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第10回近畿眼科オープンフォーラム  その1 (481)

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第10回近畿眼科オープンフォーラム @ホテルモントレ グラスミア大阪21F スノーベリー

 もうすぐ処暑というのに、猛暑を通り越して、酷暑が続き、我慢も限界に近付きつつある週末、ミナミの立派なホテルの21階で緑内障の勉強です。車で行くと簡単なのですが、地下鉄で行くと、広いナンバ地下街で迷ってしまいました。非常に興味深く濃い内容の講演を聴かせていただけるこのフォーラムはいつも楽しみにしています。今回のメインテーマは視野とOCT。演者のレベルも高く、十分楽しませていただきました。会場横には、現在販売中のOCTがずらっと並び、出席者にアピールしています。バージョンアップというか進化をとげつつある(発展途上?)T社を少し弄って、会場入り。
※また、この会は、25年前と変わらずお元気な三木先生のお話を聞けるのも楽しみのひとつで、今回も冒頭から疾走!100年前に角膜疾患、50年前は白内障で、今は加齢黄斑変性が失明原因のトップだそうですが、緑内障は、常に8-12%程度の原因でありつづける。進歩しているようで、進歩していない緑内障診療を何とかブレイクスルーしなくては・・。OCTはその一助になるのでしょうか?

講演Ⅰ視野
1、機能選択的視野検査~症例から学ぶ~ 高田園子先生(近大)

 20年以上前、GPに代わる?新しい自動静的量的視野計として登場したハンフリーとオクトパス。我々はハンフリーをチョイスし、気がつけば世界標準となり、緑内障の評価はハンフリーで行うもの、30-2で行うもの・・という固定概念に包まれていましたが、近大の先生の話を聴くと、その固定概念を少し(?)振り払うことができます。
 通常のハンフリーのプログラムSAP、黄色背景・青色視標のSWAP、フリッカー視野、そしてFDPこの4種類の視野計を症例提示と共に紹介していただきました。SAP以外を機能選択的視野検査と呼ぶそうです。緑内障では、先ず神経節細胞が障害されますが、この細胞は、P・K・Mの3種類があり、Pが70%、Kが16%、Mが10%。同じように障害されるとするなら、数が少ない細胞機能を評価する方が、より鋭敏な検査であるという基本をもとに先ず3症例のお勉強。
①SAPで異常がないと思われる初期緑内障。フリッカー・FDPではNFLDに一致する異常あり。
②通常と異なり下方にNFLD?SAPは当初異常なく、数年後異常あり。B/Y、フリッカー、FDPは最初から異常あり、悪化も確認。
③白内障を伴う症例。フリッカー以外は評価不可能。白内障手術後は、全ての視野計で評価可能だが・・

2、緑内障診断と機能選択的視野検査 松本長太先生(近大)
視神経乳頭のLCで節細胞の軸策障害⇒緑内障性視野障害。ただ、早期には視野異常がない。preperimetric glaucomaとは?

古典的事実
1)Quigley によれば、GPでは、神経線維の50%の消失後初めて異常検出、ハンフリーの5dB感度低下で20%、10dB低下で40%神経線維消失。
2)サルの実験。緑内障サルに視野検査?節細胞50%消失しても異常検出されない。
Harwerth RS et al : Ganglion cell losses underlying visual field defects from experimental glaucoma. Invest Ophthalmol Vis Sci. 1999 Sep;40(10):2242-50.
http://www.iovs.org/cgi/content/full/40/10/2242
3)コンピューター・シュミレーション:中心部分では、90%ぐらい消失しないと6dB感度低下しない。30度でも60%ぐらい消失が必要。

早期緑内障において視野変化は検出されない。逆に言えば、50%神経線維消失しても、患者さんは、何も異常がない・・・余剰性が高いとも言えるが、検出する為には問題。
①測定点密度・配置
 粗い!乳頭1個分ぐらいは抜けがある。以前はハンフリーでも30-1と30-2があり、合成できたが、今は30-2だけになった。もっと細かく配置してもいいが、非現実だけなので、妥協点?として30-2が主流となった。オクトパスには中心部分に細かく配置したプログラムがあるが、ハンフリーは昔のまま。例えば、どんどん細かく配置していけば(SAPRO:the spatially adaptive program)、血管による暗点さえ検出され、血管走行さえわかるが、非現実的。
②視標サイズ
 この大きさは、中心窩近傍で節細胞230個分、少し離れて35個分、黄斑部周辺?で10個分に相当。視標ひとつが、中心窩近傍では200個以上の節細胞を刺激していることになる。節細胞は樹状突起でネットワークがあり、受容野は重なっている。節細胞が50%無くなっても、受容野に隙間が出来ない。90%ぐらい消失すると隙間ができるが、サイズ3の入る隙間はまだ。サイズ3がまるまる隙間に入るには、節細胞は相当量消失している必要がある。
→ 余剰性たっぷりの節細胞。なかなか異常は検出できない。
⇒機能選択的視野検査へ

3種類の網膜神経節細胞
P細胞(70%)
 midget cell 軸策径:細 外側膝状体への投射:Parvocellular layer:色覚・視力、中央に多い。
K細胞(16%)
 small bistratified cell 軸策径:太 Koniocellular layer:青錐体系に反応、中央に多い。
M細胞(10%)
 paracol cell 軸策径:太 Magnocellular layer:時間周波数高い、空間周波数低い、均一に存在。
※太い神経が先にやられる(?)と言われていたが(Quigley)、どうやらそうでもないらしい・・・
※数の少ない神経をターゲットにすれば、検出感度は上がる。

SWAP(ハンフリーに搭載)
背景を黄色にすると、赤・緑錐体の反応を抑制し、青錐体の感度測定が可能。
青錐体の分布は少なく、それに対応しているK細胞系の機能を評価。
白内障患者、高齢者に向かない。
※実際は、役に立つとは言いにくい検査法だったが、SITA-SWAPによって使える手段に?
FDP(専用機種)
M細胞機能評価。短時間に早期緑内障検出可能だが。
屈折の影響受けにくい、白内障の影響大きい。細かな評価はできない。バラツキも大きい。
フリッカー視野(オクトパス300に搭載)
CFF値を視標。M細胞系、早期緑内障検出
中間透光体の影響受けにくい!
※HEP(ハイデルベルグ):これもM細胞系
http://www.heidelbergengineering.com/international/products/hep/

※現時点では、機能変化が構造変化に先行することはないので、機能選択的視野異常があれば、構造変化ある筈。
機能的選択的視野とOCTの組合せがベスト?
※緑内障は、形態学的変化が先行し、通常の視野検査で異常が検出されるまでギャップがかなりある。その部分を少しでも埋めるのが機能選択的視野検査。
by takeuchi-ganka | 2010-08-23 14:14 | 学会報告 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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