スリーサムin新宿 その6 (476)

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講演も昼下がり、話が臨床から離れるほど、気が遠くなりかけましたが、何とか自分を励ましつつ・・・

スリーサムin新宿 シンポジウム2 感染とアレルギーの謎を解く

GK-S2-01 眼表面上皮細胞の自然免疫 京都府立医大 上田
 ・獲得免疫:抗原提示細胞が抗原提示 ⇒抗原特異的T細胞が誘導、Th1細胞は、マクロファージ、Killer細胞に指示、Th2はB細胞に指示を、そしてTh17も関与。
 ・自然免疫:マクロファージや樹 状細胞などの免疫担当細胞は、病原体固有の構造(PAMPs:リポ多糖、リポ蛋白、核酸など)を認識するパターン認識受容体(PRRs)を持っていて、TLRはPRRsとして機能している。このTLRは、1-11まであり、1.2.5.6のように、細菌・原虫感染に関わっているもの、 3.7のようにウイルス感染に関わっているもの、4.9のようにその両方に関わっているものとに分けられるようです。常に常在菌と接している角膜・結膜上皮における自然免疫は?
 常在細菌(表ブ・アクネス)に対しては炎症が生じない。制御する機構がある筈。

TLR3 :dsRNA(virus) (⇒ds-RNAアナログのpoly(I:C))
TLR4 :LPS(bacteria グラム陰性)
TLR5 :Flagellin(bacteria 細菌の鞭毛)

末梢血単核球  :LPS(グラム陰性菌)に反応し、PolyIC(dsRNA)に反応しない。全ての菌由来のフラジェリンに反応。
眼表面上皮細胞 :LPS(グラム陰性菌)に反応せず、PolyIC(dsRNA)に反応。緑膿菌由来のフラジェリンにのみに反応し、サルモネラ、バチルス菌に反応しない。
※眼表面上皮細胞は、常在菌には反応しないが、TLR5は上皮基底層から中間層にあり、上皮欠損の眼表面のみ反応可能になる。

アレルギー反応
・即時相:肥満細胞からヒスタミンなどのサイトカイン放出、充血・浮腫・かゆみ・・・1時間以内
・遅発相:肥満細胞からPAF、LTB4、PGD2などを産生し、好酸球を呼び寄せる。8-24時間後に生じる。T細胞、線維芽細胞も関与。
※ただ、肥満細胞欠損マウスでも好酸球浸潤が生じている。これは自然免疫の関与。TLR3欠損マウスではアレルギー性反応↓、TLR3過剰発現マウスでは↑。TLR3は眼表面においてアレルギー反応を制御している可能性が高い。

参考資料
受容体とリガンド
http://www.iwaki-kk.co.jp/bio/reagent/hycult/hbt_tlr.htm
http://hostdefense.ifrec.osaka-u.ac.jp/ja/research/category1/index.html
http://research4.dfci.harvard.edu/innate/TLR.html

TLR1/2 :Diacyl lipopeptides(bacteria)
TLR6/2 :Zymosan(fungi)/Triacyl lipopeptides(bacteria)
TLR3 :dsRNA(virus) (⇒ds-RNAアナログのpoly(I:C))
TLR4 :LPS(bacteria グラム陰性)
TLR5 :Flagellin(bacteria 細菌の鞭毛)
TLR7 :ssRNA(virus)
TLR8 :ssRNA(virus)
TLR9 :CpG DNA(bacteria,virus)
TLR10 :?
TLR11 :Profilin-like molecule (protozoa)



GK-S2-02 アトピーと感染 順天大 海老原
殆ど暗号で構成されていて、理解不能。ただ、アトピーがあると感染しやすい、感染するとアレルギーを悪化させるという悪循環が構成されていることを暗号で説明されていたような・・

1)感染はアトピー・アレルギーを惹起し増悪させるか?
Hygine Theory(衛生学説):Th1(感染防御)/Th2(アレルギー)バランス:発育期における過剰の衛生状態の改善に伴い、感染症が減少し、もともとTh2有意だが、成長に伴い感染を経験し、Th1有意となりアレルギーを起こさなくなっていく・・・・。⇒古い?
感染とアレルギーはもっと複雑に絡みあっている(私には理解不能・・・)。感染がアレルギーを増強する。

巨大乳頭の上皮にTSLPやIL33が発現。
※サイトカインTSLP:Th2細胞誘導、好酸球浸潤、eotaxin2分泌
※サイトカインIL-33:Th2細胞を刺激してTh2サイトカイン産生。ただ、過剰産生されるとT細胞に依存せずアレルギーを誘導。好中球誘導し、感染防御にも。
・TLR3+ウイルスds-RNAアナログのpoly(I:C)⇒培養結膜上皮からTSLP誘導(アトピー・喘息において、未熟な樹状細胞を活性化し、活性化T細胞がTh2へ誘導される。)
・細胞死を起こした培養結膜上皮からIL-33 が放出される(アラーミン分子として:細胞に障害が加わった場合に周囲に危険を知らしめる作用)。
・TSLPとIL-33は相乗的に培養肥満細胞のIL-13を上昇。
⇒つまり結膜にウイルス感染が起こるとアレルギー反応が惹起される。

2)次に、アトピー性皮膚炎患者においては、好酸球・肥満細胞からでる分子や患者の掻破によりバリア機能が低下している。
・培養結膜上皮をスクラッチ⇒アラーミン分子
・アトピー性皮膚炎モデルマウス⇒眼を掻くと、角膜実質細胞までアポトージスあり。⇒アラーミン分子
⇒バリア破壊され、易感染性高いが、その代償としてアラーミン分子も感染防御機能として働いている?

※アトピー性皮膚炎・春季カタルは、ヘルペス感染おきやすい、ブ菌のコロナリゼイション起きやすい。このことが、増悪因子になっている・・・OK


GK-S2-03 細菌・真菌感染とアレルギー 日本大 稲田

先ず黄ブとアトピー性皮膚炎の関連
菌量:少ないと定着(コロナリゼイション)、多いと感染を起こす。
定着⇒スーパー抗原、T細胞に対する持続的な活性化、抗原特異的IgE抗体産生、アレルギー増強
感染⇒伝染性膿か疹

アトピー性皮膚炎とVKC・AKC
ブ菌:48.4%多い。他の菌より高率。ただ、エンテロトキシン産生は62%。結構陰性多い。それに対する特異抗体は高いVKCでも50%程度(つまりあまり高くない)。又抗菌ペプチドは(@瞼結膜)?HBD2・3、LL37 などがそんなに落ちている訳じゃない。従って抗菌ペプチド↓⇒黄ブ↑⇒アレルギー悪化は成立しない。
※黄ブが常に悪い働きをしている訳じゃない。重症例では関与しているらしいが・・
質疑:治りにくい時(タクロリムス+ステロイドでも)、ブ菌駆除療法は有効か?⇒有効!

症例:VKC、シールド潰瘍、ステロイド反応悪い。緑内障発生。喘息あり。小児科で初診から8カ月後にアルテルナリア↑。急速減感作療法。ステロイド離脱。寛解。
この症例がヒントになって・・・
※涙液IgE(涙液中の特異的抗体価)
 ダニ・カモガヤ・そしてアルテルナリア。これらが上昇している事多い。
 聞きなれない名前ですが、血清では上昇しないが、涙液のみアルテルナリア上昇している症例が結構ある。血清との乖離して・・

CLPC患者さんのSCLからの抽出したタンパクにβDグルカン↑。VKCの瞼結膜においてデクチン1(βDグルカンの受容体)↑。BAFF(B細胞抗体産生促進)、デクチン1と高い相関。BAFFとトータルIgEと弱い相関
⇒真菌とアレルギーの関連を示唆。

※クリアカットにその関連を示すことは困難だが、常に眼表面には細菌・真菌が存在しているので、そこで生じるアレルギーに関わっている事だけは確からしい。
 

GK-S2-04 角膜ヘルペス感染の謎 住友病院 井上 

リアルタイムPCRによるヘルペスウイルスの同定
* 上皮⇒擦過
* 実質⇒房水
* 内皮⇒房水


1)上皮病変:主にHSVとVZV
 偽樹枝状病変:VZVとアカントの類似症例提示
 リアルタイムPCRは、診断根拠・治療根拠にもなれば、治療効果判定にも使える。
2)実質病変:HSV、VZV、CMV
 HSVとアカント、HSVとアレルギーの類似症例提示
 ヘルペス・アカントを抗原とする免疫反応とアレルギー病変に類似性あり?
3)内皮病変:CMV(多い)、VZV、HSV(少ない)
 CMV:GCVを投与。根拠がないと使いにくい薬。
 HHV7が見つかった。62歳男性。片眼性。眼圧上昇。GCV点眼でウイルス量↓、浮腫↓
 全層角膜移植後拒絶反応:ステロイドに反応しないケースがあり、PCR有用(CMV、HHV8)
 51歳移植後5年。HHV8が出た。ステロイド無反応。全ての治療に無反応。ウイルス量→。
 HHV7,8の内皮炎あり?
 免疫メカニズムが関与してできる病変は感染性も非感染性も類似している。

質疑から
・アトピー性皮膚炎で何故両眼発症角膜ヘルペス多い?
・ウイルス感染後、ボーマン膜付近に抗原がトラップされていて、時々炎症が生じる・・
・上皮型から実質型へ移行するのは?個々の免疫反応の問題?
by takeuchi-ganka | 2010-07-25 10:25 | 学会報告 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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