NEW POST

眼科に関するQ&A その5(遺伝) (373)

Qその5 『目が弱い家系ってあるのでしょうか・・・』 
※ブログに寄せられた質問の答えが長くなりそうなので、記事に仕立てました。

 一般的に眼に弱い遺伝子(家系)というのはないですが、遺伝する眼疾患というのは、多数存在します。ただ、少々複雑で難しい話になりますが、少しお付き合いください・・・(実は、私もそれほど良くわかっていないのですが・・・)。
 遺伝子には、自己と他者を区別する際に働く遺伝子があり、MHC(主要組織適合遺伝子複合体)といいます。これは、ヒトの場合はHLA遺伝子。このHLA遺伝子は、細菌、腫瘍、ウイルス感染細胞などの他者と自己を区別することで、自己を守る働きをしているのですが、同時にこのHLAタイプによって、ある疾患に罹りやすかったり、罹りにくかったりするようで、問題の原田病にしても、HLA-DRB1*0405と深いかかわりがあると言われています(疾患感受性遺伝子の側面)。他にも、ベーチェット病とHLA-B*5101やHLA-B*27関連ぶどう膜炎などが有名です。(まあ血液型のようなもので、通常の血液型は、赤血球のタイプですが、この場合は、白血球のタイプと考えて下さい。)
 ただ、HLA-DRB1*0405にしても、日本人の12%に見られるものの、その多くは原田病を発病することはないようで、家族内に原田病が多発することも少ないようです。問題の原田病に関してはそんなところです。つまり、原田病に罹りやすい遺伝子が一応あるものの、だからといって、多くの人は発症せず、家族発症頻度も低いようです。あまり考えなくていいということでしょうか。

 ただ、緑内障というのは、非常にありふれた疾患で、多治見スタデイによると、40歳以上の20人にひとり、70歳以上の8人にひとりの高率です。この高率であるということとは別に、昔から、家族性の緑内障の存在は知られています。現在、緑内障遺伝子として、myocilin(MYOC) 遺伝子やoptineurin(OPTN)遺伝子などが有名ですが、現在まで13個ほど報告されているようです。遺伝性緑内障の頻度は低いですが、これらの遺伝子を有する家系においては、ほとんどの場合常染色体優性遺伝形式をとるようです。
 また、緑内障感受性遺伝子なるものもあるようで、数多く報告されています。ただ、これについては、まだまだ未知の分野で、私は殆ど情報を持っていません。
 今回の質問された方への返答としては、原田病に関しては偶然そうだっただけ(?)でしょうし、緑内障についても、偶然かもしれませんし、低い確率ですが、緑内障感受性遺伝子なるものが関係している可能性もありますが、現時点では、通常の緑内障(NTG)として普通に対応すればいいと思いますが・・・。あまり答えになってないかな。
Commented at 2009-07-01 11:20 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
by takeuchi-ganka | 2009-07-01 08:05 | Q&A | Comments(1)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31