仲間内の緑内障勉強会 その2 (435)

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2、緑内障手術 最近の話題 川瀬(岐阜大 准教授)
 ついで、レクトミーの本場から、川瀬先生をお迎えして、その極意について・・。20年前ならかぶりつきで聞いた内容ですが、すっかり開業医の私には、少し遠い話に思えました。ちょっと遠目で聞いてましたので、内容の詳細を知りたい方は、演者が講演内容を文章化される予定だそうで、そちらを参考に・・
 ろ過手術というのは、強膜に孔をあけて、前房水を結膜下へ漏らす手術なのですが、その成否は患者さんの創傷治癒能力に左右されます。開けた孔が塞がれば失敗、孔から水が漏れ過ぎても問題で、適量の房水が長期間漏れ続ければ成功なのです。全層濾過手術や管錐術の時代から弁付き濾過手術のトラベクレクトミーへ。その弁も□にしたり△にしたりと、有効かつ安全な手術を目指して様々な工夫が行われましたが、大きくその成績が向上したのは、その創傷治癒過程をコントロールする為に、80年代後半から代謝拮抗剤が使われるようになってからです。私も、当時の主任教授に警告されつつも、最初は5FUの結膜下注射、ついでMMC塗布に手を染めました。代謝拮抗剤により創傷治癒過程をコントロール可能となり、手術成績は大幅に向上しました。岐阜大と言えば、先代の北沢教授時代から、ろ過手術の本場・メッカ?聖地?。シンプルな術式なのですが、成功の為には山ほどコツがあるようで、逆に言えば山ほどコツがあるということは、その分、不確定要素が大きいということなのかもしれません。
術式は、輪部基底或いは円蓋部基底で結膜を切開して、0.04%MMCを塗布して生食で十分洗浄、4×4mmの強膜半層切開し、その輪部側で1×3mmほどの線維柱帯を切除し、周辺虹彩切除をした後、強膜弁ついで結膜を縫合するというシンプルなものです。ただ、初回手術なのか、そうでないのか、若いのか高齢なのか、近視が強いのかそうでないのか・・・など症例による影響は大きく、強膜弁の厚さ・二重強膜弁を作るかどうか・線維柱帯切除の位置と大きさ・強膜弁の縫合の数・位置・強さなどがろ過量に影響し、結膜切開位置・縫合方法は濾過胞の性状に影響します。そのような非常に多くの要素に配慮しつつ手術した後も、特に術後の1週間のメンテナンスが重要となります。ろ過量をみつつ、眼球マッサージし、眼圧の程度によっては、糸をレーザーで切り、目標眼圧より低めに設定した退院時眼圧を目指します(通常7程度?)。逆に、ろ過量が多すぎた場合には、創口を上手く圧迫する眼帯を行います。その後ろ過量が落ちてきた時は、更にレーザー切糸を追加、それが無理なら針で切りにゆきます(needling)。さらに時間が経過して、濾過胞が瘢痕化してきたら、濾過胞再建術も行われます。手術が成功しても、濾過胞は脆弱で時に破れたり・感染したりと、長期にわたり常に危険がつきまといます。
 濾過手術に手を染めるということは、そのような事を全て引き受けることを意味するのです。ちょっとテクニック的にレクトミーが出来るからと言って、やってはいけない手術だと思っています。手術をしなければ失明が免れない場合にのみ、術者も患者も十分な覚悟の上行う手術であり、長期にわたり厳重な経過観察が必要であることを承知の上、手術にのぞむ必要があります。
話は逸れますが、緑内障手術を行う眼科医でさえ、ロトミー系手術だけして、濾過手術は避けたいようですが、どうしても、この手術しか救う手段がない眼は存在する訳で、最近は濾過手術の担い手が少なくなった印象があり、特定の術者の負担が大きくなりすぎているような気がします。
by takeuchi-ganka | 2010-03-04 21:34 | 緑内障 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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