学校医になって
2006年 02月 08日

昨年、 学校医になりました。といっても眼科医としてですが。なりたての学校医としての感想を。
学校保健法によって、眼科にかかわる定期健康診断は、①視力検査、②色覚検査、③眼の疾病および異常の有無の検査(眼科検診)の3項目です。ところが、平成15年度から色覚検査が廃止されました。これに関しては、論争が活発に行われたようですが、結局廃止になったのです。その理由は、
①差別につながる。
②治療手段がない。
③殆どの高校・大学で色覚異常は不問であることと、入社試験での実施義務が廃止された。
というのが理由らしいのです。
①差別につながる?そうならないように配慮するのが教育現場でしょうし、それこそが教育そのものじゃないのでしょうか。そもそも差別につながるような問題ではないのです。それを差別につなげてしまわないように、努力するのが教育現場じゃないのでしょうか。身長の差が差別につながったら、身長差がわからないように隠すような配慮をするのでしょうか。本末転倒。
②また、確かに、色覚異常は現在治療手段がありません。ただ、色覚異常には、さまざまな程度があり、その程度によっては、色の識別が困難であったり、色誤認したりします。スケッチの際に、人とは違う色を使うこともあります。交通信号でさえ、状況によっては識別困難なこともあるのです。治療手段がないからといって、放置していいのでしょうか。
③高校・大学への進学は、問題ないとしても、職業選択の際には、今でも、色覚が問題となる職業は存在するのです。航空船舶関係、鉄道関連、自衛官・警察官などは、色覚正常であることが必要ですし、そう明記してなくても、大きなハンディキャップを背負ってしまう職業は他にあると思われます。にも、かかわらず、日本は、世界に誇れる日本製の色覚検査表の使用を放棄したのです。
差別と区別は違います。現状を正しく認識したうえで、対応していくことを放棄して、何が教育なんでしょうか。
かつて小学校4年で実施していた訳ですから、平成15年度以降に小学校4年になる子供は、色覚検査を受ける機会を失っています。そのことを忘れないようにして下さい。職業選択の際に慌てないように・・・・
(昨日、鉄道設備関連に就職するために、色覚検査が正常であることの証明が欲しいと言って、石原式色覚検査を受けに来られた人がいました。このような人が、この時初めて異常と知ったら悲劇だと思うのですが・・・)