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第5回大阪角膜フォーラム  その1 (356)

連休明けの週末、大阪の最高気温が前日より10度ほど跳ね上がり、一気に夏になってしまいました。最近の日本は、春と秋が短くて、冬のあとすぐ夏がやってきます。服のチョイスも難しく、殆ど夏の装いで出かけました。今回の角膜フォーラム、演題そのものには興味を引きませんでしたが、とてもいい内容の講演でした。DSAEKなどは、講演で聞くたびに、どんどん進歩している印象です。

1、角膜内皮移植(DSAEK)の適応・術式と術後管理 小林顕(金沢)
 角膜内皮機能障害が進行して角膜が混濁し、重篤な視力低下が発生すれば従来は、全層角膜移植が行われていました。かなり古くから行われ、実績のある手技なのですが、問題も多くて、白内障手術に比べると、とても洗練された仕上がりとは言えず、感染の危険性もあれば、抜糸後強い乱視が発生することもあり、レベルの高い視機能の維持とはほど遠い?手術でした。
 一方、混濁した角膜に対する医療は目覚ましい進歩を遂げ、全層角膜移植の時代からパーツ移植の時代へと移行しつつあります。今までも、表層の角膜混濁に対して角膜上皮および実質浅層を移植する表層角膜移植が、輪部機能が悪ければ、輪部上皮移植が行われ、更には、Deep Lamellar Keratoplasty、培養上皮シート移植や口腔粘膜上皮シート移植なども臨床応用され、徐々に手術侵襲は軽くなり、仕上がりもきれいになりつつあります。
 今回の話は、角膜内皮細胞機能不全により水庖性角膜症に陥った角膜に対する内皮移植です。すでに何度かこのテーマで講演を聴きましたが、どんどん進歩しているようです。まず、少し大きめの強角膜片(16mm以上?)を用意する。これを人工前房に装着し、レーシックでお馴染みのマイクロケラトームで厚さ150-200μm程度の薄い内皮シートを作成します。アメリカでは、少し値が張りますが、プレカットした内皮シートも用意可能なようです。要するに、機能不全に陥った内皮を除去し、この内皮シートを前房に入れて、空気で押えるのですが、それなりにコツが沢山あるようでした。
 まず、日本人の眼は小さいので非常に難しいそうです。それでも工夫して慣れてくれば何とかなる?。適応は、フックス、IOL眼、内皮炎後、LI後、移植後の拒絶反応症例などなんでもOK? ただ、LI後で水晶体がある眼は、流石に狭くて操作困難で、先にPEA+IOLが必要? 空気を入れて移植内皮を押さえつける必要があるので、基本的にはIOLが入っていることが条件。角膜切開幅は5mmですから、少し前までの白内障手術レベルの大きさ。シンスキーフックを逆にしたようなもので、機能不全に陥った内皮を円形に取り除く。その後、移植内皮をBusin glideにセットし、反対側から専用鑷子で引っ張るようにして前房内へ挿入する。演者は、その前にIOLグライドを入れることで成績を向上させたようです。この内皮挿入には、フォーダブルIOLを入れるような道具を応用して(Neusidl Corneal Inserter?)、内皮に触れない工夫することで更に成績を上げる事ができるようです。
 内皮シートを入れた後、30G針を使って、空気がもれないように前房にしっかり空気を入れる。内皮シートと角膜の間に水が残らないようにすることが大切なようで、スリット光を応用したりしながら、角膜上をマッサージ?したり、角膜を穿刺したりして、水を抜いておられるようでした。ただ、失敗しても、同じ条件で、やり直しがきくのもこのDSAEKの利点でしょうか。手術時期は早い方が視力回復も早いようです。侵襲の少ない手術ですから、早期にやるべきでしょう。ただ、遅くなっても、視力回復に時間がかかるものの、回復可能なので、全層移植よりはいいようです。
 一番驚いたのは、手術件数で、徐々に増加し、今ではアメリカでも金沢大学でも全角膜移植件数の半分近くを占めているようです。それで視力0.5以上が100%、1.0以上でも40%近いという抜群の成績。内皮細胞機能不全による水庖性角膜症患者にとっては、非常に大きな福音に違いありません。
 最後に、nDSAEKという内皮を剥がさない術式も紹介されていて、同程度の好成績?将来はこちらが主流になるのかもしれません・・・・。
Commented at 2009-05-13 11:55 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by takeuchi-ganka at 2009-05-13 15:46
33歳で、正常眼圧緑内障というのは、若いですね。すでに視野障害が発生しているのでしたら、この先の事を考えれば、しっかり治療してくださいね。ただ、眼圧レベルが15以下にコントロールされている場合、手術になる可能性はあまり高くないでしょうが、零ではない。勿論、白内障手術にしても、緑内障の手術にしても、術中・術後合併症によっては、内皮減少も生じるかもしれません。ただ、現時点で、角膜内皮の状態が正常なのであれば、そこまで考えてコンタクトレンズ使用を制限することは一般的でないかもしれません。私は特に制限していませんが、主治医からコンタクトレンズ使用を制限するように言われたのなら、それに従うべきでしょうか・・・。
Commented by ゆきんこ at 2009-05-13 20:02 x
先生、お返事ありがとうございました。なんだか安心しました。
現実を受け止めるには時間がかかりましたが、主治医の先生を信じて
しっかり治療を続けていこうと思います。あと、先生のブログのおかげで変なサプリに騙されずにすみましたよ~(笑)
これからも、ブログの更新を楽しみにしています。シロウトには難しい話も
多いですが、学会報告など興味深いです! ありがとうございました。
by takeuchi-ganka | 2009-05-12 06:59 | 学会報告 | Comments(3)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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