眼科に関するQ&A その1(近視) (367)

 最近話題がマニアックな方向に走りすぎたきらいがあるので、基本に立ちかえり、眼科に関する基本的なQ&Aを考えてみます。眼科医として25年以上外来をやってきましたが、その間に患者さんから寄せられた質問・疑問に対して、私なりの返答を考えてみました。

Qその1 『近視を予防する方法はないでしょうか。』
※これは、しばしば耳にする質問です。特にこの時期、学校検診で、視力低下を指摘されて来院される小・中学生は多く、その母親からはしばしばこの質問を受けます。どのように答えたらいいのでしょう。

A1:そんな方法ありません。あれば、私は眼鏡などかけていません・・・・。これではあまりに冷たいですし、話にふくらみがありませんので・・・・

A2:近視の進行を止める・遅らせる大規模スタデイが全国規模や諸外国で行われ、ある程度の結果が出ています。予防可能とするデータもあれば、否定的なデータもあります。有名なCOMETにしても岡山スタデイにしても、学童に、累進屈折眼鏡(つまり遠近両用眼鏡)を数年かけさせて、僅かな進行抑制効果しかなかったのです。だとすれば、現実問題としては、実行不可能と考えます。僅かな近視抑制効果の為に、何年も累進屈折眼鏡を装用できない・・・。つまり、唯一のエビデンスのある近視進行抑制手段が実行不可能なので、『そんな方法はありません』と答えれば、100点かもしれませんが、これも何だか、冷たいでしょうか。事実なんですが・・・
~資料~ 

A3:一般の患者さんに、更に突っ込んだ説明というのは、本当に丁寧なのか疑問がありますが・・・、近視の原因は、近くを見ることそのものにあるようです。近くをみる際に、我々は水晶体を厚くして(調節)、網膜に焦点を合わせます。ただ、この調節は少し不足するようで、その不足分を調節ラグといいます。この調節ラグは調節量が大きくなれば増加します。そして、この調節ラグこそが、眼軸長の延長という引き返すことのできない変化を眼球に引き起こすトリガーと言われています。今の小中学生の生活を見ると、勉強だけでなく、テレビ、パソコン、携帯電話、携帯ゲーム機など長時間調節作業を強いる環境が整っています。つまり、近視を引き起こす原因を取り除くことは、ほぼ不可能な環境であり、結局『そんな方法は残念ながらありません・・・』と答える事になるのです。
~参考~ 

※我々にできることは、強い調節作業が長時間継続する事態をなるべく避ける(つまり、あまりゲームさせない)事と、近視になったとしても、少し弱めの眼鏡を処方することぐらいでしょうか。
by takeuchi-ganka | 2009-06-18 17:24 | Q&A | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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