中心性漿液性脈絡網膜症 その1 (448)

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 技術の進歩は目覚ましく、OCTによる眼球の各部位の計測が時を追うごとに精密になり、もはや光学顕微鏡レベル。しつこくパラパラと114日眼の抄録集を眺めていると深達性能に優れたOCTによれば中心性漿液性脈絡網膜症の脈絡膜厚が増加しているという発表が散見されます。患眼だけでなく、僚眼においても厚くなっているようです。これをきっかけに今回のテーマは中心性漿液性脈絡網膜症。

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 かつて中心性網膜炎(増田型)と呼ばれた疾患は、その病態の解明が進むにつれその病名も変遷し、現在中心性漿液性脈絡網膜症。
 『眼科診療の實際』の改定5版(昭和40年)が手元にありますが、この本には、治療として、遮光眼鏡使用、身心の疲労をさけ、栄養を佳良にし、沃剥内服、ミノファーゲンC注射、高張食塩水の結膜下注射・・・・・などと書かれてあり、原因については、①原因不明、②結核アレルギー、③小血管攣縮などと記載があります。昭和46年の臨床眼科全書にも、①アレルギー説、②細小動脈の攣縮・・・・・など様々な記載がありますが、少し気になったのは、『心身医学的』解釈。過度の緊張を強いられる軍人に多くの症例が見られたり、過労・心痛・睡眠不足が誘因になると書かれています。この他にも慢性の感情的緊張もストレスとして働き、結果として網膜血管の攣縮を来たし、それが発症原因と解釈されています。この心身医学的解釈は、十分肯ける話で、個人的にも今まで経験した本疾患の患者さんの印象は、何事にも動じない大らかな性格・・とは正反対の人が多かった気がします。要約には、黄斑下脈絡膜毛細血管の透過性亢進が起こり、網膜色素上皮の限局性剥離、網膜下への滲出、そして限局性網膜剥離にいたる仮説が書かれています。
 昭和59年頃、つまり我々が入局した当時の、この疾患に対する治療は、網膜光凝固でした。蛍光眼底造影を行い、網膜色素上皮破綻部分から網膜下へ蛍光が漏出するポイントを見つけたら、この部分を弱く網膜光凝固して、漏出を止める事でした。網膜血管の造影検査をいくら行っても、そこには異常はなく、蛍光は脈絡膜側から網膜側へ漏出してくる訳で、この疾患の本質は網膜ではなく、脈絡膜にあるに違いない。その後、ICGが普及してくると、この疾患は脈絡膜の充盈遅延、脈絡膜静脈拡張、脈絡膜血管の透過性亢進が基本にあることが明らかになりました。OCTの進歩により、脈絡膜血管の透過性亢進は、脈絡膜の肥厚をもたらしている事が証明されています。
by takeuchi-ganka | 2010-05-08 16:28 | その他 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


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