麦粒腫 :眼科医が見ているものシリーズ その1 (507)
2011年 01月 05日
眼科医は、普段の診察の時にいったい何を見ているのでしょう。勿論、診察は、患者さんが診察室に入った瞬間から始まっているのでしょうが、話が散漫になるといけないので、ここでは、我々がスリットと呼んでいる眼科医にとって最も基本的な診察機器:細隙灯顕微鏡の所見と、倒像鏡による眼底検査所見を中心に話をします。特殊な機器を使わず、基本的な検査機器のみでの診断能力こそが、眼科医の基礎体力だと思っています。大病院の若い先生に立ち向かうには、この基礎体力を高めるしかないのです。
最近OCTを筆頭に様々な新しい検査機器が出現し、その検査結果に振り回される眼科医も多いと思われます。それらの検査の中で一部は、やがてスリットにとって代わるものになるでしょうが、今でも大多数の眼科医にとって、基本となる診察機器は、スリットと倒像鏡です。
(※眼底検査は、さすがに倒像鏡だけでは、精度が低いので、より詳細な所見を取りたい場合は、78Dや90Dの前置レンズや後極部用コンタクトやスリーミラーを併用していますが・・)
1、眼瞼


先ず、『まぶた』です。稀な疾患まで言及するとキリがないので省略しますが、よくあるのは、麦粒腫・霰粒腫。前者は主として、マイボーム腺の化膿性疾患なので、眼瞼縁のマイボーム腺の開口部の発赤から始まり、この写真のように瞼結膜側に膿点が見えれば、この部位を穿刺して排膿させます。といっても、このように分りやすいものから、そうでないものまで様々です。
この麦粒腫は、我々は『めばちこ』とか『ものもらい』と呼びますが、実は、地方によって様々な名称で呼ばれています。京都では『めいぼ』、名古屋では『めんぼ』、東京では『ものもらい』、北海道では『めっぱ』などと・・・。様々な地方の患者さんを診察する機会も多いので、この方言はひととおり知っておく必要があります。ただ、ややこしいのは、『先生、メバチコが出来ました・・』の主訴で来院される方の半分近くはそれ以外の疾患であることで、目に痛みを伴う何かが出来た場合、通常そのように表現さえることが多いのです。
http://www.rohto.co.jp/mono/index.htm
治療は、抗生物質(抗菌剤)内服+点眼が基本、そして膿点が見えたら穿刺・排膿しますが、見えなければしません。患者さんによっては、何故切らないのかと・・・詰め寄られるケースもありますが、切らないこともあるのです。