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眼科に関するQ&A その6(緑内障) (374)

Qその5 『緑内障は治りますか?』
※ここでの緑内障は、正常眼圧緑内障を含む原発開放隅角緑内障の話です。

A1:『残念ですが、緑内障は治りません・・・・』と言う冷たい答えも一面正しいのです。緑内障の本質は、神経節細胞死です。従って、死んだものは治せない・・・と言うことにもなるのです。

少し詳しく解説しますと・・

※原因(不明) 
⇒神経節細胞死(⇒神経線維層脱落)
⇒視野異常(⇒ビエルム暗点・鼻側階段・・・・・)
⇒視力低下
⇒失明


 つまり不明の原因があり、神経節細胞死が発生し、徐々に神経線維が脱落していきます。神経節細胞死領域は網膜感度が低下し、視野異常(欠損)が発生します。その後、視野異常領域は徐々に進行し、黄斑領域に及べば、視力も低下し、最悪失明へと至ります。ただ、100-120万もある神経節細胞の半分以上がなくなるまで、視野も視力も全く異常がないことが殆どで、その数にはかなりの余裕があるのですが・・・
この大きな流れの中で、我々にできる事は、眼圧を下げることだけで、それにより神経節細胞死の速度を抑える、ただこれだけです。原因を特定し、それを取り除くことも、細胞死に陥った神経節細胞を甦らせることもできません。再生医療の応用も当分不可能なようです。ただ、証拠はありませんが、メーカーは、自社の緑内障点眼に、眼圧下降以外の緑内障治療に有効な作用(神経保護)があることを匂わせていますが・・・・。

A2:現在の緑内障治療は、この神経節細胞死のスピードを下げるか止めることにあるのです。患者さんには不満でしょうが、もし、完全にその進行を止める事ができれば、ある意味治ったと言えるのかもしれません。

さらに、少し詳しく解説しますと・・
眼圧をどの程度下げれば、どのような結果になるのかについては、様々なスタデイがありますが、勝手に総合的に判断してしまいますと、
①30%以上下げれば進行しないらしい・・・(CNTGS)
②1mmHgでも下げた方が、有効らしい・・・(EMGT)

でしょうか。幸い、最近は強力に眼圧を下降させる点眼がありますので、時に点眼だけでも30%以上下げることも可能です。そこで、

眼科に関するQ&A その6(緑内障) (374)_f0088231_18185278.jpg


 この表を見てほしいのですが、この表は、ベースライン眼圧、測定眼圧、眼圧下降率の関係を表にしたものです。一番上にベースライン眼圧が書いてあります。たとえば、ベースライン眼圧18mmHgの人の治療後眼圧が15だとすると、眼圧下降率は16.7%となります。
ベースライン眼圧というのは、治療前の平均眼圧です。仮にそこから30%以上眼圧下降すれば安全だとすると、緑色の眼圧になれば安全となります。たとえばベースライン20なら14以下、18なら12以下、16なら11以下です。点眼1-2剤で、この程度の眼圧下降が可能な事って結構あるのです。ただ、問題は、ベースライン14なら9以下、12なら8以下、10なら7以下・・・。このあたりは、なかなか実現不可能でしょうか。
 私の勝手な考え方では、現実問題としては、ベースラインが高い眼(都合のいい解釈をするなら、緑内障性視神経委縮の原因として眼圧の占める部分が高い眼)なら、30%以上を目指します。
実現可能な数字としては、ベースライン眼圧が20に近ければ30%以下、15に近ければ20%以下、10に近ければ、1mmHgでも低く・・を目指しながら、視野が悪化していないかチェックする事にしています。そして、視野進行が、完全に止まらなかったとしても、自覚的な視野・視力の悪化がなければ許容範囲内と考えています。
 こういった私の目標と、患者さんが考える『緑内障が治る』とのギャップが大きければ、患者さんには、まだまだ現在の医学レベルはこの程度なのでと頭を下げるしかありません。
by takeuchi-ganka | 2009-07-03 18:21 | Q&A | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka