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甲状腺眼症(388)

 甲状腺機能亢進(バセドウ病)に伴う眼球突出は有名ですが、私も含めて、眼科医でさえ、この多彩な眼症状を完全には理解出来ていないのではないでしょうか(失礼・・)。この甲状腺疾患に伴う眼障害には、甲状腺機能亢進症に限らず、機能低下症・治療後正常機能・正常機能など多彩なのです。従って、甲状腺機能亢進症の全身症状がなければ、眼障害を甲状腺疾患と結び付けにくいかもしれません。
眼で見る神経内科 下直筋肥大による眼球の上転障害で急性発症したeuthyroid Graves' ophthalmopathy 神経内科(0386-9709)58巻5号 Page521-522(2003.05)
※こんな論文を見つけました。私も、急性発症ではなかったですが、15-6年前にeutyroidの上転障害を発症した下直筋肥大症例を経験したことがあります。当時、MRIをよく勉強していたF氏が、この疾患は下直筋に初発するんや・・・と力説していた記憶がありますが、最近の教科書にも、この筋肉の障害頻度が一番高いと書いてあります。この論文の症例は、67歳男性ですが、私の経験した症例も同じような年齢だったと記憶しています。教科書によれば、20代の眼球突出は、眼窩の脂肪組織の炎症で、中高年では外眼筋肥大が原因と記載されています。恐らく、抗甲状腺抗体が球後組織に自己免疫疾患として作用し、リンパ球浸潤を伴う浮腫・腫脹が発生し、やがて線維化・瘢痕化して固定するのでしょう。

眼障害としては、以下の4つが主でしょうか。①②が原発性障害で、③④が続発性障害。

 ①眼球突出
※ヘルテルによる基準はあまり意味がないが・・・21mm以上はやはり異常?
 ②上眼瞼後退(Dalrymple sign, Graefe sign)
 ③角膜・結膜障害(←兎眼・涙液分泌減少)
 ③眼球運動障害(←外眼筋の炎症、瘢痕・癒着)

※治療は、急性期とその後瘢痕が形成された場合で、対応が異なるでしょうが、慢性期でなければステロイドパルスや放射線治療で鎮静化を図り、残存する固定化した障害に対して手術となります。
※かつて、緑内障外来をしていた時経験したのは、下直筋肥大があって、強い上転障害のある患者さんで、眼位によって大きく眼圧が変化し、少し上方をみさせると異常に高値(30mmHg以上)、少し下方を見させると正常値をとり、長期間経過を見ましたが、緑内障性視神経障害を引き起こしませんでした。
by takeuchi-ganka | 2009-08-23 11:18 | その他 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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