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ちょっとした勉強会 (510)

ちょっとした勉強会 (510)_f0088231_1212192.jpg  99年までは成人の日であった小正月の1月15日。センター試験初日でもありますが、第一級の寒気がやってきて、午後からは大阪は冷凍庫状態・・。そんな日の夕刻、ライトアップされた素敵な大丸が見える心斎橋のホテルの一室で身内の緑内障勉強会がありました。クローズドの会なので、中身の詳細はお伝えできません・・・じゃ面白くないので、講演内容というよりは、講演を聞いて感じた事を少し・・


 軽く、新しい緑内障点眼の説明があった後、我々のリーダー的存在のY先生の講演。
1)眼圧について
我々は通常NCT(ノンコンタクト・トノメーター)やGAT(ゴールドマン圧平眼圧計)で眼圧測定しています。ご存知の通り、(真の)眼圧は様々な条件で変動します。日内変動・季節変動・体位変動・・・。また、真の眼圧ではなく、測定される眼圧の方も諸条件で変動します。その代表的要因が、CCT(中心角膜厚)。この値が大きければ眼圧は高めに、小さければ低めに出て、換算式もいくつか用意されています。その他、角膜乱視、涙の量にも影響されます。眼圧は、あくまで相対的なもので、永久に真の眼圧を知る事は出来ませんし、他人と比較する事もあまり意味がありません。そういう意味においては、例えば、『私が、自分のクリニックのスリットについているGATでAさんの眼圧を朝9時に測定した値』であれば、1週間後、2週間後、同条件の眼圧値との比較は意味がありますが、極端に言えば、『別のクリニックで、別の医師がGATで測定したAさんの午後6時の眼圧』との比較がどれほど意味を持つのかは不明です。私のような開業医は、なるべくいつも同じ条件で、ある緑内障患者さんの眼圧を測定し、経過を観察し、その眼圧が患者さんにとって、高いのかそうでないのかを判断しますから、絶対値はそれほど重要視していません。18でも、網膜・乳頭所見や視野が悪化しないか、悪化しても許容範囲内の速度であれば、安心していますし、12でも、そうでなければ、更に追加点眼を考慮します。
ただ、例えば、初診患者さんの眼圧が28だったとして、その後の経過観察をどうするか判断する場合、例えば、CCTが600以上なら、あまり心配いらないでしょうし、逆に、緑内障患者さんで、12でも、CCTが500以下であれば安心できない訳です。この意味においては、真の眼圧(に近い眼圧)を知る事は意味があり、その為には、CCT測定して換算することやDCTは有用で、かつて紹介したORAも有用なツールなのでしょう。

※高齢の日本人の眼圧測定というのは、眼瞼の挙げ方一つで眼圧は大きく変動します。正しい眼圧を測定したいのですが、どう考えても、それほど正確ではない・・・・と、測定していて感じる患者さんの数が少なくない事は、多くの眼科医が感じていることと思います。そんな場合、その患者さんの評価において、平均眼圧値の重要度は低くなります。それをどこか別の場所で(?)測定した眼圧だけが添付されてきたら、その眼圧は重要視せざるをえません。実はここに落とし穴がありそうな気がしています。GATは自分で測定しますが、NCTもORAも検査員が測定します。多分そのデータには信頼性の指標が明示されているでしょうが、実は信頼度を高く保つのは、検査の流れが滞るほど難しい筈。やはり眼圧測定は難しい・・

2)OCTについて
 実際はかなり大変だったと推測するのですが、ある時期、40歳以上の感染性疾患でない初診患者さん全員にOCTを併用した緑内障スクリーニングを行うと、11%ほどの緑内障患者さんが検出されたそうです。かなり多い?OCTを併用したからこそ多い・・・。まあ、当然でしょうし、患者さんは勉強家で、情報を得て、そこに緑内障の専門家がいる事をわかっていて受診されているというバイアスあり?
 OCTが更に洗練されたら、スクリーニングツールとして、これを通常の検査の流れの中に組み込めばいいのでしょうが、現時点では、NCTほど簡単じゃないし、時間もかかって非現実的?通常の診察の中で、チョットおかしいと感じた場合にオーダーするポジションにいる事が、まだまだ多いような気がします。
 何度も言ってますが、乳頭周囲の神経線維層の厚みの解析も重要ですが、黄斑部網膜の神経節細胞層の厚みの解析、上下非対称性の比較などがポイントでしょう。これが、少しぐらい固視が悪くても、少しぐらい白内障があっても、瞬時に信頼性のあるデータが得られて、かつ値段がもう少しこなれてくれば買いでしょうが・・・

症例提示
1)緑内障発作後、少し時間(2日)が経過しLI。閉塞したので再度LI。眼圧下降せず、入院して、周辺虹彩切除術して眼圧下降(22 with timolol 0.5%)。PAS70%程度。次のステップは?CATだけ、GSL併用?前房深度に左右差があり1.9/1.3mm。この差はチン小体の脆弱性を示唆?⇒①経過観察②CAT、②CAT+GSL、③CAT+GSL+lotomy など答えは様々?CAT opがIOL縫着になる可能性を考慮すれば、視機能の悪化が確認されるまで先延ばしでもいいような・・弱気な私。
2)高度近視で、10代に左眼に剥離手術(バックリング)。数年後ロトミー。20年以上経過観察。眼圧コントロール良好?やがて、左眼視野悪化し、中心視野も障害され視力低下。ただ、日内変動測定すると、夜間に高いピーク(12~22)を検出され、これが悪化の原因?また、buckle材料の膨化もあり、除去後眼圧下降したので、眼圧上昇の原因はbuckle材料?或いは、もともとの緑内障(developmental)が悪化?それとも、高度近視による網脈絡膜変性の悪化?難しい・・・・
by takeuchi-ganka | 2011-01-16 12:14 | 緑内障 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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