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第3回眼科臨床クイックレビュー その3 (500)

永観堂
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QOV:眼精疲労の発症メカニズムと治療 梶田眼科 梶田雅義先生

 今回のクイックレビューの白眉?勉強になりました。眼精疲労の原因には様々なものがあるでしょうが、通常、近見作業に伴うもので、その原因によって、 ① 筋性眼精疲労、 ② 調節性眼精疲労 ③ 不等像性眼精疲労 ④ 症候性眼精疲労 ⑤ 神経性眼精疲労 と分類されますが、最も多いのが②か④或いは⑤?詳細は不明ですが、今回のテーマは②の調節性眼精疲労です。
 他覚的屈折検査を経時的に記録すると、屈折値というのは、常に揺らいでいるのだそうで、その揺らぎは調節微動と呼ばれ、低周波成分と高周波成分があります。毛様筋が緊張してプルプル震えると(?)高周波成分が増えるようで、これにより毛様筋の緊張状態を推測するそうです。そう言えば、眼精疲労の治療薬であるサンコバの効能には、『調節性眼精疲労における微動調節の改善』と記載がありますが、微動調節というのは、この事なんでしょう・・。
ライト製作所のSpeedy-iニデック社のAA-2 は他覚測定した屈折度の揺らぎから被検眼の調節緊張の程度を解析します。調節努力の大きさによって調節微動の高周波成分(HFC : High Frequency Component)に個人差があることから開発されたそうで、高周波成分を示すHFC、視標位置、調節反応量がマップ表示されます(FK-map)。
健康な若者であれば、動くターゲットにスムースに調節が追随し、HFCの出現頻度は少なく、健康な老人では、動くターゲットに調節は誘導されず、HFCも少ない。
提示された症例は4例。
症例1:16歳女性、交通事故後、頭痛。視力(遠近)異常なし。FK-map⇒遠方視でも高HFC。近方視は更に高HFCで、加えて調節リード。治療:0.05%サイプレジン+累進屈折眼鏡処方で改善。頭痛消失。調節リード消失。遠方でのHFC減少。やがて薬なしでも異常なし。
症例2:IT眼症 30歳女性。パソコンに向かうと頭痛。FK-map⇒1mより遠いと正常。それより近いとHFC↑。軽い麻痺剤と作業用眼鏡で改善。
症例3:63歳女性。老視眼なのに調節痙攣!眼窩深部痛。FK-map⇒調節力はないが、調節努力は行われていて、高HFC。低濃度サイプレジンで改善
症例4:IOL挿入眼なのに調節痙攣!しみるような痛み。FK-map⇒高HFCあり。低濃度サイプレジン著効。

スタデイの結果の紹介
1)テレビゲームの影響は?近視化・遠視化半々。調節反応量も増減半々。ただHFCは増加。ゲームで目が疲れるという人は、HFC↑。
2)ニコンの累進屈折眼鏡による眼精疲労に対する影響は?屈折・調節反応量では不明だが、HFC↓。特に眼鏡装用感いい人は、よりHFC↓。
3)アスタキサンチン内服効果は?6mg/日×14日摂取の有無で、テレビゲームの影響を見た。屈折・調節反応量ともに差がないが、摂取群の方が、休息した時にHFC減少。つまり回復しやすい。
4)単焦点と遠近両用HCLの比較:単焦点HCLを選んだ人は、もともと低いHFC(疲れていなかった人)で、遠近両用HCLを選んだ人は、もともと近方で高HFCだった人。
5)メニコンデュオ(遠近両用SCL):近方作業で楽になったが、HFC差がない。疲れやすい人はHFC↓。元気で疲れを感じていない人には不要。

 結局、治療としては低濃度サイプレジンによる毛様筋の弛緩がメインとなりますが、この眼精疲労という、愁訴が強い割に、通常の検査結果に異常がでない疾患(群)に対して、調節機能解析装置は、調節ラグ・調節リードの有無・程度、そして遠見・近見での調節微動の高周波成分の解析などを行い、FK-map表示により病態や治療効果を示してくれる有用なツールのようです。
また、通常1%のシクロペントラート点眼を20~40倍、つまり0.05~0.025%の点眼液を上手く使えば、調節緊張を解除することができること、それによって低下した調節力に対して累進屈折眼鏡での矯正と組み合わせることで、効果的な治療の可能性・・・・・・・・本当に勉強になりました。
by takeuchi-ganka | 2010-11-13 18:12 | 眼の疲れ | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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