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コンタクトレンズと角膜内皮細胞 (364)

  角膜内皮細胞というのは、所謂『くろめ』の裏側をおおっている単層の細胞で、10歳代で3410個/mm2あり、80歳代で2777個/mm2と言われています。つまり加齢に伴って徐々に減少しているのです、ただ、体の多くの臓器に共通することでしょうが、非常に余裕があるので、数だけで言えば、1000個/mm2以下にならなければ、特に問題は生じません。この角膜内皮を減少させる最もポピュラーな原因にコンタクトレンズ装用があります。と言っても、コンタクトレンズの種類や使用状況によって、大きく異なるでしょうし、同じ様にしていても、個人差がかなり大きいそうでが。ただ、相当ひどい状況であっても内皮細胞の減少率は年間5%以下と言われています。例えば、3000個/mm2が5%減少して2850個/mm2です。内皮細胞測定そのものも誤差が結構大きく、この程度なら減少なのか誤差なのか不明なくらいです。勿論、経時的に測定し、徐々に減少していることが示されたら間違いないでしょうが、コンタクトレンズ装用だけで極端に内皮が減少することは稀で、疑われたら、経時的にフォローするべきでしょう。
コンタクトレンズ装用だけで、失明するほど内皮細胞が減少することは非常に稀でしょうが、将来白内障手術を受ける事は稀ではなく、緑内障手術やレーザー治療を受けることだってあるかもしれません。白内障手術も、普通に行われたら5%程度の減少ですむでしょうが、合併症があれば、話は別です。
 実際、角膜内皮細胞減少により水庖性角膜症に陥るケースというのは、

National survey on bullous keratopathy in Japan. Cornea. 2007 Apr;26(3):274-8.
Shimazaki J, Amano S, Uno T, Maeda N, Yokoi N; the Japan Bullous Keratopathy Study Group.


この論文によれば、
①白内障手術
②レーザー虹彩切開術

③緑内障手術
④外傷
⑤緑内障
⑥硝子体手術
・・・
だそうで、①が断トツ、ついで②が多く、CL装用が原因というのはありません。でも長期にわたる悪い条件下でのCL装用が、disadvantageであることは間違いないと思います。ここに原因として挙げられているのは、その症例の主たる原因ということで、CL装用が複合要因の一端を担っている可能性は高い筈。また何と言っても他の原因と異なり、CLユーザーは、1500万~1800万人という天文学的オーダー?で存在する訳で、そのユーザーの一体何割が真っ当な眼科で定期検査を受けているでしょう? 装用時間が長すぎる、洗浄がいい加減、装用期間を守らない、眼鏡がないので少しぐらい痛くても装用中止できない、更には、劣悪なカラーコンタクトをしたり、ワンデイを何日もしたり・・・ツワモノの数も半端じゃない。彼ら彼女らの角膜内皮の状態は、我々の想像をはるかに超えている可能性を否定できない?! 
 CLユーザーの皆さん、角膜内皮細胞は減ることがあっても、増えることはありません。内皮細胞は限りある資源です。大切にしてください。

 この内皮は、80歳ぐらいの高齢者ですが、きれいな角膜内皮で2604個/mm2あります。
コンタクトレンズと角膜内皮細胞 (364)_f0088231_18315178.jpg

 cornea guttata が目立つ角膜。数はまあまあ2315個/mm2だが、機能は少し低下していると考えるべき?
コンタクトレンズと角膜内皮細胞 (364)_f0088231_18321495.jpg

 50歳ですが、30年近くコンタクトレンズ装用していて、数はまあまあだが(2525)、六角形細胞出現率が42%とかなり低下している。
コンタクトレンズと角膜内皮細胞 (364)_f0088231_18324142.jpg

 複数の疾患があり、複数回手術を受けた眼で、極端に内皮細胞が減少している。1387個/mm2
コンタクトレンズと角膜内皮細胞 (364)_f0088231_18331128.jpg

 全て、自覚症状はありません。ただ、最後の症例のようになってしますと、少し心配です。
Commented by ゆきんこ at 2009-05-31 00:35 x
先生、こんばんは。気になる話題だったので、またお邪魔しました。緑内障の疑いを指摘されたとき、紹介状を書いていた医師に「コンタクト併設じゃない、ちゃんとした眼科に行って下さい」と言われたので・・・レーシック眼科は「真っ当」なのか?と思いましたが・・・。コンタクトはネットで購入していたので、定期検査は受けていませんでした。そういう人は多いと思います。虫歯は痛みがありますが、眼は痛みもなく徐々にやられていきますね。視神経や内皮細胞の重要性なんて、病気になるまで知りませんでした。眼は本当に大事な器官だから、視力が落ちたら安易にコンタクトやレーシックで矯正するのでなく、もっと子供の頃から大切さを知る(教える)必要があると思います・・・歯磨きの仕方は、確か小学校で習いましたよ!(笑)
Commented by takeuchi-ganka at 2009-05-31 08:31
 コンタクトレンズを販売するという市場があり、そこは圧倒的な力をもつ商業資本の思惑で動いています。薬事法が改正され、コンタクトレンズが高度管理医療機器(クラスⅢ)に指定された所で、実態としては、たいして変わらず、我々眼科医に余計な負担を強いるだけになっているような気もします。コンタクトレンズは眼科専門医の手で・・・と叫んだ所で、満員の甲子園の阪神の試合で、ビジターチームを応援するようなもの?それ以下の効果しかなさそうです・・・市場原理と医学倫理を天秤にかければ、現実はそんなものかも・・・
Commented by ゆきんこ at 2009-05-31 20:46 x
・・・満員の甲子園でビジターの応援なんてしたら、大変なことになりそうですね(笑)先生のようなかかりつけ眼科を探しておくこと、あとは自分の眼は自分で守る、くらいでしょうか。大切にしようと思います。お返事ありがとうございました!
by takeuchi-ganka | 2009-05-29 22:32 | その他 | Comments(3)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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