仲間内の緑内障勉強会 その1 (434)
2010年 03月 04日

教授と言えば親も同然、助教授といえば兄貴も・・・と慕っていたM先生、枚方方面で開業されているカリスマ医師Y先生を含む、新旧の緑内障グループが集まった身内の勉強会がありました。講師には、私と違い広い交友関係を誇るK氏の人脈により、宇都宮の原先生と岐阜大の川瀬先生をお迎えしました。久しぶりに本当に楽しいひと時でした。T先生、夜遅くまで、引きとめて申し訳ありませんでした。
必ずしも、演者の講演内容にそってない印象記を・・・
1、生活姿勢を考慮した日内変動と薬物療法 原岳(原眼科)
眼圧は変動します。その変動は秒単位で変動する脈波から季節変動まで様々。一日の中でも3-4mmHgは変動すると言われています。昼にピークを示すものもあれば、夜にピークを示すものもある。現在の緑内障治療の根拠は眼圧下降。だからこそ、治療前にベースライン眼圧を測定し、そこから、どれだけ下降させることができるのかが問題になる。その根拠となる眼圧下降ですが、実は、眼圧そのものが変動しているものであれば、それを考慮に入れなければ、眼圧下降の判定の信頼性が揺らぐ。
例えば、昼20・夜17の眼に点眼して、昼17・夜14に下降したとして、治療前が夜、治療後昼に眼圧測定すれば眼圧下降ゼロだし、治療前が昼で治療後が夜なら6mmHg下降となる。また、冬には眼圧上昇することは知られていますが、冬に治療開始すれば夏に有効と判断されるかもしれないし、夏に治療開始すれば冬に無効と判断されるかもしれない。
眼圧を決める3要素
(眼圧)=
(毛様体での房水産生量)×(隅角での流出抵抗)
+(上強膜静脈圧)
ここからが本題ですが、眼圧は姿勢によって変動する。眼圧は上強膜静脈圧が上昇すれば上昇するので。通常眼圧は座位で計測するが、臥位になれば数mmHg上昇する。つまり、我々は夜、臥位になるので眼圧は上昇している筈。加えて、日内変動があり、昼がピークであったり、夜がピークであったりするが、その変動に体位による変動を考慮した日内変動は、再構成日内変動と呼ぶ。
例えば、眼圧を18以下に下げれば視野が悪化しないというAGISの結果を見ても、100%18以下だった眼の平均眼圧は12.3、50-75%達成した眼の平均は16.9、達成率50%以下の場合20.2。個々の患者さんの許容眼圧を正確な値を知ることは不可能に近いのかもしれないが、それが18だとすれば、再構成眼圧日内変動が18を越えないようにする必要があると。
プロスト系点眼は終日有効、β遮断剤は夜間効果が弱く、CAIはβ遮断剤よりは夜間有効と考えられている。再構成日内変動で夜間眼圧が18を越えそうであれば、CAI点眼夜1回追加するなどの対応が必要だと。また、昼にピークがある患者においては、β遮断剤点眼を朝することが理にかなっていると。
原岳(原眼科病院) 【緑内障診療 グレーゾーンを越えて】 診断編 眼圧 測定体位と眼圧変動の関係(解説/特集) 臨床眼科(0370-5579)63巻11号 Page34-36(2009.10)
Hara T:Increase of peak intraocular pressure during sleep in reproduced diurnal changes by posture. Arch Ophthalmol. 2006 Feb;124(2):165-8.
日常診療において、眼圧が常に十分低いにも関わらず(15以下)、視野が悪化する症例に遭遇します。そんな場合、私ができる事は、診療時間の朝と夕を利用した精一杯の眼圧変動のチェックぐらいで、朝も夕も眼圧が十分に低ければ、よく言われるように、眼圧依存性の低い緑内障症例ということで、眼圧下降を図りながらも、神経保護作用が謳われている点眼をチョイスします。そんな場合、入院した上で、再構成日内変動を見れば、夜間眼圧上昇が確認できる症例が少なからず?あるようです。だとすれば、使用点眼がプロスト系点眼のみであれば、CAI点眼を夜1回追加するとか、或いは濾過手術という選択肢もありかもしれません。