81%8C%E6%98%8E%E3%82%89%E3%81%8B%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%97

6 特発性黄斑円孔に対する50%液空気置換による硝子体手術の成績

○三木理夏子、山本 学(大阪公大)、本田聡(市立柏原病院)、本田 茂(大阪公大)

ILM剥離を含む型通りの手術だが、液空気置換を50%に。フェイスダウンは、3日で十分?円孔閉鎖できていたら、フェイスダウン解除。空気による押し付けは50%でも十分?それより、フェイスダウン期間が短くて、早期に円孔の状態が把握できる方がいいらしい。

※ただ、やはり再手術の判断時期は難しい。術後3日目に再閉鎖しているかどうかで・・判断というのが一応の基準。再手術といっても、もう一度空気を入れるだけの処置って感じ。2回目は100%入れて、フェイスダウンをしっかり・・それぐらい?

7 下眼瞼外反症に対するLER瞼板後面固定法および内側結膜切除の併用

○南 愛(豊中市)、佐藤陽平、藤田恭史、相川美和(大阪市)、鹿嶋友敬(東京都)、中村 聡(明石市)

オキュロフェイシャルクリニックから。外側メインならLTSLateral tarsal strip)のみ。内側(内眼角・涙点側)の外反は、LER瞼板後面固定法に内側結膜切除併用して良好な結果。

8 眼窩多形腺腫により脈絡膜菲薄化をきたし視力低下に至った症例

○岩﨑莉佳子、北口善之、河本晋平、西田幸二(大阪大)

アプローチ困難な腫瘍の場合、視機能低下、整容面での問題がお大きくなれば、手術。今回は、36歳男性で、徐々にOCTで網膜外層障害(compressive retinal degeneration)、視力低下してきたので(1.50.4)、手術へ。術後OCT所見も改善・・

9 内視鏡下眉毛挙上術の検討

○佐藤陽平、相川美和、藤田恭史(大阪市)、南 愛(豊中市)、中村 聡(明石市)、鹿嶋友敬(東京都)

オキュロフェイシャルクリニックから。色んな事してるなあ・・・眉毛下垂、下垂術後、眼瞼痙攣、顔面神経麻痺などが対象。この手技は、日本では、ここだけ・・らしい。全麻下で、所要時間は1時間から1時間半。


# by takeuchi-ganka | 2025-06-20 16:46 | Comments(0)

第466回大阪眼科集談会 その1(1345)

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しばらく梅雨が続くのか・・と思っていたら、突然真夏の雰囲気に・・


第466回大阪眼科集談会

1 眼内レンズ亜脱臼に対し下方強角膜創から眼内レンズを摘出した3

○白木彰彦、﨑元 晋、大家義則、相馬剛至、臼井審一、佐藤茂、松下賢治、前野貴俊、西田幸二(大阪大)

好ましい状況なのか、そうでないのか不明だけど、眼内レンズの(亜)脱臼症例を見ることは珍しくない。ぶどう膜炎やPEが多い気がする。眼内レンズを摘出するとき、将来上方からレクトミーが必要になる可能性があったり、既に上方に濾過胞があったりすると、下方から眼内レンズを摘出することが必要となる。

covid-19ワクチン接種後に生じたAZOORの1例

○東田太一、上野洋祐、本田 茂(大阪公大)

covid-19ワクチン接種後、いつ頃までの発症が、因果関係ありと言えるのだろう。接種後すぐでも、因果関係ない場合もある筈で、因果関係の証明って難しそう。少なくとも、covid-19ワクチン開始後、以前と比べて発症する頻度が増えていなければ因果関係なんか考えにくいのだが、どうなのだろう・・。たとえワクチン接種後すぐに発症したとしても・・

急性帯状潜在性網膜外層症(Acute Zonal Occult Outer Retinopathy:若い女性、チカチカする、視力低下・視野欠損、乏しい眼底所見、自然回復(+)

https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/azoor.pdf 

 今回は、ワクチン接種は4ヶ月前と3ヶ月前の2回。若い男性で眼底所見異常(-)OCT所見(外層障害)・FAF輝度上昇・多局所ERG所見(電位低下)などからAZOORと診断。ビタミンC+パントテン酸配合錠で経過観察(何のことかと思ったらシナール)。2ヶ月後にはすべて回復。

※ワクチン接種後発症について、ちょっと検索すると、2022年網膜硝子体学会で東海大学からAZOORの報告(+)2024年獨協医大からはMEWS様眼底、順天堂大からAZOORなど報告は相次いでいる。他にも様々な疾患の非常に多数の報告があり・・

https://jsvrc.jp/wp-content/uploads/2024/01/kaiken240111_006.pdf 

3 眼軸長測定法とケラトリング径が眼内レンズ度数計算式の予測精度に与える影響

○木下雅貴、後藤 聡(大阪大)、前田直之(大阪市)、野田徹(国立病院機構東京医療センター)

西田幸二(大阪大)

眼軸長測定は、眼内レンズ度数計算の上で非常に重要。透過屈折率換算法で眼軸長測定する透過屈折率眼軸長とセグメント屈折率換算法を用いたセグメント眼軸長があり、後者を用いると、長眼軸の過大評価と短眼軸の過小評価が是正される・・・・・?ただ、よく検討すると、ARGOSOA2000より予測精度が優れていたのは、ケラトリング型が小さいからかもしれない(らしい)。

※より高い精度で眼内レンズ度数計算を行う為の研究。

Kahook Dual BladeT-hook trabeculotomyの術後1年成績

○星野凱毅、近江正俊、盛 秀嗣、石野雅人、切石達範、大庭慎平、石本敦子、志水義尚、川﨑桃子、大中誠之、今井尚徳(関西医大)

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36457889/  

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36457889/#&gid=article-figures&pid=figure-1-uid-0 

眼圧下降・点眼スコアなどはほぼ同等で、一過性高眼圧がT-hookの方が少ない。術後炎症+出血が一過性眼圧上昇の原因と推定し、術後炎症が少ないことがT-hookのメリットと推定している。だったら谷戸式と比べたら全く一緒だったりしないかな・・。iStentやストリームラインならもっと術後炎症少なそう。

※しばしば登場する術後点眼スコアだが、点眼を追加するかどうかって、明確な基準を設けているのだろうか。主治医の主観的な判断なら、あまり意味がないのでは・・・・といつも思ってしまう。


# by takeuchi-ganka | 2025-06-18 17:50 | Comments(0)

第53回 関西医科大学眼科同窓会 春の勉強会 (1344)

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矢田寺の紫陽花


久しぶりに、関西医科大学眼科同窓会の春の勉強会に現地参加してきました。よく考えると、寛ちゃんがいない初めての同窓会か・・。今後、何故か、同窓会の名前が消えて、同門会となるようですが、仮に少々名前が実態にそぐわないものだったとしても(?)、伝統のある名前を引き継ぐ事が大切なことだと思いますがね。他大学出身の私でも、この同窓会の名前に違和感ないですが・・。

確か以前は朝からやっていた勉強会ですが、開始時間が日曜日の午後になってしまうと、遠方の先生が参加しにくくなります。同窓会の勉強会の前日に大阪に来られて、懐かしい仲間と食事などをして、翌日午前中だけでも勉強会に参加して、地元に帰る・・・というスケジュールが不可能となりました。同窓会員は全国におられます。少しでも参加人数が増えるよう考慮してほしいなあ・・。参加者がこれ以上少なくならないことを願うばかりです。

演題のほとんどは、いつものように、以前集談会などで発表したもので、あと数題は、開業されている先生の発表。コメントは以前のものをほぼ流用・・

1,新生血管型加齢黄斑変性に対するfaricimab硝子体内投与の1年経過 石野雅人

加齢黄斑変性に対する抗VEGF治療薬の長い歴史の中で、ちょっと変わり者の薬剤?VEGF-Aと結合する抗VEGF-A FabAng-2と結合する抗Ang-2 Fabが同一分子内に存在。抗炎症・血管透過性亢進を抑え、血管新生も抑える画期的な薬剤?)。門外漢には、よくわからないけど、関西医大独自の投与方法(mTAE)で行えば、少し投与間隔をあけれて、投与回数もより少なくできる・・

※画期的な薬剤・・・というほどでもないのかな。

2,好酸球性多発血管炎性肉芽腫症に関連した強膜炎における抗体療法の影響 綾はるか

難しい発表。ちょっと聞き逃し・・^^;

3,意外と使えるFunctional vision scoreによる視機能評価 木内克治

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpnjvissci/40/1/40_40.1/_html/-char/ja

いつも独自路線の木内先生の発表。今回も・・・

「視力の評価であるFunctional Acuity ScoreFAS)と,視野の評価であるFunctional Field ScoreFFS)をそれぞれ求め,それらを掛け合わせて算出する。スコアは片眼および両眼の状態でそれぞれ測定され,計算時には両眼60%,片眼20%ずつ加重平均される。視野の評価はGoldmann視野計III/4e指標で行われる。」

4 緑内障術後ocular decompression retinopathy1例 佐井美玲

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10827622/ 

要するに急激な眼圧下降後に見られる網膜出血。昔昔、急性発作にレーザー虹彩切開術して、その後散瞳して眼底検査すると、網膜出血しているのを何例か見たけれど、それもODRなんて呼ぶのかなあ・・

今回は、ヘルペス性虹彩炎の続発緑内障にレクトミーしたら、生じた出血。点眼のフルメディケーション+ダイアモックス3錠でも眼圧50以上。レクトミーして、術後マッサージして8にすると・・・ODR。黄斑部に網膜前出血があったので、視力低下。吸収とともに徐々に回復。一般的に予後良好。

5 結膜MALTリンパ腫2025眼の臨床経過 篠原優里子

https://takeganka.exblog.jp/33402165/ 

https://data.medience.co.jp/guide/guide-07010024.html  

あまり悪性度の高くない悪性腫瘍。①無治療 ②放射線治療(30GY) 抗体治療(リツキサン:抗CD20抗体)。リツキサンをチョイスすることも多いが、放射線は有効。長い間リツキサンで改善が見られず、放射線で寛解したケースもある。ただ、無治療で、増大しないことも・・。

6 治療に難渋した特発性周辺部角膜潰瘍(モーレン潰瘍)の一例 祐森恵梨佳

片眼は角膜移植を9回もやって、その後角膜融解してほぼ失明状態。他眼にモーレン角膜潰瘍発症。結膜切除して、強角膜移植、部分角膜移植。ステロイド点滴、シクロスポリン内服、プレドニゾロン内服で、良好な経過だったが、ぶどう膜炎(VZV)発症。プレドニゾロン減らして(漸減中止)、シクロスポリン増やして(その後漸減)、アメナビル開始・・・。最終的にステロイド・タリムス・抗菌剤・β遮断剤点眼のみに。(こんな重症例の角膜疾患の治療経過は、ちょっと別世界の話で、へえ・・・・って感じ)

C2:シクロスポリン2時間後血中濃度

https://is.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/042020153j.pdf 

※電子カルテの掲示板で内科とやりとりして、シクロスポリン濃度コントロールの参考に・・

7 同一創に再発した濾過胞感染に対してバルベルト緑内障インプラント挿入術を行った一例 河合諒

3年前にレクトミー。1年前にニードリング。その後濾過胞感染。濾過胞温存して、PEA+ビトして抗生剤投与して落ち着いて、その後IOLも入れたが、4年ほどして再び濾過胞感染。いずれもステージⅢa程度。Ⅲbではなかった。2回目は濾過胞も切除して、その後眼圧上昇にバルベルト。

※こんなこともあるので、レクトミーは積極的には勧められないのだが・・・・。今回の症例からは何とも言えないと思うけど、濾過胞が機能しているようなら、できれば温存したい。温存しても問題ないとする報告もある(そんな報告ができるほど感染が多いとも言える)。まあ、感染するということは、通常濾過胞が瘢痕化しているケースより、濾過胞が機能していて、かつ菲薄化しているか破綻している場合と思うけど。温存しない場合、後日追加緑内障手術(濾過手術かチューブシャント)が必要になる可能性高い。

8,TREおよびNBR後の低眼圧に対して外科的処置を要した症例の1年成績  竹内正興

なんでもかんでも、アルファベット3文字使うのは、使う側は言いやすいけど、初めて聞く人にとっては、何のこと・・ってなるよね。レクトミーや濾過胞再建術を行った後低眼圧になり、脈絡膜剥離や低眼圧黄斑症を発症し、(遷延したから)外科的処置をした症例38眼の術後経過。低眼圧の原因は過剰濾過か房水漏出。外科的処置は、通常粘弾性物質注入and/or縫合。眼圧は、術後早期に少しだけ高めだが、1年後には一桁眼圧に落ち着く。視力は同様の経過をたどるものの、術前の視力には及ばなかったらしい。外科的処置で低眼圧は対応可能だが、黄斑皺壁の治療は簡単ではなく、視力回復は更に困難?

濾過手術の宿命だが、術後経過良好と言えない(予想外の結果になる)症例が一定程度ある。濾過胞の形成が患者さんの創傷治癒能力に依存しているので仕方ないのだろうが、当然漏れすぎたり、漏れなさすぎたりする。出来上がった濾過胞も破れたり・感染したり・・・・・。やっかいな手術であることに変わりない。例えば100眼に濾過手術したとして、外科的処置なしに望ましい眼圧におさまるのは何眼あるのだろう。仮に50眼だとしたら、残り50眼のうち、漏れすぎて外科的処置をしたケースが何眼、漏れなさすぎて外科的処置したケースが何眼なのだろう。仮にそれが25眼ずつだとしたら、今回の発表は、(最初に漏れすぎて外科的処置した症例)+(漏れなさすぎて外科的処置をしたら漏れすぎた症例)が、ターゲットなのかな。一応術後1年程度は、良好な結果らしい。5年後は知らんけど・・。やはり濾過手術は大変・・・・。

9、ストリームラインによる新しいMIGS 山岸和矢

これはフックを用いたロトミーinternoに比べると、高価なストリームラインを使用する必要があるものの、有望な手術に違いない。詳細は下記アドレスに・・

※かつて、Viscocanalostomyをやりまくった山岸先生としては、当然日本で最初にやらなければいけないお仕事のようです。作用機序が明快とは言えないものの、異物を残さず、繰り返しできて、合併症も少ない。それでロトミー同等の眼圧下降。値段を除けば理想的・・・かも。

https://takeganka.exblog.jp/37741522/



今井尚徳教授の特別講演

新任教授が、教室の現状と未来について熱く語ってくれました。同窓会員としては、そこを職場とする息子の父親としても、眼科学教室の発展を願うばかりです。末端の同窓会員なので、面識ありませんが、若くて、エネルギッシュな、デジタルデバイスを駆使した網膜硝子体手術の専門家に、網膜硝子体手術の現状と近未来を見せていただきました。凄いなあ・・・と感嘆するばかり。特に最後の、嚢胞様腔内壁切開術およびフィブリノーゲン塊摘出術はちょっと驚き。昔なら、Foveaは、アンタッチャブルなエリアだったのだが、孔があいたら、色んな材料で充填するし、最近は網膜切り取って移植する。CMEでも切開したり、フィブリノーゲン塊摘出したり・・。

最も馬力がある年代の若い教授。頑張ってね。

※神戸大学時代の仕事かな。

https://www.hosp.kobe-u.ac.jp/rinri/research/docs/No.B200233.pdf 

⇒ 嚢胞様黄斑浮腫は糖尿病や網膜静脈閉塞などの様々な眼底疾患に続発する病態。治療法としては、抗血管内皮増殖因子製剤 、懸濁ステロイドの眼局所投与 、網膜光凝固などの非外科的治療、そして硝子体手術があります。しかし、これらの治療が奏効しない黄斑浮腫には嚢胞様腔内壁切開術が施行され、良好な成績が報告されています。また、近年、嚢胞様腔内壁切除の際に嚢胞様黄斑浮腫内に形成された半透明塊が摘出されることも報告されています・・・・

 


# by takeuchi-ganka | 2025-06-13 18:42 | Comments(0)

これからの小児の近視診療に向けて その3 (1343)

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次の演題は、

『近視進行を取り巻く医療制度』  はら眼科 原信哉先生

リジュセアミニ0.025%点眼は、近視進行抑制効果が明らかになった点眼だが、対象患者は膨大な数になる。近視進行は5歳から始まり8歳ぐらいでピークとなり12-13歳まで続く。早期に発症するほど高度近視になるリスクが高いとすれば、小学校1-2年で発症するような早期発症の近視ほど治療ターゲットとすべきだろう。いずれにしても、対象患者数は膨大となり、保険診療に馴染まないようで、今回リジュセアミニ0.025%点眼液は、自由診療の対象となりました。こうなると自由診療に慣れていない私のような普通の町医者には、ハードルが高いが、小学校入学前後から小学校1-2年の間に発症する近視患者の中にハイリスクの患者さんがいるはずで、まず治療対象として念頭に置くべき。それより後の発症の近視患者でも進行速度は速いと判断される場合も治療対象とすべきだろう。

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近視の有病率

  • 小学1年(6歳):17.3%
  • 小学2年(7歳):21.9%
  • 小学3年(8歳):31.2%
  • 小学4年(9歳):39.0%
  • 小学5年(10歳):46.2%
  • 小学6年(11歳):52.8%
  • 中学1年(12歳):58.9%
  • 中学2年(13歳):59.6%
  • 中学3年(14歳):62.6%

だとすると、小1の20%前後が対象候補だろうか・・

自由診療

近視進行抑制治療を行うと判断した時点で、別のカルテを用意して、近視病名で行うすべての検査は自費扱いとなる。①問診、②検査・診断、③説明・同意書、そして④治療開始

こんな順番なのだろうが、まず、患者さんを見つける作業から。

  1. ハイリスク患者(5-6歳で近視発症している)
  2. 早期発症ではないが、近視進行速度が速い患者
  3. 近視があって治療を希望される患者

次に(その前に)検査

  1. 原則として、治療前、全例に調節麻痺下の屈折検査をすべきだろう。スポットビジョンスクリーナーだけで済まそうと思っていたが、ORTに戒められた^^; これから長期間の近視進行抑制治療のスタートラインなのだから、しっかり調節麻下の屈折度数を調べておくべき。
  2. 角膜形状解析
  3. 眼軸長(光学的):近視は眼軸長伸長に伴うものなので、最も重要な検査の一つとなる。
  4. もちろん通常の診療と同じように、細隙灯顕微鏡検査と眼底検査を行い、近視以外に疾患がないことを確認しておく。

治療を行うことになれば、『診断、治療内容、費用、治療リスク、他の治療法の説明も行い』、同意書をもらう。治療は、6歳で開始したら7-8年続くのだが、脱落するかもしれないし、料金は、毎回(3ヶ月毎)にいただくことになりそう。そして、治療開始後は、3ヶ月毎ぐらいに屈折検査・矯正視力、年に1回は眼軸長などをチェックして、近視の進行レベルを把握する。当然、近視治療中も、様々な眼疾患で受診されることはあり、それに関する検査・治療は、保険診療が可能だが、近視(屈折異常)に関する検査は自由診療に含まれるので、矯正視力とか屈折検査は、算定できない。また、眼鏡処方やコンタクトレンズ処方が必要になった場合も、自費に・・

初回の診療・検査内訳は

  • 屈折検査
  • 矯正視力検査
  • 調節麻痺下屈折検査
  • 角膜曲率半径(形状解析)
  • 光学的眼軸長測定
  • 細隙灯顕微鏡検査
  • 眼底検査
  • 1ヶ月分の薬剤料

最初だけ、1ヶ月後に受診で、その後は3ヶ月毎の受診。

  • 屈折検査
  • 矯正視力
  • 細隙灯顕微鏡検査
  • 3ヶ月分の薬剤料

※年に1度は光学的眼軸長測定と眼底検査。

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近視進行抑制治療の費用(当院での)

治療開始時点

初診時検査代(5000)+薬剤1ヶ月分(4000円)=9000円(税込)

2回目以降

検査代(3000円)+薬剤3ヶ月分(4000円×3=15000円(税込)

ようやく準備が整いましたので、遅ればせながら、当院でも6月から近視進行抑制治療を開始します。

治療適応があって、希望される方のみですが・・


# by takeuchi-ganka | 2025-05-27 17:12 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka