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平成21年度 近畿眼科医会連合夏季講習会 その2 (393)

2、加齢黄斑変性 高橋寛二(関西医大)

59年卒で、私と同期なんですが、なんか腹立つほど若いです。大黒先生より4つも若い。アンチエイジング、加齢黄斑変性と闘っているからでしょうか・・・。ただ、加齢黄斑変性は増えているようです。視覚障害の原因としても20年前の6位から4位に。久山町スタデイから推定される日本の加齢黄斑変性は、前駆病変600万以上、加齢黄斑変性は40万以上?

Ⅰ 加齢黄斑変性の診断の進歩
①加齢黄斑変性の診断基準 
(診断基準なんて面白みがなく、つい無視しがちですが、作った側の思い入れは全く違うようで、せっかくなんで、少しじっくり見てみましょう。)
※50歳以上、中心窩周囲6000μm以内の病変
※眼底所見だけでも診断可能(必ずしもFA、IAを必要としないということです。)
1、前駆病変    
  1)軟性ドルーゼン      
  2)網膜色素上皮異常
2、滲出型加齢黄斑変性 
3、萎縮型加齢黄斑変性
4、除外規定

※滲出型加齢黄斑変性の特殊型
(1)ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)
(2)網膜血管腫状増殖(RAP)

滲出型加齢黄斑変性の主要所見
(1)脈絡膜新生血管
(2)漿液性網膜色素上皮剥離
(3)出血性網膜色素上皮剥離
(4)線維性瘢痕
のいずれか1つを満たすものを確診例
随伴所見
①滲出性変化:、網膜下灰白色斑(フィブリン)、硬性白斑、網膜浮腫、漿液性網膜剥離
②網膜または網膜下出血

※よく考えたら、加齢黄斑変性の診断にあたっては、何となく随伴所見の方を重視していたような気がします。網膜下に灰白色、橙赤色隆起病変を見つけて、CNVがあると判断する能力がないので、随伴所見から推測する感じでしょうか。この診断基準をもう一度しっかり味わって、診断したいと思います。
付記
①軟性ドルーゼン:直径63μm以上(乳頭近傍の網膜静脈の直径126μmなので、この半分以上)
②網膜色素上皮異常:色素脱失・色素沈着・色素むら・PED(1DD以内)
③脈絡膜新生血管(検眼鏡で網膜下に灰白色、橙赤色隆起病変)
④漿液性網膜色素上皮剥離(1DD以上ならCNV見えなくてもあるという判断)
⑤出血性網膜色素上皮剥離(出血を伴っていたら、小さくてもCNVあるという判断)
⑥網膜色素上皮の地図状委縮の大きさは問わない。

鑑別診断
①かつて(?)リーガー型と呼ばれた特発性脈絡膜新生血管
②強度近視に伴う新生血管黄斑症(lacquer-crack lesion:ブルフ膜断裂が原因)
③網膜色素線条症(線条、梨地状眼底、傍乳頭にCNV、首・肘にpseudoxanthomaelasticum)

②新しいOCTによる診断と病態
OCTの進歩:TD-OCTからSD-OCTに伴い、解像力(縦方向)がこの10年間に20μmから3.5μmまで向上。黄斑疾患の診断には絶対必要な器械となりました。
1.網膜硝子体界面の検出が良好
2.感覚網膜の層構造が明瞭に観察できる
※特に黄斑部では網膜外層の構造(外境界膜、IS-OSラインなど)が詳細に検出できる
※病的状態下で網膜色素上皮-ブルッフ膜の分離が可能
3.脈絡膜構造(脈絡膜表層の中大血管)の検出

※関西医大は、オプトビューのRTVue-100を買ったそうですが、他にハイデルベルグのスペクトラリス、ツアイスのシラス、キャノンから発売になったOPTOPOL社製、国内ではトプコンとニデックからも発売されています。気になるものだけで6機種もあります。まだまだ値段は高く、手が届きそうにないですが・・・・。値段をぐっと下げて、ソフトウエアが使いやすくして、データベースをできれば日本人で充実させて、アタッチメントつければ前眼部も撮れて、バージョンアップにも対応してくれる良識のあるメーカーが出てこないかなあ・・


重要な所見
①小型のPED:最も重要な前駆病変(日本)
②軟性ドルーゼン:内部反射、異常代謝産物
※脈絡膜から網膜への酸素供給がブロック、虚血、血管内皮増殖因子、CNV発生へ・・
③委縮型:網膜色素上皮委縮すると脈絡膜高反射
※視細胞・網膜色素上皮・脈絡膜の3つは三位一体となって委縮する。
※自分の実験で恐縮ですが、硝子体内に微量のオルニチンを入れて、網膜色素上皮を選択的に障害すると、網膜色素上皮が失われたままの部位では、脈絡膜毛細血管板も視細胞も委縮・消失したが、網膜色素上皮が再生した部位では脈絡膜毛細血管板も視細胞も生き残りました。このように網膜色素上皮が委縮すればこうなるのです。三位一体・・・
実験的オルニチン網膜症(第3報) 注入中期の変化、日本眼科学会雑誌(0029-0203)97(1)17-28(1993)、竹内正光, 板垣隆, 高橋寛二、他
※小さなドルーゼン⇒大きなドルーゼン⇒色素沈着⇒ドルーゼン退縮⇒地図状委縮へ・・


加齢黄斑変性の中の分類
1)狭義加齢黄斑変性58%
  Ⅰ型 網膜色素上皮下(オカルト)
※網膜色素上皮に障害があるが、網膜の障害少ない。視力低下ゆっくり。
   1、 late lekage of undetermined source:double layer sign、VEGF多くない、CNV成熟
   2、 fibrovascular PED :治りにくい。不可逆性CMEに陥りやすい・・
  Ⅱ型 網膜色素上皮上(クラシック)
   ※網膜色素上皮断裂。最初フィブリン、網膜下の灰白色病巣、VEGF多く未熟で管腔のない新生血管。やがて線維化し治りにくくなる。Ⅰ型より感覚網膜へのダメージ大きい。
2)PCV 38%
  通常網膜色素上皮下。ゆっくり進行。
  橙赤色隆起病巣。FAでオカルト、IAでポリープ。OCTでdouble layer sign
    62% 単純
    30% 偽クラシック(フィブリン)
   8% +クラシック
3)RAP 5%
 80歳以上。女性にも多い。3年以内に100%両眼性に。進行早く治りにくい。最悪の病型
※軟性ドルーゼン多発、表層出血、CME、視力低下
※ステージ2までに見つけて治療へ
TYPE 3 NEOVASCULARIZATION: The Expanded Spectrum of Retinal Angiomatous Proliferation RETINA. 28(2):201-211, February 2008.
※網膜の中から、脈絡膜から、両方・・全て網膜の中の新生血管とつながるものはⅢ型血管新生と呼ぶ?

2、加齢黄斑変性の治療の進歩
①予防的治療
1.抗酸化サプリメント
2.LK
3.PDT
4.抗血管新生剤

1、抗酸化サプリメント
片眼加齢黄斑変性、5年11-12%僚眼発症率(非常に高い)。そんな場合に使用すべき。
予防効果あり(エビデンスレベル1)
中~ 軟性ドルーゼン、中心窩外地図状委縮、片眼加齢黄斑変性

A Randomized, Placebo-Controlled, Clinical Trial of High-Dose Supplementation With Vitamins C and E, Beta Carotene, and Zinc for Age-Related Macular Degeneration and Vision Loss: AREDS Report No. 8 Age-Related Eye Disease Study Research Group Arch Ophthalmol. 2001;119:1417-1436.
喫煙者でない55歳以上の人は、下記抗酸化ビタミンと亜鉛を摂取すべき・・。
抗酸化ビタミン(βカロテン15mg、ビタミンC500mg、ビタミンE400IU)+亜鉛 80mg、

ARED2 (現在進行中スタデイ)
55-80歳の加齢黄斑変性患者4000人を4群にわけて解析中?(それにしても凄い規模です・・・)
①ルテイン/ゼアキサンチン(10/2mg) :黄斑に存在するカルテノイド
②DHA/EPA(350mg/650mg):ω3多価不飽和脂肪酸
④ルテイン/ゼアキサンチン+DHA/EPA
④プラセボ


②PDT
滲出型加齢黄斑変性は放置すると必ず悪くなる。PDTは自然経過に比べるとましな程度?VA維持(維持率80%程度)。効きやすいのは、小さいGLD、若い、PCV。条件が整えば、かなり良好な視力が得られる事もある。今後は、PDT単独よりもTAや抗VEGF薬の組み合わせが主流?
※PDT安全性:網膜、硝子体出血、VA低下・・・が問題。

③抗血管内皮増殖因子療法(抗VEGF療法)
VEGFをブロック
①マクジェン(Pegaptanib)     6週毎
②ルセンティス(Ranibizumab)   4週毎
③アバスチン(Bevacizumab)
④VEGF trap(Aflibercept) 4週、12週
 硝子体内注射が必要:問題は眼内炎、高眼圧、白内障、網膜裂孔。特に眼内炎。
 ただ、非常に良く効く
  ・選択的VEGF165ブロッカー:マクジェン(安全性高いが効果が低い・・)
  ・汎VEGFブロッカー:ルセンティス、アバスチン、VEGFtrap (生理的なものもブロックするので、Apo多い?)
成績
マクジェン  :VA維持80%
ルセンティス :初めてVA改善が可能になった(30-40%)。100%視力維持
※マクジェン ≦ PDT < ルセンティス
※ルセンティス有効だが、いつまで有効か?追加は?そのタイミングは?オカルトには?・・・などまだ解決すべき問題点あり。

※患者さんの喜び大きい。翌日からでも効果感じられることがある。進行例は×だが・・
※高価!ルセンティス 1本17万。3回すれば51万。お金が続かん・・・
※PDTとの併用は?相加効果・相乗効果あり?
※難治のRAPでは併用でないとダメ。:ルセンティス、TA+PDTのトリプルセラピーなど。
by takeuchi-ganka | 2009-09-07 15:49 | 学会報告 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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