第21回日本緑内障学会  その7 (495)

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『より質の高い緑内障治療をめざして』
第21回日本緑内障学会 須田記念講演 東京警察病院 安田典子先生

私が、緑内障に関わるようになった頃から現在に至るまで、変わらぬスタンス・真摯な姿で緑内障診療に取り組まれている姿勢は、本当に尊敬に値します。今回の須田記念講演もそのスタンスを十分に反映した、高貴な内容となっていました。
1990年に湖崎弘先生が、第1回の須田記念講演「緑内障の視野に魅せられて」をされてから21回目の講演となります。その間、1993年に東京警察眼科の先代の部長の景山先生が「より安全有効な緑内障手術法を求めて」と題する記念講演をされています。やたらと手術件数を自慢する病院が多い昨今、この病院の眼科には真摯な緑内障に対する取り組みの伝統が感じられます。

緑内障の治療の基本は、1mmHgでも眼圧を低く保ち、視機能を維持することにあります。我々は、患者さんの眼圧を受診時に計測し、その値を24時間を代表する数値(?)としてカルテに記載します。ただ、眼圧は日内変動します。更に言えば、季節変動も体位変動もあり、常に変化しているともいえます。一口に眼圧を下げると言っても、臨床医の殆どは、偶々測定した眼圧を選択せざるを得ないのですが、安田先生らのスタンスは、先ず、治療前に24時間日内変動測定。眼圧を点ではなく、線とか面で捉え、2次元的・3次元的に解析することが必要?

1、無治療時眼圧日内変動
 緑内障の治療を開始する前に、我々は無治療時の眼圧を測定しベースラインとしますが、この病院では・・・(多分全例じゃないと思いますが・・・)、4週間wash out後、入院して24時間で8回測定。
 結果:多くは夜間眼圧が低い。平均13.8±2mmHg。左右差なし。若干性差あり?午後7時女性が高い・・。最高眼圧10-13時、最低眼圧22~3時に記録。1/3の症例で、診察時間外に最高眼圧を記録。変動幅、4.7±1.7(最高9mmHg)。眼圧ピークも、日中型80%、夜間型13%、不定型7%
 ①夜間型:男性、遠視より(等価球面度数が大きい)、10時眼圧低い。
 ②眼圧日内変動幅が大きいのは:若い、近視より(等価球面度数小さい)、10時眼圧高い。

※視野障害と眼圧日内変動について
A:眼圧が高い眼が視野が悪い⇒眼圧依存群(2/3):高齢になれば悪い方の視野が悪化!
B:眼圧が低い眼が視野が悪い⇒眼圧非依存群(1/3):加齢に伴う視野悪化がない?
両群で、年令・性・CCT・等価球面度数、一日平均眼圧・・・・有意差なし。高血圧の有無だけ差があり、A群であり、B群でなし。⇒眼圧非依存群では、血圧低い!つまり眼灌流圧も低い・・・ことが関与している可能性があり(緑内障というよりはION的?)。血圧・眼灌流圧を下げない配慮が必要。(どんな配慮でしょ?、たとえ高血圧があっても、あまり下げないように・・・などとコメントをつける?)

※眼圧体位変動幅と視野障害について
 報告では、体位変動幅が大きいと視野障害が大きいし進行する?短眼軸ほど変動幅大きい?
 24時間眼圧日内変動測定中に測定(pneumotonometer)。座位で5分後、仰臥位で10分後に。17.2⇒22.3と上昇。変動幅5.0±1.5(2-8)。若いほど、BMI小さい(痩せ型)ほど変動幅大きい。体位変動幅と日内変動パターンは、無関係だった。⇒痩せた若いNTG患者は体位変動が大きいので、日中座位眼圧が低くても、要注意ってこと?

2、治療時眼圧日内変動
これにより治療効果判定に役立てる。治療前に眼圧日内変動、8週間治療後再び眼圧日内変動を測定している・・?凄い・・・
①β遮断剤(チモ、ミケ):夜間の眼圧下降効果悪いことを再確認。
②PG剤(ラタノ・トラボ・タプロス・ルミガン):全て24時間にわたり有意に眼圧下降。
 ラタノ・トラボ・タプロス:約13%↓、ルミガン:約19%↓(やはりルミガンが一番のよう・・)
※ラタノの朝点眼と夜点眼の比較は、日内変動を考慮すると、夜点眼の方がベター。(夜間は朝点眼が、日中は夜点眼がよりいいらしい・・)。配合剤の場合朝点眼になるので、不利な情報。
③ラタノ+ブリンゾラミド:ラタノの眼圧下降に加えて更に少し下降(24時間にわたって)。+CAIは有効だと・・。
④PG+β遮断剤+CAI (3剤併用の日内変動は?):全体的にflatだが、最高眼圧は10、13時、深夜1、3時も多い。無治療より夜間型多い・・(特に深夜が)。夜間型の特徴は、10時の眼圧低く、近視がすくない(遠視より)(等価球面度数大きい)。近視が強いとflatだが、弱いと日内変動あり夜中3時に高い。(意味があるようなないような・・・)
⑤MMCレクトミー後眼圧日内変動:眼圧下降し、眼圧低いほど、変動幅も減少し(flat化)、体位変動も大幅減少。濾過胞が十分機能していたら、変動も消失するってこと。これは、当然な気がしますが、しっかり確認されています・・

3、患者教育
 アドヒアランス向上の為に。つまりどうすれば患者さんの自主的な治療への参加が得られるか。一番大切なことは、点眼回数や配合剤よりも、点眼の動機づけが最も重要(強く同意します!)。何の為に点眼が必要なのかをしっかり理解してもらうことが必要。企業の姿勢は、2回点眼より1回点眼、1回点眼より配合剤点眼と、兎に角、面倒な点眼回数を減らすことに躍起になっていますが、一番大切なのは、患者さんが、緑内障の進行を抑える為に、この点眼が必要であることを理解する事だと・・・。
 広く普及するには、若干非現実的手法ともいえますが、1日入院し、検査・面談・講義・個別指導を行う。ask-tell-ask communication strategy 、つまり一方的な説明じゃなく、患者さんの意見を聞いて説明して、又聞く方法が効果的。特に重要なのは、①日常生活の問題、②病態の説明、③点眼指導。
 理想的な方法で、いち開業医としては、実行不可能ですが、この講演の要旨だけは理解して、日常診療に役立てたいと思います。

※Esterman visual field test : 両眼開放視野。スコア化し、日常生活の困難の程度がわかる。病態説明の参考資料にする。
※1日入院の効果:点眼方法理解、緑内障の知識アップ、不安解消
by takeuchi-ganka | 2010-10-16 18:25 | 学会報告 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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